2010年9月29日 20時52分 更新:9月29日 23時27分
【ワシントン斉藤信宏】金の国際相場が史上最高値を連日更新し、1オンス=1300ドルを突破して、なお高値を探っている。米景気の先行き懸念から連邦準備制度理事会(FRB)が追加の金融緩和に動き、ドル先安感が広がっているのが主因だ。ニューヨーク市場の金先物相場は29日、早朝の時間外取引で一時、1オンス=1314.80ドルまで上昇。前日(28日)に付けた高値(1311.80ドル)を上回り、史上最高値を更新した。28日は終値も前日比9・70ドル高の1308.30ドルと5営業日連続で終値ベースの最高値を記録した。
金が歴史的な高騰を続けているのは、ドルの先安感が広がる中、ドル資産の目減りを嫌った投資家が金に資産を振り向ける動きが止まらないからだ。本来はユーロや円など他の主要通貨がドル離れした投資マネーの受け皿になるはず。しかし、欧州経済はギリシャに端を発した財政危機と金融システム不安が共鳴。最近もアイルランドの大手金融機関の経営危機が深刻化するなど「投資家のユーロ離れが加速している」(米投資会社)状況。一方、円は日本の金融システムが相対的に安定しているため、対ドルや対ユーロで買われ、15年ぶりの円高水準となっているが、「冷静に見れば、先進国中で最悪の財政赤字を抱えている上、日本の当局による為替介入リスクもあり、安全な資金の逃避先と言い切れない」(同)。そんな主要通貨全般への市場の信認の低下が「安全資産」としての金の魅力をかつてないほど高めている。
サブプライムローン問題など米金融危機の表面化を受け、金価格は08年3月、1オンス=1000ドルの大台を突破。その後もドバイ・ショックやギリシャ財政危機に伴うユーロ不安などを材料に上昇を続け、1000ドル達成から約2年半で相場が3割も切り上がった。デフレ懸念も台頭している米欧が金融緩和の維持・拡大に動き、日本も円高阻止へ日銀の追加緩和が不可避な中、当面、金への資金流入は止まりそうになく、市場では一段の高値を予想する声も出ている。