北朝鮮砲撃:デマや陰謀論が流れないワケ

「天安」沈没事件当時と違い、被害の状況を目の当たりに

左派団体も挑発行為の中止求める

 「哨戒艦『束草』が『天安』を誤って攻撃した」「自殺を図った兵士が爆弾を爆発させた」「テレビ信号を受信しようとして岩礁にぶつかった」など、あらゆるデマや陰謀説が飛び交った「天安」沈没事件のときとは異なり、今回の延坪島砲撃事件に関しては、発生から三日たっても、デマが流れる気配がない。あらゆるデマの発信源となるインターネット上では、戦死者たちの写真が掲載され、追悼ムードに包まれている。

 今回も一部のネットユーザーから、「民間人に対する違法調査疑惑を隠ぺいするため、大統領府が仕掛けた自作自演劇だ」といった陰謀説や、「延坪島への砲撃は北で泣いている父親たちの誕生日を祝う祝砲だ」といった稚拙(ちせつ)な書き込みが寄せられたが、これらはむしろ、ネット上で非難され、袋だたきに遭った。

 今年3月に発生した「天安」沈没事件と、その8カ月後に発生した今回の延坪島砲撃事件は、似たような性格を持つ事件だが、市民の反応はまったく違う。これについて専門家らは、「海の上で艦船(『天安』)が沈没した事件は、原因の究明に長い時間がかかったため、デマや陰謀説を流すにはもってこいの話題だった。一方で、延坪島砲撃事件は加害者がはっきりしており、中途半端な陰謀説は成立し得ない」と語った。

 警察大行政学科の表蒼園(ピョ・チャンウォン)教授は、「陰謀説の大部分は、他人の耳目や関心を引き、快感を得ようという目的のものだ。しかし、今回の事件は明らかに敵による砲撃のため、陰謀論を流しても受け入れられず、アマチュア陰謀論者が興味をなくしたのではないか」との見方を示した。また、京畿大のイ・スジョン教授(犯罪心理学)は、「『天安』沈没事件は海の上で発生したことから、被害の状況が可視的ではなかった一方、延坪島砲撃事件では破壊された家屋がテレビ画面に映し出され、避難民たちの証言も報じられたため、疑いの余地がなかったと考えられる」と話した。イ教授はまた、「『天安』沈没事件のとき、流言飛語に苦しめられた政府が、検察や警察を動員し、前もってデマの流出をシャットアウトしようと、慎重な対応をしたことも功を奏した」と語った。このほか、「天安」沈没事件の当時、率先して陰謀論を展開させた左派の市民団体も、今回は北朝鮮に対し挑発行為の中止を求めており、最初から陰謀論が成立し得なかった、という見方も出ている。

李恵云(イ・ヘウン)記者

【ニュース特集】北朝鮮砲撃、緊張高まる韓半島

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
関連記事
記事リスト

このページのトップに戻る