(英エコノミスト誌 2010年11月20日号)
日本の名高い企業文化は、減少する労働人口と知識集約型経済には適していない。
公共交通機関を使って移動すると、日本は地球上で最もネットワーク化された国の1つのように思える。40代以下の乗客の多くは、人の肩に寄りかかって眠っていない時は、一心不乱に携帯電話のボタンを操作している。
彼らには非常に広い交友関係があると思ってしまうが、東京大学で労働経済学を教える玄田有史教授は、彼らの多くはひたすら、ごく少数の親しい友人や家族に携帯メールを打ち続けているのだと言う。一握りの人とこれほど強い絆を維持することは、その大半が親しいとは言えない大勢の「フェイスブック友達」とつき合う欧米流儀とは大きく異なる。
このような強い人間関係は、強固に結びついた日本企業にも反映されている。中には創業来、身内主義が徹底している企業もある。例えば、三菱商事は1870年に日本の南部の島から土佐藩の船を走らせたのが創業の原点だ。三菱は今や世界有数の商社だが、今でも創業一族の核となる理念を表す標語を至るところに掲げている。
三菱の従業員はキリンビールを飲むことを奨励される。キリンが三菱系列の一員だからだ。三菱グループの企業は、こうした仲間意識が強さの源だと考えている。革新者たちは一般に、独立するよりも、自分が勤める会社に献身、名声、富をもたらす。
ソニーのハワード・ストリンガーCEOが「四銃士」を抜擢した時、当人たちは当初、怯んだという〔AFPBB News〕
だが、多くの部族と同じように、日本企業には年齢に基づく厳しい上下関係がある。英国ウェールズ生まれのソニーのトップ、ハワード・ストリンガー氏が昨年、有望な日本人中間管理職4人を、彼らの上司を飛び越えて上級役員に抜擢した時、当人たちは当初、昇進を受け入れることに不安を感じた。
規則もたくさんある。こうした規則は、精度の高い日本の製造業のお家芸である細部への気配りや飽くなき改善を促すのに役に立つが、より自由闊達な知識経済の中ではそれほど役に立たない。
排他的な身内主義も人口が減少する国にとって最適とは言えない。新たな市場を見つけ出すためには、日本は外の世界と活発な情報のやりとりをする必要がある。これは日本が最近うまくやってこられなかったことだ。また、適応能力を持つ有能な人材を引きつけることも必要だ。
島国の精神構造は、日本企業が生産する製品にも影響を及ぼしている。コンサルティング会社の野村総合研究所(NRI)は、シャープなどの携帯電話メーカーが国内では至るところで見かける優れた3G技術を開発しながら、携帯電話の生態系が異なる海外では全く影響力を持たない様子を指す「ガラパゴス効果」という用語を生み出した。
シャープは今年、滑稽なほど皮肉も込めず、「ガラパゴス」と名づけた日本市場専用の電子書籍端末を投入している。
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