ソニーや日産自動車など、ごく一部の大企業は外部の経営者を起用してきた。もっとも、大抵はそうせざるを得なかったからだ。
ソニーと日産の場合は、海外勢との厳しい競争に直面していた。ストリンガー氏は、ソニーを立て直そうとする中で、日本の企業文化と格闘しなければならなかった。日産は大方の日本企業よりさらに踏み込んでフランスの自動車メーカー、ルノーと提携し、今ではカルロス・ゴーン氏が両社CEO(最高経営責任者)を兼務している。
だが、日本企業の人材採用の慣行は内向きのままだ。このことは、日本企業の労働力がグローバルな視野に欠けている可能性があることを意味している。
大企業は、能力や仕事以外の興味などに関係なく、日本の一流大学からできるだけ多くの学生を採用する。日本企業はほぼ例外なく卒業時に合わせて人材を採用するため、採用期間中に海外に留学していることは、応募者に不利になる。外国の大学で博士号を取った日本の大学院生でさえ、必要以上の学歴保持者と見なされるため、日本の大企業に就職するのを諦めたりする。
概して日本は、今も「1度限りの社会」のままだ。卒業時に良い仕事に就けなかった人は、死ぬまで社会から締め出されたままになりかねないのだ。
日本の島国根性が、過去10年間で最大のビジネスチャンスの1つを見逃した原因だったと考える人もいる。日本は、製造を得意とする電子機器から、電子機器がアクセスを提供するコンテンツへと多くの価値が移行したことに気づかなかったというのだ。
例えばソニーは、映画、音楽、ゲームの膨大なコンテンツをしゃれた機器に統合することで、この問題に対処しようとしている。
日本はガラパゴスというよりも、先住民が一時、存亡の危機に陥ったイースター島のようになりかねない?〔AFPBB News〕
NRIの北川史和氏は、減少する人口に対応するためには、日本企業は海外市場に手を伸ばすことが必要になり、恐らくは自社製品を補完するソフトウエアを生産する外国企業と提携することも必要になると話す。
JPモルガン証券の株式調査部長、イェスパー・コール氏は、それができなければ、日本は将来、ガラパゴスというより、むしろ19世紀のある段階で先住民ラパヌイ族の人口が111人まで減少したイースター島のようになるかもしれないと言う。
コール氏のメッセージは手厳しい。「企業文化が日本を殺している」というのである。
善きにつけ悪しきにつけ
社歌は姿を消したかもしれないが、今のところ、忠誠心、人間形成の手ほどきをする様々な儀式、硬直化したヒエラルキーは依然、出世街道を歩む管理職にとっては当たり前の存在だ。日本の労働者は自己紹介する際、まず社名を言い、次に自分の名前を述べる。何をしているかよりも、どこに勤めているかで自らを定義することが圧倒的に多いのだ。
最もグローバルな日本企業でさえそうだ。「米国では、人はいつも会社とデートしている」とある日本企業の幹部は言う。「これに対して日本の社員は会社と結婚している」
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