2010年9月29日 21時19分 更新:9月29日 23時36分
【モスクワ大前仁】極東を訪問中のロシアのメドベージェフ大統領は29日、日本の北方領土を含むクリル(千島)列島について、「我が国の重要な地域だ」と述べ、北方領土を「必ず訪れる」と明言した。ロシアの閣僚はこれまでも北方領土を訪れているが、首脳が訪問の意向を示すのは初めて。日本が尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡り中国と対立する中、北方領土返還要求をけん制する狙いがあるとみられる。
大統領は、極東カムチャツカ州で記者団に対し「今回は飛行できない天候だったが、近い将来、必ず訪れる」と答えた。ロシア外交筋によると、大統領は29日にサハリン本島から国後、択捉両島を訪れ、07年から始まった「クリル開発計画」に基づき建設中の施設を視察する予定だったという。
訪問計画は27日、サハリンの通信社が報じるなどして明らかになり、日本側は「両国関係を著しく損なう」と外交ルートを通じてロシア側に警告していた。今回の大統領発言は、北方領土の実効支配を誇示し、領土問題で容易に譲歩することはないとの意思表示とも受け取れる。
メドベージェフ政権は、第二次大戦終結から65年の今年を節目の年と位置づけ、日本が降伏文書に調印した9月2日を記念日に制定した。訪問計画自体、日本の出方を見定めるための「観測気球」との見方もあるが、ソ連軍参戦や北方領土の実効支配を正当化する動きの延長線上のものといえそうだ。
極東連邦管区のイシャエフ大統領全権代表は今月9日、国後、択捉両島を視察、大統領訪問の準備に入っていた。このためロシア側が、7日に起きた尖閣諸島沖の中国漁船の衝突事件を受けて、直後から訪問を立案したとは考えにくい。
だが、メドベージェフ大統領は27日、北京で中国の胡錦濤国家主席と会談。対日歴史認識で両国が協調する姿勢を示しており、外交筋からは「日本は尖閣問題で足元を見られた可能性もある」との指摘も出ている。