2010年9月30日 22時34分 更新:9月30日 22時48分
国産初の小型ジェット旅客機「三菱リージョナルジェット」(MRJ)の生産が30日、三菱重工業の名古屋航空宇宙システム製作所(名航)大江工場(名古屋市港区)で始まった。国産旅客機の開発は1962年初飛行のプロペラ機「YS11」以来、約50年ぶり。MRJは航空機産業の集積を図る中部地域の期待を背負い、2012年の初飛行、14年の初納入を目指す。
午前10時20分、名航の担当者が赤いリボンで飾られたスイッチを押した。板状のアルミニウム合金が大型工作機械の中に滑り込み、水平尾翼の骨組み部品をドリルで削り出す作業が始まると、約150人の社員から拍手がわき起こった。
MRJは座席数70~90席。軽量化などでライバル機を2割上回る低燃費を実現した。客室は座席の間隔を広くして乗り心地をよくしたほか手荷物の収納スペースを広くとった。
三菱重工が08年4月に設立し、トヨタ自動車や大手商社も出資する三菱航空機を中心に開発を進め、9月中旬に図面設計を終えた。大江工場などで生産する部品を元に11年以降、三菱重工の飛島工場(愛知県飛島村)で胴体や主翼を造り、小牧南工場(同県豊山町)で機体を組み立てる。
30日の式典で名航の石川彰彦副所長は「身の引き締まる思い。大空にMRJを羽ばたかせる夢を実現しよう」とあいさつ。三菱航空機の江川豪雄社長は「これまでは図面の上の飛行機だったが、現実にものづくりが始まった。MRJを世界のベストセラーにしよう」と呼び掛けた。
今後の課題は新規受注の獲得だ。MRJは全日本空輸と米国の地域航空会社「トランス・ステーツ・ホールディングス社」の2社へ計125機納入することが決まっているが、採算ラインは350機とされる。世界の中小型航空機市場はカナダのボンバルディア社とブラジルのエンブラエル社の寡占状態だが、世界各地でトップセールスをする江川社長は「生産開始で、欧米の航空会社からの引き合いは増える」とみる。年内にも米国の営業人員を増やして欧州にも営業拠点を構え、三菱商事、住友商事、三井物産と協力して大型受注を目指す。【工藤昭久】