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新書が幕末物語に 森田芳光監督の映画「武士の家計簿」

2010年11月27日10時52分

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写真:森田芳光監督拡大森田芳光監督

 幕末の下級武士の暮らしを紹介した教養書が劇映画になった。茨城大の磯田道史准教授が著した『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮新書)。経理係の加賀藩士が残した家計簿を基に書かれた。これを映画「武士の家計簿」として柏田道夫がストーリー化し、森田芳光監督が演出した。12月4日に公開される。

    ◇

 家計簿をつけていたのは猪山直之という名の武士だ。江戸末期から明治初期の約37年間にわたり、日々の生活費から子供の養育費、冠婚葬祭の出費までを詳細に記載していた。映画では堺雅人が演じ、破産寸前の猪山家の財政を直之がいかに立て直していくかが物語の骨格になっている。

 「ソロバン侍が主人公だという企画をもらった段階で、これは面白くなりそうだと興味を持っていました」と森田監督は言う。

 「新書を物語にした映画が成功すれば、新書にはジャンルがいろいろありますから、映画界にとって新たな鉱脈が生まれる。時代劇の主人公の形も広がるし、大変意義あることだと思いました」

 節約に次ぐ節約で窮状を乗り切るという物語は、経済破綻(はたん)にあえぐ現代を生きる私たちにも大いに参考になる。

 「それはたまたま合致したのであって、今の時代にこそ描きたいと思ったのは、むしろお金に代えられない親子の鮮明な関係が当時はあったということです」

 猪山家は代々御算用者(経理係)の家系で、直之も父親(中村雅俊)からソロバンを教わり、息子(伊藤祐輝)にそれを伝えていく。

 「直之は武士なので、剣が弱いことにコンプレックスはあったと思いますよ。でもソロバンは親から教わったことですから。親が子に一生懸命何かを教えることに個人的には関心がありますね。僕も親から教わりたかったな、みたいなね」

 役者たちが見事にはまっている。「この映画はキャスティングがうまく行けば成功が見えると思っていました。僕は、役者は芝居力よりも“私生活力”というのかな、演技をしていない時にこの人はどんな人なのかというのを見るのが好きなんです。登場人物と趣味や考え方の合う役者が演じれば、より高い潜在力を発揮できる」

 直之を支える妻のお駒を演じた仲間由紀恵は会心の配役だったという。

 「仲間さんはこれまで『トリック』や『ごくせん』といった変化球でブレークしてきた。だから、僕の使命はストレートを投げさせることだった。彼女がこれほどストレートが切れる役者だとは、みんな思っていなかったのではないでしょうか」(石飛徳樹)

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