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[24492] 【習作】孫皓(改)伝 (真・恋姫無双 呉ルートエンド オリ主)
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/22 16:55
零話.「ストライクフリーダムな孫」

Side:一刀

「一刀さま!」

慌ただしく駆け寄ってきた女性が1人、俺にすがり付いてきた。若い頃なら頭を撫でて抱きしめて「どうしたんだい(キラリ)」とするところだが、今の俺は70過ぎたジジイ。そんなことをする元気はない。

「一体そんなに慌てて、どうしたんだい。陸坑」

母親の爆乳は何処へ消えたのかと聞きたいほどの貧乳具合。本人も気にしているようなので言わないのが紳士だろう。彼女は現在の孫呉を支えている文官の筆頭でもある。

「そ、それが…」

「それが?」

ふふふ、今日はどうしたのかな。こんなにも取り乱して。いつもは何が起こってものほほ~んと構えている彼女なのに、珍しい…じゃ…ないか。まさか、いや、そんな。最近なりを潜めていたから油断していたが、まさか!?

「孫皓さまが“学校を作る”と言って文官を引き連れて、出て行かれましたぁあああああ!」

「嘘だろぉおおお!文官を向かわせ……って、すでに論破されているのかよっ!!」

「どうすればいいんでしょう」

「連れ戻すんだ!近衛兵たちはどうした?」

「すでに洗脳されて言うことを聞きません!」

「うがぁああああ!」

最近の俺の悩みはただひとつ。俺の孫たちの中で唯一男として生まれてきた孫皓のことである。


姓は孫、名は皓、字は元宋。
俺の孫の中で一番年下になる彼は、生まれてくる時代を間違えたと言っていいほど、才能を有り余らせる存在だった。
武術もこの大陸で彼と渡り合える人間はいない。知識も乾いたスポンジが水をどんどん吸収するかのように習得していく。それに比例して孫家特有の自由奔放さが表に出てきたことが問題だった。
雪蓮もシャオもフリーダムだったが、孫皓はそれを軽く凌駕するストライクフリーダムだ。
彼女たちの対象はごく限られたものだったが、彼が行うことは周囲の人間を巻き込みすぎる。
なんで、こうなってしまったのだろう。幼い頃の彼は、素直で天真爛漫で孫呉のマスコットキャラクターだったのに…。
やはり、母親である孫和が病気で死んだとき、落ち込んだ孫皓を彼女たちに預けたのが拙かったか。結局、孫皓は叔母や従姉妹たちにそそのかされて、女装をしたのがきっかけで随分とはっちゃけてしまった。
しかも、顔立ちが雪蓮にそっくりのため、彼が女装すると涙が…。味を占めたのか最近は化粧と演技で俺の残り少ないLPをごりごりと削ってくるし、最悪すぎる。

「なぁ、陸坑」

「何ですか、一刀さま。もしかして何か案が?」

「もうゴールしても(蓮華たちの元に逝っても)いいよね」

「キャー!医者ぁあああ!衛生兵ぃいいい!誰か助けてぇえええええ!」

本当に誰か助けて…。


翌日、お茶を飲んでいた俺の下に、走ってきたのか息切れを起こした女性がやってきた。

「ぜはっ…一刀…さま…、大変…です…」

「深呼吸、はい。すって、はいて、すって、はいて」

「すー、はー、すー、はー…」

「落ち着いた?」

「はい、おかげさまで…って、落ち着いている場合ではありません!孫皓さまが」

「今度は何をしたんだい(遠い目)」

「“俺は漁師になる”とおっしゃられ、河を下っていかれました」

「ぶほっ!?今すぐ連れ戻せぇえええ!つーか、何でそんなことに!?」

「街に新しく開いた『お寿司屋』で食べた寿司がまずかったそうです」

「漁業の改革か!?流通の確保もするつもりなのか!加工品も考えてくるつもりかぁあああ!」

「どうなさいますか?」

「どうするもこうするも、まずは孫皓を連れ戻して来い。話はそれからだ!昨日、学校建設に割かれた人員以外の文官を集めろ、足りなければ武官もだ。会議の場を設けて、そこに孫皓を放り込めぇええええ!」

「御意!」

も…もうだめぽ。
なんでこの年齢になってなお、こんなにも働かなければならないんだろう。俺も皆の元に逝きたい…。だが、あの孫皓を残したままじゃ、死ぬに死ねない。史実とは別の意味で孫呉が滅んでしまう。
ぐぅ…、結局俺がストッパーになるしかないのか。


翌日、目を覚ますと、すでに女性がスタンバっていた。嘘だろう、こんな朝早くから何をしたんだよ、孫皓の奴。

「ご報告致します。孫皓さまが」

「今度は何だ?学業か、税か、農業か、林業か、それとも」

「賊の討伐です」

「そう、賊の……討伐?」

「はっ。蜀との境界線に現れた山賊を討伐しに、昨夜の内に兵を100連れて出立なされました」

「そ…うか。報告ご苦労、下がれ」

「御意」

朝議に出るため玉座の間に向かうと、武官も文官も勢ぞろいしていた。玉座には娘である孫亮が座り報告を聞いていた。俺の存在に気付いた孫亮は立ち上がり声を掛けてきた。

「お父さま…」

「情勢はどうだ?敵の数は?」

陸坑が書類を手に取り報告する。

「敵の数は150、北の方から流れてきた物盗り集団であることも判明していますが、蜀の領内で村を襲い皆殺しにする蛮行を働いたようです。正規軍とは戦わずに山の地形を活かし逃げ回っていたようですが、孫皓さまが今回連れて行った100の兵は全て、周泰さまが育て上げた暗部の者たちです。殲滅は時間の問題かと思われます」

「はは、末恐ろしいですな、孫皓さまは」

「まったくです」

皆の言い分は理解できる。動きが早い上に先を見通す力はもはや神懸かり的だ。
武術・知識・政治・統制、全てにおいて秀でる彼を将の誰もが慕いそして信頼する。
『国とは民であり、民がいるからこそ国は成り立つ』という信念の下、彼は生きている。だから命を賭けて民を護っている。その姿を兵1人1人が見て家族に伝え、その家族が他の民に伝えることで彼を慕う民が増えた。今も増え続けている。
孫亮が次期孫呉の王として彼を推薦するのも頷けるのだ。

「…それに、蜀との共同討伐になるのであれば、彼女が来るよな」

「ええ。恐らく私に宛てた礼状と、お父さまに宛てた手紙を携えて、孫皓に会いに劉玄ちゃんが来ると思いますわ」

「ああ。彼女がくれば、しばらく孫皓も暴走しなくなるだろう」

「一刀さま、お茶になります」

「すまないな。いやぁ、久しぶりに羽が休めるなぁ」

「ふふふ、そうですね。……って、あら?」

ずずーっと、茶を啜る俺。

「報告致します!孫皓さまが行方不明になられました!」

「ブフーッ!!??がはっ、ごほっ…はぁあああ!?」

玉座の間に居た全ての人間全てが驚愕の表情を浮かべている。顔を青くした孫亮が駆け込んできた兵に尋ねる。

「ま、まさか…孫皓が討たれたのですか!?」

馬鹿な!孫皓が負ける程の手だれが相手ということは、この大陸に存在する将に勝ち目はない。

「違います。山賊は討伐完了しました。被害も零です。しかし、帰還する途中で管輅という占い師に遭遇し、孫皓さま自ら話をなさっておられたのですが、突然目を開けておられぬほど閃光がその場にいた全ての者を包み込んだのであります。光が収まって辺りを見回したのですが、孫皓さまも管輅という奴も忽然と消えてしまっていたのです!」

管輅?俺がこの世界に来ることを占ったっていう……。そいつがなんで孫皓を?

一体何が起ころうとしているんだよ…。


Side:???

とある荒野にて。

「……占いも捨てたものじゃないわね」

うつ伏せに倒れていた青年に近づき、女性はその青年の横顔を撫でた。



あとがき
コン太っす。
ふふふ、板を変えて孫皓君、復活っす。
ええーい、王道チート主人公系SSいやっふーっす。
【ネタ】バージョンもチラシ裏にあるけど、暗いよ…
感想お待ちしてます。



[24492] 一話.「私の血+天の御遣いの血=……」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/23 10:45
一話.「私の血+天の御遣いの血=……」※書き直しました?

Side:孫堅

「ふぅ…仕事から抜け出して飲むお酒はおいしいわ」

城壁の上で遥か先に見える地平線を眺めながら、私は杯をクイッと傾けお酒を飲み干した。
これで何かおもしろいことがあれば十分なんだけどなぁ、例えば…雪蓮にそっくりな男の子が現れるとか。あるわけないよね…。

「もしもし、そこで仕事をサボって酒盛りをしている太守さん。私の話を聞かんかね」

人聞きが悪いわね。そんなんじゃないわよ、ちょっと休憩しているだけよ。

「誰よ、貴女」

「私はしがない占い師じゃ。……私のことはともかく、東に10里程の場所に向かいなさい。そうすれば、貴女が今一番欲しているものを得ることが出来るであろう。では…」

「ちょっと、待ちなさいよ。貴女は誰なの?」

「……あーあんな所に大きな壺に入ったお酒が転がっている」

「何ですって!…って、ひっかかるか!……嘘、いないし」

胡散臭い占い師ねぇ。……今一番欲しているものか。暇だし行ってみよ。


何もない荒野のど真ん中にその子はいた。
長い薄紫色の髪、褐色の肌に紅い装具を細身でありながらしっかりと筋肉がついているその身に纏い、艶を出しながらも品のある装い。……顔を撫でてみたけど、肌はみずみずしくて張りがあってお餅みたいに柔らかったし…じゅるり、おいしそう。あれも大きそうだし…、お持ち帰り決定ね♪
胡散臭い占い師さん、ありがと。本当に一番欲しいと願った雪蓮にそっくりな男の子、確かにこの孫文台がいただきました。いやいや、今からいただくんだけどね。じゅるり…。

さて、この子を独り占めするには結依や祭に見つからないことが第一条件ね。むしろ雪蓮たちに見つかっても駄目じゃない。これだけ似ていたら、私の『隠し子説』や『雪蓮の双子説』が浮上しちゃうし、困ったなぁ。
一番簡単なのは、この子が起きて自らの足で私の部屋まで付いて来てくれることよね。でも、狼に食べられると分かっていて付いて来る子羊っているのかしら。いたらいいなぁ…。

「…う…、うぅ…」

「あら?」

目が覚めたみたい、これは好都合。
まずは、自己紹介よね。その後は、「頼っていいのよ」と安心させる雰囲気を作って私の部屋まで連れて行き、あとは、ぐふふふ…。

「此処は、…管輅!どういうことだ…って、どちら様ですか?」

「さっきの占い師、管輅っていうんだ。……ああ、ごめんね。私はあそこに見える街で太守をしている者よ」

「はぁ…、お綺麗ですね」

「あら♪ありがと」

私を確認していきなり「お綺麗ですね」って。真正面から見ると顔立ちは雪蓮そっくりだけど、やっぱり男の顔をしているじゃない。ああん、やっぱり息子も欲しかった。3人も生まれたんだから1人くらい男の子でもよかったじゃない。
目の前にいる男の子は、周囲を見回して自分の装備を確かめている。…って、あれ?

「その腰に携えているのって、何?」

「ん?これですか」

そう言って男の子は携えていた剣を抜き私に見せてくれた。幾千、幾万の戦いを乗り越えてきたような風貌に息を呑む。

「これは、俺の家に代々伝わる宝剣『南海覇王』です。武術の心得を持たなかった孫呉3代目の王である孫亮叔母さまから預けられている物で、俺個人の所有物ではないのですが」

孫呉…ね。私、まだこの街しか治めていないけど、いずれは大陸を得るにまで至ったのかしら。

「……貴方は、誰?」

「俺ですか?姓は孫、名は皓、字は元宋。『天の御遣い』の孫であり、孫呉の地を守護する孫家の突撃隊長ですね」

「孫皓……って、突撃隊長?」

「ええ。賊の討伐とかだったら、前線に出て兵を放っておいて1人で片っ端から敵を屠るんですよ」

「臣下は?」

「動きが遅いんで置いていきます」

えぇええええええ!?『南海覇王』を持っているだけでも驚きなのに、何やっちゃってんのよ、この子ぉおおおお!?
私の血?それとも『天の御遣い』とやらの血のせい?……確実に私の血だ。

「いやぁ、今回も胡散臭い占い師が「お主は女難の相が出ておる…歳の離れた親族には気をつけるがいい」って変なことを抜かすから、「一回、死んでみるか?」と言って南海覇王の柄を握った所だったんですけど…」

歳の離れた親族に気をつけろって、そのまま私のことを指しているじゃない。中々やるわね、管輅。

「童貞は母さんに貰われたし。孫休姉さんや孫亮叔母さまとも寝たことあるし、今更気をつけろって言われても、…ってどうかなさいました?」

「うん。少し、驚いただけよ…気にしないで」

私は私自身に流れている血が心底、嫌になった。ううぅ、今度から自重しようかしら。……って、すでにこうなっている未来は変えられないじゃないの、やめやめ。私は私のまま生きるわ。

「ところで太守さま、ここは何処なのでしょうか。貴女さまの肌の色を見る限り大陸の南の方であるということは間違いが無さそうなのですが、如何せんこんなにも荒野が広がっている場所は記憶にないので」

「えっと、ここは……って、待って?今、なんて言ったの?こんなにも荒野が広がっている場所に記憶はない!?」

「ええ。南の方は空いている土地、全てを耕して農業が出来るようにして米や麦、野菜などが何処を見ても生っていましたから。さすが俺、孫呉全兵力を使っての屯田祭りは楽しかった」

もしかして私、ヤバイのを引き当てた?

「これだけ手付かずの土地があるんだ、楽しいだろうなぁ。変えていくの。野菜類の改良とか、土壌改善とか、家畜・飼料の改良も今回は手をつけてみたいし、それに街道も整備したほうが良さそうだな。でも、俺は帰らないといけない場所があるし……、でも此処を改造してしまってからでもいいよね、お爺さま。という訳で、雇ってください」

何が「という訳で」よ。能力的には魅力的なんだろうけど、この子を連れて帰ったらヤバイ気がする。ここは心を鬼にして、引き下がってもらうしかないわね。これで他の所に行かれてそこが発展してしまったら、私の所為だけど、その責任は全て負うわ。だから…

「孫皓、ごめんなさい。今、私たちは自分達のことで手が一杯で、貴方を養う余裕は」

「お爺さまは言っていた」

ないと言い切ろうとしたときに言葉を被せるようにして孫皓がしゃべり始めた。

「勇敢な男は自分自身のことは最後に考えるものである、と」

「は?」

「ということで、まずは太守さまたちを幸せにすることから考えよう。資金が豊富になって生活が豊かになってから俺の考えていることを手伝ってもらうようにして貰えればいいし」

「ちょっ」

「まずは、あの街に太守さまを連れて帰らないといけないな。太守さまが乗ってきた馬はどっかに行ってしまったし」

「え……。ああ!いつの間に」

「ここは、お爺さまが常日頃言っていた、女性がされて一番喜ぶ抱き方で連れて帰らねば!」

一番喜ぶ抱き方?って、きゃああ。

「お爺さま曰く、『お姫様抱っこは女性の夢』らしい?」

「疑問系で抱きかかえていい物じゃないわよ!!」

「しかし、太守さま良い匂いですね。ちょっと欲情してしまって押し倒してしまいそうな……あそこに丁度よさそうな森があるのでそちらに行きませんか?」

「人の話を聞いてよ!お願いだから!」

「いやよいやよも、好きのうち。By叔母さまたち」

「え、えっ、えぇえええええええ!」

「ささ、行きましょう。太守さま、これで俺のことを気にいったら雇ってくださいね。俺、お爺さまの血を引き継いでますから、絶倫ですよ」

私の血+天の御遣いの血=雪蓮以上の自由奔放さと絶倫!?ちょっと、何の冗談!?

「誰か、助けてぇえええええええ!」

嗚呼、結依。今日は帰れ無さそうよ。祭、負担を掛けるけど、私の分の仕事も片付けておいてね……アッーーーーー。



あとがき
何処が増えたか解るかな……すんません、これが限界でしたm(__)m
二話でなんとか挽回しますのでご容赦を…っす。



[24492] 二話.「俺の特技は女装です」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/23 15:39
二話.「俺の特技は女装です」

Side:孫堅

森へ連れて行かれ情事を行っている途中、どうにか彼の意識を私の体から外せないかと考えて振った話題は功を奏し、中にするのだけは防ぐことに成功した。代わりに聞かなければ良かったという情報と士官させるという約束をしてしまったのはしょうがないと諦めることにした。そのときの話題とはこれである。

「貴方のお母さまってどんな方だったの?」

「えっと、俺が物心つく前に病で死んでしまったんですけど、お爺さま曰く毅然として凛々しかったけど、ショタだったそうです」

「しょた…って、何?」

「さぁ、お爺さまが母さんに注意しているのを聞いただけですから、詳細は俺も知りません」

「……そう」

それがなんなのか、彼が知らなくて良かったと思えるのは何でかしら。って、待って!

「物心つく前に亡くなっているの?」

「ええ、そうですけど」

さっき、彼は言わなかった?「童貞は母さんにもらわれた」…………。
ルールルー、聞いていないわ。私は何も知りません。ルルルー…あ、キツネが寄ってきた。


月明かりだけが街を照らす中、私と孫皓は建物の影に隠れながら移動していた。

城に帰る上で問題が2つあるのだ。ひとつは私の後ろをついてくる孫皓のこと。彼を城で働いている武官や文官の誰かに見られるわけには行かない。もうひとつは今日の政務をさぼった私自身である。祭ならまだ誤魔化せる気がする。最悪、高い酒を奢れば何とかなるはずだ。これの相手が結依の場合、幾ら私でも逃げ切れる自信は無い。孫皓のことも隠せない。なんせ、雪蓮を産んだ時、彼女も一緒にいたからである。
彼の戸籍をどうにかして確保するには、今は疎遠になっている妹の孫静の力がどうしても必要不可欠なのだ。

「手紙を書くにしても、一度城に戻らないといけないし、何より…」

「腹減った…」

後ろで暢気に腹を摩っている彼を私の部屋に隠さないと何を仕出かすか解ったものじゃない。この街に入ってすぐに彼は眼を輝かせてこう言ったのだ。

「宝の山だ」って。

何が!と訊こうとした私に罪は無いはず。今だって、「道幅が狭い」とか「建物の位置が」とか、色々と呟いているのだ。放っておいたら本気でヤバイことになるのは目に見えている。有能すぎるのもどうかと思わない?

「男を連れて夜道を散歩とは、いいご身分ですなぁ、堅殿ぉ」

「うひぃ!?」

角を曲がろうとした時、不意に声を掛けられた。この声は、

「あはは、こんばんは。祭」

「ほんの少しお酒を飲んでくると言って、結局戻ってこんとは……今日という今日は堅殿でも許さんぞ」

祭はそう言って担いでいた弓に手を掛けようとするが、その手は空を切る。

「はて?」

「あら?」

「へー。こうなっているのか、えっと弦の強度は…と。ほほーう」

月の光が差し込む一角で、孫皓は祭の多元双弓を分解し

「って、ワシの弓になにするんじゃー!」

すぐさま己の武器を取り返す祭だったが、綺麗に分解されていて、すぐに使い物にはならないことは分かった。

「坊主、よくも……って、策殿?え、ええ。いや、でも、胸もないし…」

祭は孫皓の身体を頭の頂点から足先まで見て胸の辺りを凝視し、私の顔を見てこう言った。

「……堅殿、ワシは酔っておるのじゃろうか。策殿が男になっておるぞ」

「んー。そんな訳ないでしょ。それとも祭は雪蓮に抱いて欲しいとでも?」

「いや、さすがにそういう訳では……なんじゃ?」

孫皓が私の横に来て手を喉に当てる。そして恐るべきことに

「あー、ああー。よし。……もう、困っちゃうわね。そんなに抱いて欲しいなら今からでもいいわよ」

と、雪蓮の声で祭に言い放ったのである。祭の顔色が白から赤へ、赤から青へと変わり「きゅう…」と言って倒れた。
私は目の前で起こったことが理解できなかった。いくら似ているからって、声まで真似できるはずがないと。

「最初は女装だけだったんだけど、お爺ちゃんの反応があまりにもいいんで演技とか化粧とかにも力を入れるようにしていたら、いつの間にかね。へへへ」

「お願いだから、その声で話すのは止めて…。違和感ありまくりよ」

「普段だったら、胸に詰め物して口紅を注すんだけど、これもあり?」

「無しよ!」

雪蓮の声でくすりと笑う孫皓と気を失った祭を見て、私は大きく溜め息をついた。


Side:孫皓

目の前にいる太守さまは気絶した銀髪の女性をどうするか悩んでいるようだ。
俺は彼女から少し離れて漆黒の闇の中に浮かぶ満月の月を見上げ、此処は一体何処なのかと自問自答する。
大陸の南側だっていうのはもう分かりきったことだが、なぜこの太守さまの雰囲気は叔母さまたちに良く似ているんだろうか。思わず身内にしか見せたことがないこの姿を晒すことになるし。

管輅の話によれば俺の祖先たちが築いたこの国を壊そうとしている奴らがいるっていうから力を貸すって言ったのに、明確な敵の像も告げずにいなくなるとかいくらなんでもおかしいだろ。それになんで俺はあんな所に1人でいたんだ。兵を100人程連れていたはずなのに。
悩めば悩むほど、次から次に謎が頭の中に出てくる。

「いくわよ、孫皓」

「彼女はどうするんですか」

「背負って連れて帰るわ」

「私…ああー…、俺が抱えていきましょうか?」

「……祭は私の大切な仲間なんだから、押し倒すとか無しよ」

「はーい。…よいしょっと」

俺は銀髪の女性をお姫様抱っこする。するとそれを眺めていた太守さまがぼそりと呟く。

「これを…私もされていたのね」

誰に似ているんだろう。孫亮叔母さまはお淑やかな所があるし、孫休姉さんとは違うなぁ……ああ、母さんだ。お爺さまから聞いた、母さんの像にそっくりなんだ。ああ、納得。


城の前まで行くと女性が1人立っていた。

「うぅ、すんなり部屋まで行けるかなって思ったけど、そんなに甘くないか」

そう言って、太守さまは頭を垂れる。どうやら彼女にとって、あそこに立っている女性は天敵のようだ。俺にとっての劉玄みたいな。あの娘、本気で天然だから、俺がしっかり見ていないと何をするか分かったもんじゃないんだよな。おかげで俺が政に参加して意見をいう時間すらない。お爺さまたちは、彼女が来ることを喜んでいたけどなんでだろう。

「美連!貴女、何度言えば分かるのよ……って、雪蓮ちゃん?」

「ああー…こほん。叔母さま、見ての通りだから彼女を部屋に連れて行ってあげたいの、私は通ってもいい?」

「ええ、いいわよ。用があるのは美蓮だけだから」

「嘘ぉおお!?」

「じゃあ、おやすみなさい。叔母さま、母さん」

「ええ。おやすみ雪蓮ちゃん」

至極簡単に通れた。太守さまがぴーぴー喚いているけど、まぁ問題はないだろう。さて、このお姉さんの部屋はどこかなぁ……。侍女さんでも探して聞けば大丈夫か。

「おねえしゃま…どこにいくの?」

「ん?」

振り向くと薄い桃色の髪を白いリボンでまとめた幼女が、俺の服を掴んでいた。名前がわからないのが悔やまれる…。

「どうしたの?」

「んー。おしっこ」

「…………行ってきたの?」

「……」

「いや、黙らないでよ」

「漏れる」

俺は銀髪の女性を放り捨てた。鈍い音がしたが仕方がない、俺は幼女の脇の下に手をいれ持ち上げ厠を探して廊下を駆けた。その甲斐あって間に合ったが、今度は幼女の部屋を探すことになり途方にくれることになったのであった。



あとがき
結依さんは冥琳の母になりますっす。
彼女が見分けがつかなかった理由は胸が黄蓋を抱きかかえていたことで見えなかったことと、顔自体が影によって見えにくくなっていたからです。
似た背格好と声だけなら、通れるかなと思うっす。



[24492] 三話.「過去には興味ありません」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/24 19:18
三話.「過去には興味ありません」

Side:孫堅

「結依のバカ…。なんで私だけ…ぐすっ」

結局、結依に見つかった私は、彼女からたっぷりと説教されることとなった。帰れなくした原因はさっさと城の中に入っていってしまうし、私は今の今まで酒を飲み歩いていたことにされてしまったし、最悪だ。
それにしても、彼の女装技術は凄いとしか言えない。なんせ思慮深く観察力が高いあの結依をいとも容易く突破したのだから。本気で女装した孫皓と雪蓮、2人が並んだ時、皆どう思うのだろうか…。

妄想―――

「こんにちは、私は孫皓。よろしくね」孫皓

「策殿が2人じゃとぉおお」祭

「まさか双子だったのか!」冥琳ちゃん

「姉さまが2人!?」蓮華

「わぁーい、おねぇしゃまがふえたー」シャオ

…………普通に受け入れられそうで怖いわ。


城の中に入ると、侍女が私の姿を確認したのか駆け寄ってきた。話を聞くと祭が廊下に倒れていたらしく、医務室に運ばれて医者に診せたそうだ。命に別状は無かったものの、お酒の臭いがしたことから飲み潰れて部屋まで辿り着けなかったのだろうと解釈されたらしい。

「祭、貴女も飲んでいたのね。…孫皓!」

「何、母さん」

「って、うひぃ!?」

いつの間にか私の背後に立っていたらしい孫皓に急に声を掛けられた私は、その場から飛び退いてしまった。は、恥ずかしい。
改めて彼を見ると眉を八の字にして困ったような表情を浮かべていた。そして、彼の肩の部分にちょこんと見える小さな手。なんとなく、彼がなぜこんな所にいるのか理由が分かるけど、

「孫皓、貴方こんな所で何をしているの?」

と訊いてみた。

「んー。困ったことに、この娘を背負って移動していたらいつの間にか眠っちゃって、どうすればいいのかわからなくなっちゃった。それで仕方なく城の中を歩き回っていたんだけど…」

「……何か言われなかった?」

「侍女たちから「あらあら」とか「姉妹仲がいいですね」って言われたけど?」

背負われた状態で眠っているシャオを見ながら、愛おしげに微笑む孫皓は、正しく雪蓮の顔にそっくりだった。
母親である私が認めるのだから、他人には本人に見えること間違いがない、胸以外。
このままだと本当に『雪蓮の双子説』が蔓延してしまうので、早々に手を打たなければならない。

「孫皓、とりあえず私の部屋に行きましょう。そこでこれからのことを話すの」

「ええ。母さん」

「雪蓮はね、私のことを母さまって呼ぶのよ」

「ええ。母さま」

私、今なんで訂正させたのかしら?違和感があったから?
ああ、いつか絶対私も騙される日がきっと来る…。


孫堅の自室にて――

シャオをそっと寝台の上に降ろし寝かせた孫皓は、シャオのおでこを優しく撫でた後そっと額に口付けを落とした。
って、いうか、なんでこの男は雪蓮の癖まで知っているのよ。シャオも本当に雪蓮にされたと勘違いして「うにゅう」って鳴いているし。

「本当に可愛いわね、この娘。ゴホンッ、ああー。太守さまの娘さんですか?」

声を元の男の状態に戻した孫皓は少し疲れたのか、体勢を少し崩して尋ねてきた。

「ええ。この子は小蓮。名前は孫尚香っていう私の三女ね」

「え゛!?」

突然、表情を彫刻のように固めた孫皓は心底驚いたような声を上げた。

「どうかしたの?」

もしかして、私が誰であるのか気付いたのかしら。ふふふ、もう慌てちゃって可愛いんだから。

「こ、この娘が、あの……」

「ん?」

「子育てに追われ疲れ切っていたお爺さまを、さらに追い詰め何度も昇天させようとした、尚香さまですか。……こんな無邪気に笑って眠るような頃もあったんですね」

シャオ…。未来で何があったのよ。

「俺が生まれた後もお爺さまに迫ることは多かったらしいですし……実際にお爺さまが襲われているところをみたことがありますけど…」

待って!黙って!私の可愛いシャオをこれ以上、汚さないでぇええええ!


1刻後…

「すー…すー…」

静かになった私の部屋にシャオの寝息だけが聞こえる。

「すみません、取り乱しました」

「もういいわよ。でも気をつけて、貴方の知りうる情報は皆にいらない衝撃を与えてしまうから」

「御意」

さっきまでとは打って変わって憂いある大人な男の表情を魅せる孫皓に、私の胸は否応なく高まってしまう。何なのこの感覚、さっきまでのふざけた感じがまったくなくなったと思ったら、いきなり格好良くなっちゃって…ヤバイ。子宮が疼いちゃう。

「(つまりギャップ萌ですね)」ぼそり

「何か言った?孫皓」

「いえ、別に…」

今、彼は椅子に腰掛けた私の前に片膝をついた状態でいる。つまり私が誰かということに気付いたっていう証拠。ちょっと残念な気もするけど、仕方がないよね。

「貴方も気付いているとは思うけど、私の名前は孫堅、字は文台よ。そして、此処は長沙。分かった、孫皓?」

「…………(゜×゜;)?」

あ、あれ?反応がまったく無い。ここは、『なんだってぇええ!?』とか『そんな貴女が孫堅さまだったなんて、今までのご無礼お許しください』って、なる所じゃないの?

「……誰?」

ここに来て、まさかの『……誰?』発言!?
え、ちょっと待ってよ。シャオを知っているということは、私の孫か曾孫に当たるんじゃないの?どうして私のことを知らないの?もしかして、名を残せていないの、わたしぃいいいいい!?

「えーと、孫和、孫権さま、孫策さま。…うん、知らない」

「今のは?」

「母方の親ですね。孫和が俺の母、孫権さまは俺の祖母、孫策さまが俺の曾祖母ですね」

「そこは私!孫堅が入るの!孫策、孫権、孫尚香は私の娘なのよぉおおおおお!(泣)」

「へー」

「反応が薄いっ!?」

「俺、過去には興味ありませんから」

「う…うわあぁあああああん!!」

いくらなんでもあんまりよぉおお!ぐれてやるー。今日は政務、絶対にしない!朝から晩まで飲みまくってやるわぁああああ!

「じー」

「…見ているっていうのは分かったけど、口で言うと格好悪いわよ」

「いやぁ、泣き崩れる孫堅さまも可愛いなぁ、と思って。…ちょっと一部が元気に」

私は自分自身の血の気が「サー」っと下がる音を聞いた気がする。
嫌な汗が止まらない。今、私の部屋にいるのは私と獲物を見つけた肉食獣と同じ目をした孫皓だけじゃない。シャオも私の寝台の上で眠っているのだ!

「孫堅さまが声を上げなければ大丈夫です」

「お、鬼ぃいいいいいいい!!」

ええ、昨日に引き続き今日もやられました。(すでに日が変わっている)

もう…つかれた。寝る……。



あとがき
孫皓君がいま何処にいるのかを知る回でしたっす。



[24492] 四話.「彼は『彼女』で私の『姉』」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/25 16:54
四話.「彼は『彼女』で私の『姉』」※この解釈は無理があったかも

Side:孫策

いつまで経っても起きて来ない母さまを起こしに、私は部屋の前まで来た。途中で妹達の部屋を覗いたが、末っ子のシャオの姿がなかった。恐らく母さまの元に行ったのだろうと思いながら、廊下を歩いてきたのだが、その途中で「姉妹仲がいいですね」とか「お姉さんの鑑ですね」と声を掛けられたけど何のことかしら。
母さまの部屋の扉に耳をつけて中の様子を窺う。母さまが誰かと会話している声が聞こえてくるので起きているのは間違いがなさそうだ。私は扉を開けて、母さまに朝議が始まらないことを伝えようとしたのだが…。

私の目に映ったのは、母さまが薄紫色の髪を持った誰かを足で踏みつけ、罵っている姿だった。
母さまとその誰かの視線が私を捉える。
私は自然と後退り、こう叫んで逃げ出した。

「母さまの変態――!」

「ちょっ、待っ、雪蓮、誤解よぉおお、戻ってきてぇええええ!?」


玉座の間にて―――

朝議の場に遅れてきた母さまの隣には外套を頭から被った誰かを連れて来た。恐らく今朝、母さまに踏まれて罵られていた誰かに違いない。

「えーと、朝議を始める前に、皆に紹介するわね。私の隣にいるのは、名前を孫皓といって私の妹である孫静の一人息子。見聞を広めるために私のところに来たそうなの。一人の兵として扱って欲しいということだから、祭。貴女の部隊で面倒を見てあげて」

「ほう…。孫静殿の息子とな。実力はいかほどなのじゃ?」

「それも貴女自身の目で見極めてあげて。私では身内贔屓してしまいそうだから」

「仰せつかった。大船に乗った気でいるとよい」

「うん、お願いね。……結依」

「分かっている。編成の方は私が何とかしておこう」

「ありがと」

母さまが何を言おうとしているのかを察知して長年連れ添った夫婦のように以心伝心する彼女達の姿を見て羨ましいと思った。私もいつか冥琳とこうなるんだと意気込んだのだが、その時、蓮華が疑問を口にしたのだった。

「どうして外套を脱がないの?」

言われて見ればその通りだ。さっきから彼?は身動きしない。

「…ああ、そうだったわね。でも、その前に一言だけいい?」

「どうしたの、美蓮。歯切れが悪いじゃない?:

そう言って結依小母さまが母さまを心配する。

「うん、雪蓮。貴女は一人で生まれて、姉妹は蓮華とシャオだけよ」

「当たり前でしょ、何を言っているの?」

「孫皓、脱いでいいわよ」

そして、外套を脱いでそこに現れたのは、長い薄紫色の髪、切れ長の透き通った蒼い瞳。褐色の肌に細く引き締まった体躯、艶を出しながらも品のある装い。ぶっちゃけたところ男装した私がいた。

「「「「「え゛え゛――!?」」」」」

従兄弟!?これだけ似ていて従兄弟だというつもりなの!?
耳を澄ませば彼を見た武官・文官の皆が「似すぎだろう」や「隠し子では?」とか「孫策さまの双子の兄弟では?」と騒いでいる。祭を見ても目を点にして驚いているし、結依小母様も眩暈がしたのか額を手で覆っている。蓮華は私と彼?の顔を交互に見て「あわわわ…」と慌てているし、シャオに至っては「おねぇしゃまがふえたー」って喜んでいる。って、どれだけ似ているのよー!

「孫皓、挨拶をして」

皆、息を呑んだ。静まる玉座の間、彼?が口を開く。

「こんにちは、私は孫皓。よろしくね……って、緊張して声が!?」

「孫皓のバカーー!?」

玉座の間に居た人間の内、現在しゃべっているのは母さまと孫皓だけ。なぜって…

「姉さまと同じ声……きゅう」

どさりと倒れる蓮華。気持ちは良く分かる。
私とそっくりの声で自己紹介をしてしまった孫皓は母さまに罵られている。きっと今朝も“男の声”で自己紹介できるように練習していたのだろう。そしてうまくしゃべることが出来ずに母さまからお仕置きされていたのだと思う。
古来より『双子は家を分かつ』ということで、不吉なものとされてきた。恐らく「彼」いや「彼女」は私を母さまの手元に残すために孫静叔母さまの下へ行かされた、私の双子の姉か妹になるのだろう。私はそう思うと涙が零れるのを抑え切れなかった。私が母さまや蓮華、シャオと楽しく過ごしている間、彼女はきっと寂しくて辛い思いをして生きて来たに違いない。
私は無条件で母さまの後を継ぐが、彼女は偉くなったとしても結局は私の臣下にしかなれない。同じ父と母の下に生まれてきたのに、この仕打ちはないだろうと私は思った。でも、今の私に彼女を救えるだけの力は持っていない。悔しい、悔しいよ。

「雪蓮…」

私を心配してか冥琳が声を掛けてくれた。私の内情を察するかのように、震えていた私の身体を抱きしめる。

「彼を…いや、彼女を必ず私たちの手で救ってみせよう。諸侯らに大丈夫だというのを見せ付けるのだ。お前達4人が笑って幸せに暮らすことができる国を造るんだ。私たちの手で」

「冥琳…。うん、そうよ。待っていて、お姉ちゃん」

彼女は私の顔を見ると愛おしく微笑んでいるかのように見えた。


Side:孫堅

「微妙に勘違いされている気がしますね。孫堅さま…」

「いや、あの娘、本気で勘違いしているわよ」

今朝、彼と話し合いをしている所を、雪蓮に見られた時から嫌な予感はしていたのよ。絶対に何か大事なことをヘマをする予感。案の定、孫皓が自己紹介を雪蓮の声色でするという大失態をおかした。
雪蓮たちの反応も気になるが、私たちを見守っている諸侯らの反応もおかしい。すごい騒ぎになるかと思っていたのに…。初老の文官に至っては「ぐぉお…双子は家を分かつというが……このような仕打ちを…与えるとは……神は血も涙もないのか…ぐぅぅ」と男泣きしているではないか。
うん…いい具合でヤバイわね。彼らの中ではすでに、雪蓮と孫皓は双子として認識されているようだ。

「孫堅さま、この誤解だけは解いておかないと後で泣きを見ます」

「待って、今これに火種を放り込んだら!」

「皆、聴いて!私と彼女は本当になんでもないの(キラリ)」

と、いらない演出(涙を一筋流す)をやってしまった孫皓。再び静かになった玉座の間だったのだが、次は耳を押さえなければやっていられない程の泣き声の合唱に頭を悩まされることになった。
「健気だ…健気すぐるー」とか「お、おねえちゃん、ぐすっ…待っていてすぐに皆で笑って暮らせる国を作ってみせるからー」とか「ぐぉお、酷すぎるのじゃー」とか、もう収拾がつかない。

「なんでこうなった……」

「貴方の所為でしょうが!」

と、私が彼を蹴ろうとすると、皆の視線が集まる。……うん、もの凄く痛いです。

私が…私が悪いの!?ねぇ、誰か教えてぇえええええ!!


あとがき
あんまりオチが強くないけど四話はこれで終りっす。
難しいな年頃の娘の内情は……精進っすね。
じゃ……下に陽炎くんが出てきてます。




アンケート調査

Side:太史慈

俺の名前は太史慈、字は子義。作者の都合で明るい王道チート系の孫皓のお守り役に前作から引っ張ってこられた、転生者だ。
前回に引き続き胃が痛めつけられそうな予感がするぜ。はぁ…。
ちなみに今、俺がしゃべっている部分はナレーション的な意味合いを持つから、物語には一切関係ない。念のため。
何をしに来たのかって、読者にアンケートを取る為だ。こういったのには俺が使いやすいって作者が言うんだぜ。いくら何でもヒドクね。作者め、爆発しやがれ。

訊きたいのは、

①オリキャラスカウトの為の旅期間延長について

②ステータス表示の有無

③ストッパー劉玄の有無

の3つだ。感想の所に意見をくれれば少ないLPを削って作者が奮闘するらしい。俺的には、③の劉玄ちゃんは欲しいな、俺の胃のために。②だと、俺は統制6武力8知識5政務6胃10。…胃に負担が掛かるキャラっていうのが一目瞭然になる訳だな。

ではここら辺で打ち切るとしよう。

次回の見所は俺と孫皓の闘いのシーンだ。血沸き肉踊る闘いに乞うご期待!





[24492] 五話.「俺も大概チートだと思っていたけどさ…」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/26 21:41
五話.「俺も大概チートだと思っていたけどさ…」

Side:太史慈

俺は黄蓋さまの下で兵として調練を行う新兵の一人、名前を太史慈っていう。史実を知っている方がいればこう思うはずだ。「なんでこの時期にここにいるのか」と。
俺は転生者だ。だから史実を知っている。だから手っ取り早く孫家のお膝元に来た。

早い段階から孫呉に仕えていれば、この英雄が女性にTSした世界で美人の嫁さんを貰って、結構いい給金をもらってにゃんにゃん出来るかなぁと考えてきたわけだ。
孫堅さま…いい。孫策さま…すごくいい。黄蓋さま…一生ついていきます。という風に、思っているわけだけど、さすがに王族には手を出すわけがない。
あれは、主人公キャラが落とすヒロインだ。俺じゃあない、断言できる。
確かに身体能力は高い、頭だって現代知識があるからある程度は出来る。だが、それだけだ。
それを使って何かをしろと言われても俺には何も出来ない。出来るのは新しい親父とお袋から貰ったこの人より頑丈なこの身体で戦うことだ。今までは山の動物を相手にしか戦ってこなかった為、勝手が違うことに頭がついてこなかったりしたが、最近慣れてきたこともあり黄蓋さまに見込みがあると褒められた。

内心踊りたい所だったが自重して今日も自分に磨きを掛ける。そんなある日、彼女?が新兵として黄蓋隊に組み込まれたのだ。同期の連中は彼女?に「いやっふー」と黄色い声を上げる。
黄蓋さまの隣にいたのは、長い薄紫色の髪、切れ長の透き通った蒼い瞳。褐色の肌に細く引き締まった体躯、艶を出しながらも品のある装い。ぶっちゃけたところ、男装した女性がいた。いたんだけど…俺の本能が言っている。あれは違う、騙されるなって……。

「こやつの名前は孫皓。堅殿の妹である孫静さまの一人息子じゃ。だからといって贔屓はせん。お主らと同じ新兵として組み込むことになった。……太史慈、孫皓の相手をしてもらってもいいかの?」

「はっ!」

俺は自分の槍を持って彼女?の前に立った。

「よろしくね」

そう言う彼女?に俺は周囲に聞かれないくらいの小さな声で一言、

「お前、男だろ?」

「…………あ゛-。よく分かったね」

マジで男なのかよ。まさか、他にもいるのか、こいつみたいなの…。


Side:黄蓋

「…………」

「…………」

互いに武器を構えて向かい合う孫皓さまと太史慈。
孫皓さまに関しては堅殿からワシ自身の目で実力を測るように言われている。
ただ、孫皓さまの相手をしてもらうのは新兵の中で頭一つ抜き出た存在である太史慈だ。彼は七尺七寸という恵まれた体に、切磋琢磨して自分の力を磨くという清き心を持っていた。好感が持てるし、これから策殿や権殿を支えていく武官の筆頭になりえるとワシは考えている。
しかし、彼は今伸び悩んでいる所が見られる。今回、孫皓さまと戦うことで、もし負けても何か得られるものがあると確信していた。
ワシが予想していたよりも彼らの能力は低くなかった。
向き合った瞬間から彼らから放たれる氣に新兵たちは次々と気を失っていく。ワシが鍛えた兵たちも彼らから放たれる氣に圧され後退りしている者が見られる。ワシ自身動きをとることが出来なくなっていた。
両者は何か動くきっかけを欲していた。息を呑むのも憚られる。その時、誰かが『ゴクリ』と喉を鳴らした。
それから、目を見張る彼らの攻防が始まったのだった。

「はぁああ!」

先に動いたのは太史慈だった。
その腕から捻り出される強力な一撃は、遠巻きに見ていたワシらに風を感じさせるほどの薙ぎであった。孫皓さまはその攻撃を切っ先で逸らし、一歩踏み込んだ。太史慈は槍を引き、孫皓さまに向かって突きを放つ。それを紙一重で避ける孫皓さま。しかし、次々に突きを放つ太史慈の攻撃に避け続けることを強要される。だが、その顔は喜びに満ちていた。ワシであればすでに捉えられているであろう高速の突きを涼しげに避け続ける孫皓さまに、ワシを初め遠巻きに見ていた全ての兵の視線が釘付けになる。よく見れば太史慈も笑っていた。

「いくぞ、孫皓!」

彼の槍の動きが変わる。大上段に槍を構える太史慈が地を駆けた。
大きく振るうことで遠心力を味方につけた彼の一撃が孫皓さま目掛けて振り下ろされた。その軌道を完全に見切った孫皓さまは隙を付いて彼の肩を目掛けて突きを繰り出す。太史慈は振り回すようにして強引に槍を振るって、その突きを払いのけた。

この攻防にワシは完全に興奮しておった。血沸き肉踊る闘いが、今目の前で繰り広げられておる。太史慈は完全に一皮向けたようだ、そして孫皓さまの強さは堅殿に通じる所がある。彼らの闘いは打ち合う度にどんどん研ぎ澄まされていく。そして、突然動きを止めた孫皓さまは太史慈に向かってこう言い放ったのだ。

「あははは、楽しいよ。太史慈……君の闘いぶりが“俺”の魂に火をつけた!」

太史慈の身体が『ビクッ』と震えた。彼はすぐに防御の構えを取ったが、槍を持ったまま前のめりに倒れた。彼の背後には、瞳を黄金色に爛々と輝かせる孫皓さまが立っておった。あの一瞬で彼の背中に回ったというのか…、なんとも末恐ろしいお方じゃな…。


Side:孫堅

祭とお酒を飲みに来たんだけど、彼女はすでに出来上がっていた。昼間、孫皓と太史慈っていう新兵の戦いを見て興奮したみたいで、お酒を煽る早さが尋常じゃない。

「堅殿ぉお、孫皓さまは逸材じゃぞー。いずれ策殿や冥琳と共に皆を率いていくことはもう間違いがないじゃろう。ワシは太鼓判を押すぞー」

そう言って、また杯を傾ける。『ゴクッゴクッ』と喉を鳴らして豪快に飲んでいく彼女の姿を見て、私は疑問をぶつけてみた。

「ねぇ、祭。孫皓はどっちだと思う?」

王として皆を率いていくのがいいのか、それとも臣下として雪蓮や蓮華を支えていくほうがいいのか。

「ふむ、そうじゃな…」

私は祭の答えを待った。

「あやつは…」

「孫皓は…?」

「見所がある“娘”じゃな。あれは堅殿に通じるものがあった。まぁ、ちと大人しい感じを受けたがの」

私は思わず机に伏した。

「私、言ったよね!孫皓は孫静の一人息子だって!」

「何を言っておるんじゃ、堅殿……いや、そういうことであったな」

「何?何を勝手に納得しちゃうの?違うのよ、本当に孫皓は私の子じゃ」

ないと言おうとした瞬間、祭がものすごく睨んできた。おかげで言葉を飲み込んでしまった。

「堅殿!いいんじゃ、いいんじゃぞ。もう苦しむことは無い。今、ここにいるのは、1人の母親とその愚痴を聞く1人の友人じゃ。本音を言っても誰も文句は言わんさ」

「いや…だから……」

「堅殿が何も言わずともワシはちゃんと分かっておる。つらかったのであろう、娘である策殿たちにも、幼馴染である結依殿にも明かすことが出来ずに、1人で悩んできたのだろう。もう、いいんじゃ。ワシは堅殿の味方じゃ、この先何があったとしてものう」

あ……ああ。祭の優しさがもの凄く、私の良心を抉っていくぅうう!なんで、こんなことに…。


孫堅の自室にて――

酔いつぶれた祭を部屋まで送っていき私は部屋に帰ってきた。
横になろうとしたら急に手首を掴まれ引き寄せられ、荒々しく抱きしめられた。こんなことをする人間に思い当たるのは1人しかいない。

「孫皓…、今日は疲れているの。お願い、寝かせ…て……!?」

彼の瞳を見て驚いた。なんと黄金色に爛々と輝いていたのだ。そして彼の身体はもの凄く熱を持っていた。

「孫堅さま……俺、俺…もう…」

これはきっと私が賊を殺しまくったり、血が滾るような闘いをしたりした後に陥るアレと同じものだろうと考えが及んだ。よくもまぁ、私が帰ってくるまで保ったものだと感心する。

「……いいわ。貴方の熱、私で治めなさい」

「すみません…」

そう言って寝台に孫皓は私を押し倒した。
まぁ、今までの中で一番荒々しく、そして強引で、逞しかったってことだけを記しておくとしよう。

…………

……

って、孫皓。何を!?ちょっと、そっちは駄目!!えっ、叔母たちは喜んでいた?だから私もきっとイケる!?

い、いやぁああああああ!やめ、アッ――――――――!!



あとがき
孫皓くんの本気は通常の三倍の速さで動く……だったらいいなぁっす。
読者の皆様、アンケートにご協力頂きありがとうございましたっす。これからも孫皓(改)伝をよろしくっす。では…


太史慈の部屋

こんにちは、あとがきの下に枠を勝手に作者が作っちまったのでちょくちょく出てくることになった太史慈です。よろしく。

アンケート結果について報告するぜ。

①については、「有り」や「延期」って言葉が書かれていたので第2部をまるごとそれに当てるらしい。作者が頑張ってプロットを作成してやがる。ざまぁ…。それから「風評を聞いて…」っていう意見も出たので、第1部にて孫皓になにかをやらせるらしいよ。孫堅ママの嘆きと一緒に…。

②については、「有り」という意見が多かったので、この場を借りて我らが主人公・孫元宋のステータスを表示するな。ただし、この板の孫皓は、王道チート主人公なので鋭い突っ込みは勘弁してくれ。

名前:孫皓 字:元宋 真名:鷲蓮 年齢:16歳
本来は統制9武力9知識8政務8なのだが、天気と自由が10というダブルコンボで普段は1/2状態。※興奮して血が滾ると瞳が黄金色になって本来の姿を取り戻す。おかげで瞬殺されたよ、トホホ…。

③については……。読者の皆様、俺と孫堅ママをそんなにいじめたいのか!?作者の奴、劉玄ちゃんが参加するはずだったプロット削除しやがったぞ!しかも、俺が胃薬を手に入れやすくするためにオリ医者キャラを作成しているし、真名を瑠音っていうそうだ。分かる人は分かるって言っているけど誰だ?

今回はこれで打ち切るとしよう。

本来ならここで次回予告なのだが、それは無しの方向で。一言いいか。

「孫堅ママに合掌ー!」

チーン………じゃっ、またな。



[24492] 六話.「孫皓姉さま、上着は脱いじゃ駄目!!」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/27 08:40
六話.「孫皓姉さま、上着は脱いじゃ駄目!!」

Side:孫権

その姿は一枚の絵画を見ているかのように美しいものだった。
剣を振るっていたのを終えたのか、汗を流すため彼女は水浴びをしていた。流れるような薄紫色の髪、その髪を梳く仕草、傷ひとつない玉のような褐色の背中。扇情的な光景であるはずなのに品があるように見えるのは、きっと彼女が王の血を継いでいるからに違いない。彼女が手拭いを取ろうとして私の方に振り向いた。細く引き締まった上半身が露になり、2つの桃色の突起が外気に晒され……さらされて?

「って!?孫皓姉さま、上着は脱いじゃ駄目―!!」

と私は彼女の元に駆け寄り手拭いで胸を急いで隠す。そして周囲を確認する。孫皓姉さまの肌を見た者など私が斬ってくれる。

「……孫権…さま。大丈夫ですよ、私は“男”ですから」

「なっ!?」

私は彼女の言葉に衝撃を受けた。
「私は“男”ですから」この言葉には、彼女が育ってきた環境の状況が滲み出ている。まず、姉さまとは赤の他人であり、“姉妹”と悟られるわけにはいかないから、男として生きるように強制されたに違いない。だから、上半身を晒したまま水浴びしても何とも思わないのだろう。
それに私のことを「孫権…さま」と躊躇いつつも敬称をつけて呼んだ。本来であれば、彼女とは姉妹として、真名を呼び交わす仲になっていたはずなのに…。

「孫皓…姉さま」

「孫権さま、私は貴女に姉ではありません。貴女のお姉さんは、…孫策さまだけです。お間違いのないように…」

「うぅぅ……孫皓…」

「それでいいのですよ」

そう言って彼女は上着を羽織、私に背を向け歩いていく。彼女の背中が少し震えていたように私には見えた。

「どうして…どうして?本当なら姉妹として生きられるはずだったのに……どうして、そんなことを言うの。どうしてそんな悲しい表情をして微笑むの……、孫皓姉さま」


Side:孫堅

うぅぅ…、汚されちゃった。汚されちゃったのー…。
まさか不浄の穴までやるとは、孫皓恐るべし。足腰が本当に立たなくなるまでやってくれたものだから、結依に頼んで今日は自室で政務をさせてもらうことにしている。ちなみに竹巻で山がひとつ築かれている。
私の隣には結依がいて心配そうに見ているけど、本当のことは言えない。

「美連…。彼女のことは私にも言えない秘密だったのだな」

…って、あれ?何この展開、もしかして結依怒っている?

「2人で決めたことであったのか、それとも……いや、愚問だな、彼女……いや彼のことは」

「結依。孫皓は孫静の息子。それ以上でも以下でもないわ」

もう!結依まで勘違いしちゃっているじゃない。雪蓮を産んだ時、一緒に居たでしょう!秘密にしていたってことが気にくわないのか、ちょっと不機嫌になっているし。

「ふむ、そういうことにしておこうか」

「結依…。孫皓は男よ」

「分かっている。“息子”なのだろう?」

「意味深に言わないでぇえええ!何か違う風に聞こえるからぁあああ!」

結依は何かを考える素振りを見せながら部屋から出て行った。静かになる室内。残されたのは私と積み上げられた竹巻の山×3……あれ、増えてる……。


Side:孫権

お母さまがいない朝議が終わった後、彼女は祭の下で調練するために修練場に向かう。私はそんな彼女の後を追った。遊びだと思ったのか、シャオもついて来ることになったのは予想外だったが、彼女を連れて行かない訳にはいかない。ここで拒否すれば妹は泣いてしまうだろう。そうしたら彼女に気付かれてしまう。

「おねえちゃま、どうするの?」

「孫皓姉さまはね、男として育てられてきた所為で、羞恥心が疎いの。だから、私たちが護ってあげないといけないの。分かった?」

「うん。シャオ、おねえしゃまをまもるー」

修練場についた孫皓姉さまは、剣を抜き赤い鎧をつけた大きな男の前に立った。男は槍を両手で構える。
そんな、明らかに孫皓姉さまが不利過ぎる!どうして祭は止めないの?シャオも顔を青くして私の服を掴んでいる。私たちはことの成り行きを見ていることしか出来ないの…?

勝負が始まった。燃え盛る劫火のように激しい攻撃を孫皓姉さまに放つ男。シャオは見ていられないのか目を瞑り、耳を手で塞いでいる。私は…不覚にも目を奪われていた。
彼の目を見張るような攻撃を軽くいなして、舞いを踊るような動きを見せる孫皓姉さまの姿に私は魅了されていた。
見れば祭や近くで手合いをしていた兵たちも2人の手合いに目を奪われている。そして、彼の攻撃を捌き切った孫皓姉さまは、一足で彼の懐に入り込み、無防備になっていた顎を蹴り上げた。闘っていた男の体が少し宙を舞う。そして彼は後ろ向きに倒れこんだ。まだ意識があるようで孫皓姉さまに向かって必死に手を伸ばしていた。孫皓姉さまも彼に向かって手を差し出している。まるで、「もっと闘おう」とでも言っているかのようだ。だが、彼の手は孫皓姉さまの手を掴むことは無かった。

私は格好良くて、強くて美しい、孫皓姉さまに魅了されてしまったようだ。
恐らく私の顔は完熟した桃のように朱に染まっているだろう。は、恥ずかしい…。

「おねえちゃま、おねえちゃま!」

「はっ!?どうしたの?」

イヤンイヤンと身悶えしていた私を揺するようにして気付かせてくれたのはシャオだった。

「あれ…」

そしてシャオが指差した先では、孫皓姉さまが胸当てを外そうとしていた。たぶん、汗を拭こうとしているのだろうけど、また上半身を晒すかもしれない。私はシャオの小さな手を握って彼女の下に走った。
彼女が上着の裾に手を掛ける。男達の視線も釘付けになっている。

「駄目~!!上着は脱いじゃ駄目なの~!!」

私は孫皓姉さまが細い腰回りとおへそが見えるくらいまで裾を上げた状態の所で、辿り着くことが出来た。途中、シャオの手を放してしまった為、向こうでシャオが転んで泣いている。

「孫皓、汗なら私とシャオが拭いてあげるから、こっちに来て。……貴方たち、こっち見たら殺すわよ」

私は物惜しそうに孫皓姉さまの身体を見ていた兵たちを睨み付けた。すると蜘蛛の子を散らすように、兵たちは元の場所に戻り手合いを再開させたが、心なしか肩が下がっている。

「権殿…」

「祭、分かっているわ…。でも、女の肌は安いものじゃないでしょ」

「分かっておられるなら、ワシは何も言わんよ」

そう言って祭は兵たちに喝を入れた。その声に飛び起きた孫皓姉さまと戦っていた男は、転んで泣いているシャオに気付いて歩いていっていた孫皓姉さまに向かって「次は勝ってみせる」と言った。それを聞いた孫皓姉さまはくすりと笑ったが、そのまま彼には何も言わずにシャオに向かっていく。「何も答えないの?」と尋ねようと思ったけど、彼の方もすでに祭の元に向かっていた。
孫皓姉さまは、お母さまや姉さまとは違った魅力があるように私は思えた。
私は恵まれている。だって、目標とする人がお母さまの他に頼れる姉が2人もいるのだから…。


Side:周瑜

母さんの仕事の手伝いを終え、部屋に帰る途中、私は彼女と出会った。そういえば、彼女とは面と向かって会話をしていないなと思った私は、何をしていたのかを訊いてみた。すると、剣を振るっていたと答えが帰ってきた。
小腹が空いたので厨房でつまみ食いをしてきた帰りで、軽く水浴びをした後眠るそうだ。

私はふと同行していいかを尋ね、許可を得て月明かりが地表を幻想的に照らす中庭に出た。
上着を脱いだ彼女の胸にはさらしが巻かれていた。
雪蓮とは違いまったく成長していない胸、「お前は男だ」と言われ続けたら自身は男だと頭は勘違いして成長しなくなるのかと思えるほど、男らしくと言っては失礼だが、引き締まった身体だった。
私の視線に気付いたのか、彼女はくすりと微笑んだ。
私は自分自身の体の中に熱が生まれたのを感じた。雪蓮に抱くものとは、また違った熱を…。

気付くと私は彼女の腕の中に収まっていた。絡み合う私たちの視線。
私たちが口付けを交わすのに、そう時間は掛からなかった。




あとがき
ノーコメントっすぅううううう!!



太史慈の部屋

作者ぁあああ!!おどれはなにをやっとんのじゃぁああああ!!読んで下さっている読者の方々へ謝罪しやがれぇええええ!!ぐぐぐ、作者の奴、こたつに潜り込んで出てくる気配がねぇ。………スイッチ入れてやる。出てきたら、皆様に謝罪するんだぞ!

今回のステータス表示は孫家の4人である。ちなみに作者は現在原作の6年前という設定で書いている。孫皓と違って彼女らはこの後飛躍的に成長していくから、これはあくまでも現時点でのステータスだ。そこんとこ、よろしく。
じゃあ、行ってみよう。

名前:孫堅 字:文台 真名:美蓮 年齢3?
統制7武力9知識6政務6相性10
孫皓を拾った孫呉の祖。なぜか曾祖母と曾孫の関係であるにも拘らず、身体の相性は抜群という悲(喜)劇。ことあるごとに抱かれる運命。一応、孫皓のことは手のかかる息子くらいに思っている。

名前:孫策 字:伯符 真名:雪蓮 年齢16
統制4武力4知識3政務2双子10
未来の小覇王。孫皓を双子の姉だと思い込み甘える予定。孫堅と孫皓の強さに憧れている為、これまでより一層鍛錬を積むことになっていく。

名前:孫権 字:仲謀 真名:蓮華 年齢11
統制1武力1知識2政務1真面目10
孫皓の親衛隊(羞恥心的意味合いで)隊長。成果として胸にさらしを巻く事に成功した。母と姉?2人を見て、王とはなんたるかを学んでいく予定。

名前:孫尚香 真名:小蓮 年齢7
…………ない
孫家のマスコットキャラクター。これからの成長に期待。


文句を言いたいのは分かるが、あくまで現時点(六話)での話だ。そこの所お忘れなく…。

で、作者なんだが、脱水症状でダウンしちまったぜ。阿呆だな、作者のやつ…。

じゃ…また、よろしく。



[24492] 七話.「あの子にはきっとヤンデレになる資質があると思う」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/27 21:21
七話.「あの子にはきっとヤンデレになる資質があると思う」

Side:太史慈

照りつける太陽、周りには完全武装の兵士たち、そして手に持つのは自慢の武器。
黄蓋さま率いる山賊討伐隊は荒野を東に向かって行進していた。先頭には黄蓋さま、その後ろに彼女が鍛え上げた精鋭たち、その後ろが俺たち新兵だ。その中に俺と孫皓が並んで歩いている。

「なぁ、孫皓…。なんで頭を垂れて落ち込んでいるんだ?」

「太史慈。…最近、皆から女扱いされている所為か。自分の本当の姿は女なんじゃないかと思うようになっていて…」

重度の精神障害じゃねえか。

「パオーンが消えたり…」

「ぶふっ!?」

「胸が大きくなったり…」

「げほっ!?」

「太史慈を誘う夢とかを見るようになったんだ」

「夢の話かよ!!」

人騒がせな。そしてなんて悪趣味な…。
少なくとも山賊討伐に向かう途中の行軍で話す会話ではない。先頭を行く黄蓋さまには聞こえていないようだが、周りにいた仲間たちは俺が噴出すのを聞いて何事かと見ている。

「……思い切って、髪…切ろうかな」

そういって自身の薄紫色の長い髪を梳く仕草をする孫皓の姿を見た仲間たちは、彼女?に詰め寄り「切らないでくれ」「俺たちの紅一点がぁああ!」とかを言ったり叫んだりした。そして、その言葉を聞いていた黄蓋さまに絞められた。馬鹿だな、あいつら。

「大体何も相談せずに、その綺麗な髪を切ったら、まず間違いなく何かあったのかと詰め寄られると思うぜ。こいつらでさえ、こんな反応なんだ。あのお前の肌を見られまいと奮闘していた女の子なんか目を△にして、そうするように言った奴を探して回ると思うぜ、剣を片手に」

殺す気満々で街を徘徊するだろうよ。想像するだけで怖い。

『ソンコウネエサマノカミヲキルヨウニイッタノハアナタナノ?ネェナンデキルヨウニイッタノ?ネェ、ネェエエエエ!!』

怖ぇえええ!あの子にはきっとヤンデレになる資質があると思うな。


Side:孫権

「くちゅんっ…」

「あら、蓮華。風邪?」

姉さまが私の顔を見て心配そうに聞いてきた。寒気もしないし頭も痛くない。

「たぶん、誰かが私の噂をしているんだと思うわ、姉さま」

「そう…。ねぇ、今日の冥琳を見た?」

「ええ。なんだか変だった」

いつもは凛としていて何があっても動じない彼女なのだが、今朝の彼女は違った。まず、顔が紅い。次に、ぼうっとしている。最後に、股に何かが挟まっているかのように歩きにくそうだった。
それを見たお母さまはニヤニヤと笑い、結依小母さまは満面の笑みで彼女の頭を撫でていた。何かあったのは間違いがない。

「姉さまも分からないんですか?」

「冥琳に聞いても、はぐらかされるのよ」

何があったのかを話さないなんて、姉さまと断金の誓いを交わした彼女にしては珍しい。ついでに何かを悟ったお母さまと結依小母さまも。

「なんだろう?」

「う~ん……お姉ちゃん絡みかな」

お姉ちゃんって、…孫皓姉さま?もしそれが原因だとしても訊く事が出来ないじゃない。なんせ、山賊討伐に祭の部隊と一緒に出かけていったのだ。結構距離があるらしく、帰ってくるのは少なくても一週間後という話だ。

……大丈夫かなぁ。皆の前でさらしを外したり、無防備な姿を晒したりしていないよね。


Side:太史慈

孫皓は男だ。ぱおーんが付いているし、本人が言っているから間違いない。だが何だ、この女っぽい仕草は!
彼女?が寝返りを打つ度、仲間の誰かが鼻血を垂らす。可愛らしい寝言を洩らせば、仲間たちはたちまち前のめりに身を屈める。止めは朝にする水浴びもしくは清拭……何人の仲間が犠牲になったか。
黄蓋さまは普段豪快であるにも拘わらず、そういった姿を見た者はいない。よって、彼女?に視線が釘付けになるのも仕方がないといえば仕方がない。だが、あれは男なのだ。
そりゃあ、心に軽くフィルターを掛ければスレンダー美女がそこにいるかのように見えるが、あいつは男と俺の本能が激しく抗議してくるので長いこと見ていることは出来ない。
彼女?の動きひとつであんなにも熱くなれる仲間たちが羨ましいような羨ましくないような……。

まぁ、そんな幻想もこれを見てしまえば何も言うことは無いな。
彼女?の周りには山賊だったモノの死骸が幾つも転がっていた。首だけがない死体、胴を断ち切られた死体、心臓を一突きにされた死体。様々なものが無造作に転がっていた。俺たちと一緒にきた新兵の仲間の内、何人が眼を背けずにこの光景を見ているのだろう。かく言う俺も膝が震えて立っているのがやっとの状態だ。孫皓がやったこと、それは圧倒的な殺戮だった。見(つけた)敵(は)必(ず)殺(す)ともいう。

山賊はとある山に拠点を作り、そこから近くの村を襲っていた。こいつらの所為で何人の良民が犠牲になっているのか考えたくもない。
黄蓋さまは、山賊を1人も取り逃がさないために黄蓋さまが率いる本隊と、孫皓と俺が率いる新兵の別働隊に分けて彼らの拠点を挟撃で急襲する作戦を立てた。誰も異論を唱えなかったため、すぐに決行された。だが、黄蓋さまにひとつだけ見落としていることがあったのだ。それは孫皓が賊を狩り慣れていることを知らなかったこと。

黄蓋さまが率いる本隊がいなくなったことを確認した孫皓は、急に走り出した。俺や仲間たちは驚いたが彼女?から置いていかれる訳にはいかなかったため、全力で追いかけた。そして、山賊の拠点に俺達が辿り着いた時点で、事は終わりかけていたのだ。急に飛び込んできた惨劇の光景に次々と目を逸らし、嘔吐する仲間たち。
そして孫皓の前には、たった1人生き残った山賊の頭らしき男が命乞いをしていた。武器は捨て、地面に額をこすりつけるように土下座して命ばかりはと喚いている。
俺は孫皓を見る。その身体は返り血で赤く染まり、賊を片っ端から斬ってきた剣からは血が滴り落ちている。彼女?は山賊の頭に向かって問い掛ける。

「そう言った人たちに、お前達はどう答えてきたのか」と。

頭の男が何かを言う前に、孫皓の剣が振り下ろされる。断末魔の声が山の中に響き渡り、黄蓋さま率いる本隊が辿り着いた時には、その全てが終わっていた。100体以上の屍の上に立つ孫皓から放たれる殺気はその場にいる者から意識を刈り取っていく。俺が何度も名前を呼ぶが反応は無い。黄蓋さまも必死になって孫皓の名を呼んだ。

それが終わったのは突然だった。『ピーヒョロー』と鳶が鳴く声が山に響いたのだ。
それを耳にした孫皓は空を見上げ、「ほうっ」と溜め息を漏らした。彼から吹き出ていた殺気はいつの間にか消えていた。
ただ、孫皓の瞳は黄金色に輝いていて、正直真正面には立ちたくなかった。


それから、数日を掛けて長沙に帰還した俺達は、街の人や他の部隊の人たちからよくやったと褒められることとなった。
今回は何もしていないのと同じのため、嬉しくはなれなかったのだが、いい経験にはなったと思う。
明日から何日か休みを貰えるらしいし、のんびりするとしよう。

ちなみに孫皓だが、街に入った瞬間から黄金色の瞳を△にして誰かを探しているようだった。そして、孫堅さまを前にした瞬間、消えた。孫堅さまも一緒に消えたのだ。
たぶん……あれだろうな。と思いつつ、俺は帰途についた。

うん。明日は何をしようかな。



あとがき
現在、孫皓が男だと確信を持っている人は4人っす。
今回は山賊討伐に赴いてみました。戦いのシーンが一切ないのはコン太の力量がないからっす。すみません。
じゃ…また、よろしくっす。



太史慈の部屋

まず、孫皓の考えは『賊に堕ちた時点で生きている価値はない。死んでしまえ』で、賊になった奴に容赦は掛けない。
対して、史実の孫堅さまは長沙郡太守になった際『良民を手厚く遇し、公文書の処理は正しい手続きで行い、賊も勝手に処刑しないように』と命令している。この世界の孫堅さまはどんな考えを持っているのかは、次回語られることになるだろう。

では、恒例のステータス表示。今回は黄蓋さまだ。

名前:黄蓋 字:公覆 真名:祭 年齢:27
統制7武力7知識5政務6姉御10
頼れる皆の姉貴分。孫堅さまに仕え、後に3代に渡って孫呉を支える宿将となる。孫皓が孫堅さまの娘であることを疑わない。俺を認めてくれている方だ。一生、ついていきます。

では、ここら辺で打ち切るとしよう。じゃ、またな。



[24492] 八話.「彼女の秘密」
Name: コン太◆a0ea3b6c ID:10b3192c
Date: 2010/11/27 23:00
八話.「彼女の秘密」

Side:孫皓

油断していたと言い訳をするつもりはない。
先日の山賊討伐で血が昂ぶった俺は、久しぶりに全力を出した。そのおかげでしばらく男の状態でいることが出来た。
長沙に帰ってきて、孫堅さまを抱いて、何とか静める事が出来たわけなのだが、朝からの生理現象を止める術はない。
それにここは、孫堅さまからもらった俺自身の部屋であり、寝台の上。彼女がいること自体が変なのだ。
だけど、これで元通りだ。元々俺は男であり、勝手に勘違いして姉だの妹だの騒いだのは彼女たちの方。

けど……この沈黙は何?なんで彼女は頬を染めているの?

「…………」

俺のぱおーんを下穿き越しに手で確認する孫策さま。顔が引き攣る俺…。

「…分かったでしょう。私は“男”なの」

最近、変だな。女の声が地になってしまったかのように、男の声が出せなくなっている。

「………なのね」

「へ?」

「半陰陽だったから、追い出されてしまったのね。大丈夫、私はどんなお姉ちゃんでも受け入れるから、安心して」

え?えぇええええ!?


Side:孫策

お姉ちゃんは、私の言葉を聞いて呆然としている。
恐らく、今までそう言ってくれる人がいなかったからに違いない。お姉ちゃんの初めての人。なんて甘美な響きなのかしら。私はお姉ちゃんの背中に手を廻し、さらしの巻かれたその胸に抱きついた。
私の顔の前で心底信じられないと驚いた表情を見せて頬を紅くしている彼女が可愛く思えて、半開きにあけられたその唇に私は舌を潜り込ませた。


突然現れた彼女に興味を持つなといわれても、そんなことは無理だった。
彼女は何が好きなのだろう。何が嫌いなのだろう。どんな服を着るのだろう。朝は何をしているのだろう。調練では何をしているのだろう。私と好みは一緒なの?それともまったく異なるの?と知りたいことは山ほどあった。

武術の腕は調練を見る限り、私よりも数段上。政務の方はしているところを見ていないから分からないけど、意見を言うくらいはできそうな感じだ。本当は、すぐにでも問いつめたかったのだが私の方も勉学があったり、お姉ちゃんも山賊討伐に駆りだされたりとあったので機会は中々訪れなかったが、今日は私もお姉ちゃんも休みなのだ。なので、今日は1日中お姉ちゃんに付いて回る予定で、彼女の部屋に忍び込んだ。なんだかいけないことをしている気分。
「すー…すー…」と安らかな寝息を立てる彼女を起こさないように静かに歩み寄る。
頬を指で触ると、みずみずしくて、張りがあって、お餅みたいに柔らかかった。いつまでも触っていたい衝動に駆られたが、今日の目的のことを考えしぶしぶ手を引っ込める。私は布団を少しだけ捲った。するとさらしだけが巻かれた上半身が露になる。『ごくり』と息を飲み込んでしまった。そして、お姉ちゃんの顔をもう一度見る。未だに起きる気配は無い。私は布団を元に戻してお姉ちゃんの足の方へ移動した。そしてゆっくりと寝台に上がり、布団を捲り匍匐前進で彼女の布団の中に入っていった。そして、彼女の秘密に辿り着いたのだ。


「ん…んぅ…んん!?…んーーっ!?」

最初は私が攻め立てていたのに、息を吹き返したように私の頭を固定して口内を蹂躙するお姉ちゃんの舌に私の体は火照り始めていた。

「ぷは…はぁはぁ……お姉ちゃん」

「はぁ……はぁ……孫策…さま」

もう一度と唇を合わせようとした瞬間、突然扉が開き誰かが部屋に入ってきた。今、この状態を見られる訳には……と思った相手は母さまだった。


Side:孫堅

「「…………」」

気まずいっ!!
孫皓の部屋に入ってみたものとは、孫皓と娘の雪蓮が抱き合って口付け寸前の姿だった。艶っぽい吐息が漏れていることから一回はやったみたいね。雪蓮がちゃんと服を着ていることから性交の方はやっていなさそうだけど…。
雪蓮は顔を真っ赤にして言い訳を模索しているようだ。対して孫皓はあっけらかんとしている。そこらへん彼は図太いのよね。

ここでは何て言ってあげるのが正解かしら…

①「孫皓、話があるから後で私の部屋に来て」…雪蓮を見なかったことにする。

②「2人とも、今度から気をつけるのよ」…注意するに留める。

うーん。ここは、③の「私も混ぜて」よね。皆で恥ずかしい思いを共有すれば何も怖いことは無いわ!ということで…。

「あ、あの母さま、これは…ち、違うの」

「ええ。分かっているわ、雪蓮」

「え?」

「孫皓、私にも雪蓮と同じことしてー」

「母さま!?」

2人に向かって飛びついた私に、2人は面食らった表情を浮かべたが、孫皓は意を察したのか私の両頬に手を添えて口内をじゅうり……んんーー!?した。
彼の接吻は熱烈だった。生気を吸われてしまったかのように身体が重く感じ私はそのまま孫皓の右隣に横になる。
ぼやける視線で雪蓮の姿を捉えたが、彼女もまた彼の口付けを前に崩れ落ちた。この次はもう決まっている。きっと彼も自身のぱおーんの熱を収めるために私たちの体を使うことになるはず。
大体、孫皓と雪蓮がそういうことをしていたっていうことは、彼が男だっていう事を雪蓮が気付いたからに違いない。これで私の負担も減るかなぁ、って思っていた時に『ガチャッ』と扉を荒々しく開け飛び込んできた小さな影。

「おねぇしゃま、あーそーぼ!」

と言って入ってきたのは我が三女、シャオだった。それに続くように

「ちょっと、シャオ!まだ孫皓姉さまは眠っているかもしれないのに………あれ、お母さまに姉さま?」

まさか孫家全員が揃うとは、好かれているわね、孫皓。
……うぅ、今日は1日悶々とした状態で過ごさないといけないの?ぐすん…。


Side:孫権

「「「…………」」」

気まずいわ、本当に気まずい。
孫皓姉さまの部屋で見たものとは、姉さまが左側から、お母さまが右側から、孫皓姉さまの腰に手を廻して横になっている姿だった。これはどういう状況なのと2人に確かめる前に隣にいたシャオが「ずーるーい!!シャオもー!!」と言って、孫皓姉さまに抱きついた。シャオの下敷きになったお母さまが「ぎゅむー」と変な声を出した。寝台の軋む音がする。

ここではどうするべきかしら…

①見なかった振り。

②「何をしているの!」と注意する。

私は深呼吸して息を整える。そして選択肢③である「私も混ざる」を選んで寝台に上がり、姉さまと孫皓姉さまの間に割り込む。

「ちょっと、蓮華!」

「えへへー、たのしー」

「シャオ!落ちる、落ちちゃう」

「姉さまたちだけ、ずるいです」

「狭い上に苦しい…」

私たちはこの状態で冥琳が起こしにくるまで笑いあっていた。



あとがき
…………(脱兎)



太史慈の部屋
作者ぁああああ!性懲りも無くやりやがって……。
前回、俺の部屋で述べた、孫堅さまの考えには一言も触れてないなんてどういうことだ!
ん?(カンペを拾う)何々、次回で必ず触れる?
……今回だけだぞ!

さて、ステータス表示だ。今回は周家の2人だ。いくぜ!

名前:周笠 字:扇發 真名:結依 年齢:3?
何気に真名で呼ばれる率が高い。孫堅さまの幼馴染で孫皓を男だと見抜いている。ただ、孫皓は孫堅の息子だと勘違いしている所がある。ちなみに次に捕食される危険性があるのは、この人だったりする。

名前:周瑜 字:公瑾 真名:冥琳 年齢:16
孫策さまと断金の誓いを交わした未来の名軍師。孫皓に雪蓮とは違った恋心を抱く。そして、女に……。羨ましい限りだぜ。



じゃ、ここら辺で、またな。


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