2010年9月29日 21時56分 更新:9月30日 0時55分
中国当局がハイブリッド車(HV)やデジタル家電製造に不可欠なレアアース(希土類)の対日輸出の通関手続き正常化に向けて動き出したことが29日、明らかになり、業界は「歓迎したい」(東芝幹部)とひとまず安堵(あんど)している。しかし、今回の“禁輸”問題で、レアアース調達を中国に過度に依存する日本の産業構造の危うさが露呈した。このため、日本政府は産業界と協力し、アジアや豪州、北米などからレアアースを分散調達する体制作りに乗り出した。
「レアアースの約96%を中国に依存する状況に危機感が足りなかった。カナダや米国、ベトナムなどからの調達を増やし、リスク分散を図る必要がある」。大畠章宏経済産業相は28日の会見で、中国依存からの脱却を目指す考えを示した。
レアアースは北米やアジアでも産出し、かつては米国などでも生産されていた。しかし、人件費の低い中国企業が安売り攻勢を掛けた結果、各国の生産は縮小。埋蔵量で世界の約3分の1を占める中国が世界需要の約9割を供給するいびつな構造となった。
中国は7月、資源・環境保護などを理由に前年比4割減という大幅な輸出規制を一方的に発表。背景には、HVなどの普及でレアアースが戦略資源化したことがあると見られる。これに対し、日本は代替技術開発などとともに、中国以外の供給ルートを探り始めた。中国の輸出規制を受け、開発を中断していた米国のほか、豪州の企業が自国でのレアアース生産拡大方針を表明。日本はこれら企業からの調達を探る。また、29日には、レアアース開発で合意しているカザフスタン政府と東京都内で官民協議を開き、連携を確認した。【立山清也、井出晋平】