2010年9月30日 21時35分 更新:9月30日 21時53分
愛知県などが放送エリアのFM放送局「RADIO-i(レディオ・アイ)」が30日、放送終了を迎えた。広告収入の落ち込みやラジオ離れによる業績悪化が原因で、運営する「愛知国際放送」(名古屋市東区)は近く総務省に放送免許を返上する。同省によると、県域放送を担うラジオ局の免許返上は全国初。地方ラジオ局の経営難が広がっている。【望月麻紀】
同局は00年、トヨタ自動車など地元企業が出資し、東海地域初の外国語FM局として開局。しかし広告収入が伸びず、累積赤字は約30億円に膨らんだ。
地方のラジオ局の経営は厳しく、08年には全国で初めて事業を継承するケースも。北九州市の「CROSS FM」が、「エフエム九州」(同市)から事業を引き継いだのがそれで、製造業中心の地元出資企業からの広告収入に頼っていたため景気の悪化で業績が伸びなかったのが原因。新旧分離で再起を図っているが、広告収入は事業継承時よりさらに2割減が続いているという。今年10月1日には「Kiss-FM KOBE」(神戸市)も「兵庫エフエム」(同)に事業が引き継がれる。
テレビもリーマン・ショック後、広告収入減にあえぐが、在京の民放キー局では今年度、一部回復の兆しも見えるという。一方、ラジオは若者のラジオ離れなどで広告収入は10年間で35%減り、回復も厳しい。
だが、災害時の情報提供などで有効なメディアでもあり、総務省の有識者による研究会は今夏、音質の向上のほか、文字や画像の同時配信などのサービスを可能にするラジオのデジタル化を提言。これに呼応して、日本民間放送連盟はデジタル化に必要な制度などを検討していく方針だ。
レディオ・アイの広報担当者も「デジタル化による再起も検討した」と明かす。ただ政府の具体的な方針が定まらない上、初期投資負担も重くあきらめたという。経営体力の弱い地方局の中にはデジタル化の結論を待てないケースが続きそうだ。