F1:韓国GPが残したもの(下)

■ベールに包まれた組織「KAVO」に振り回された全羅南道

 今大会を主催したKAVOは、全羅南道(28%)、施工社のSK建設(25%)、韓国自動車レース協会のチョン・ヨンジョ会長が立ち上げたMブリッジ・ホールディングス(17%)、全羅南道開発公社(15%)などが主な株主となっている。全羅南道と開発公社は、合計43%の株式を保有する筆頭株主だが、KAVOが行う事業内容についての情報は一切公表されなかった。KAVOの運営は、F1大会誘致に決定的な役割を果たしたチョン会長が独占的に行った。また、KAVOを構成する30人余りの役員のうち、全羅南道から派遣された職員は一人もいなかった。全羅南道F1大会支援本部運営企画チームのリーダーを務めたキム・ソンホさんは、「巨額の税金が投入されたにもかかわらず、支出の内訳や現状、進行状況などについて、まともな報告は一切なかった」と語る。

 全羅南道庁公務員労働組合のイ・ソクホ委員長は、「今回のF1大会は巨額の血税が投入されたにもかかわらず、放漫な運営が行われた。この問題に対しては、徹底的に検証しなければならない」と主張する。全羅南道のパク・ジュンヨン知事も、「KAVOのように不透明な組織が存在することは、今後のF1大会運営において決して望ましいことではない」として、徹底した調査を行うよう指示した。

 工事代金の管理は、ほとんどがKAVOによって行われた。契約書には、「装備の使用や工事を担当する企業の選定は、すべてKAVOの承認を受けなければならない」という条項が記載され、業者の選定に当たっては、問題を指摘する声も多かった。韓国のある電子機器メーカーは、今回のサーキット建設工事で施工社側と契約を交わし、すでに作業に着手していたが、KAVOが「韓国企業では困る」などとクレームを付けたため、作業を中断した。同メーカーの関係者は、「事実上同じ機械を使うため、45億ウォン(約3億3000万円)もあれば工事が可能なはずだが、KAVOが外国企業に工事を依頼したため、100億ウォン(約7億3000万円)もの費用がかかった」と語る。

 Mブリッジ・ホールディングスがKAVOに出資した102億ウォン(約7億5000万円)の多くは、F1サーキットの工事を委託するという条件で、中小の建設会社に出資させたものだ。ところが実際には工事を受注できなかったある建設会社が、KAVOに対して出資金の返還を求め、今も激しい摩擦が起きている。

 Mブリッジ・ホールディングスのチャン代表は、かつて金大中(キム・デジュン)元大統領の秘書を務めた人物で、また金大中政権では大統領秘書室民政行政官を務め、パク知事とも親しい間柄とされている。そのため、全羅南道がF1の誘致を決めたのも、「道知事とチャン氏が親しかったのが大きな理由だ」という指摘もある。

F1特別取材チーム

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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