2010年10月1日 14時14分 更新:10月1日 14時41分
第176臨時国会は1日開会し、午後の衆参両院本会議で菅直人首相が所信表明演説を行った。首相は10年度補正予算案の成立を「今国会の最大の課題」に挙げ、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」が「政策の国会」「熟議の国会」となるよう野党側に協力を呼びかけた。沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件については「国内法にのっとり粛々と処理した」と強調。中国に対し冷静な対処を求めるとともに「透明性を欠く国防力の強化や海洋活動の活発化」への懸念を示した。
菅首相の所信表明演説は首相に選出された今年の通常国会で6月11日に行って以来2回目、9月の民主党代表選で再選後は初めて。演説に対する各党代表質問は6、7日に衆院、7、8日に参院本会議で行われる。
首相は演説の冒頭、「政権を本格稼働させる段階に入った」と宣言。歴代政権が先送りしてきた経済成長・財政健全化・社会保障改革の3課題の一体的実現に取り組む「有言実行内閣」を掲げた。
補正予算案は「野党からの提言も踏まえ」雇用や地域活性化などを柱に編成する方針を示し「建設的な協議」を呼びかけた。社会保障改革についても消費税を含む税制と一体的に議論する場を政府・与党で設け「野党とも意見交換をしていきたい」と表明した。
3課題を解決する鍵として「地域主権改革の推進」も強調した。「これまで実感のある変化は生じていない」と民主党政権1年の反省を盛り込み、「壁を打ち破るため」として、9月の民主党代表選で小沢一郎元幹事長が強く訴えた「ひも付き補助金の一括交付金化」に着手することを明言。11年度予算編成では「各府省の枠を超えて投資的資金を集め、自由度の高い交付金に再編する」と公共事業費を中心に進める考えを表明した。
自民党などが批判している民主党マニフェストについては「財源の制約などで実現が困難な場合は国民に率直に説明する」と修正に柔軟な姿勢を示した。子ども手当の拡充額は明示せず、幼稚園と保育園の垣根を取り払う「幼保一元化」法案を来年の通常国会に提出する方針を打ち出した。
外交では中国を「一衣帯水のお互いに重要な隣国」としたうえで「尖閣諸島は歴史的にも国際法的にも我が国固有の領土であり、領土問題は存在しない」と言明した。
また、「日米同盟は我が国の外交・安全保障の基軸」と改めて強調。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題でギクシャクした同盟関係の「深化・発展」に優先的に取り組む考えを表明。同飛行場を名護市辺野古に移設する日米合意については「沖縄の方々のご理解を求め、誠心誠意説明していく」と述べ、11月に来日するオバマ大統領との日米首脳会談までの決着にはこだわらない姿勢を示した。【野口武則】