中国と密約 裏切りと炎上の民主党政権内幕ドキュメント
ビデオは公開しない約束をしていた!

2010年11月24日(水) 週刊現代
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 しかし、菅首相はまるで"蚊帳の外"だった。ウソみたいな話だが、国家の最高権力者の情報レベルが、その時点では一般市民よりはるかに遅れていたのだ。

「その後の政府内は、混乱の極み。日付が変わった後に報告を受けた菅首相は、『どこだ! どこのチャンネルが流している!』と喚き散らし、テレビではなくネット上だと告げられると、『YouTubeってどうやって見るんだ! どうするんだ!』と焦りまくっていたそうです。一方、仙谷氏のほうは、いきなり『(流出元は)どこだ。海保(海上保安庁)か。那覇(地検)か』と口走ったとか。どちらかに何かされる・・・そんな心当たりでもあったんでしょうかね」(別の民主党幹部)

仙谷は逃げ切れるか

 もともと、菅首相のリーダーシップ不足と仙谷氏の独善主義によって、政府内に混乱が続いていた折だ。「ビデオ流出」という、たった一本の火矢が放たれただけで、民主党政権の"本丸"は簡単に炎上した。

 仙谷氏が、根拠もない段階で「犯人」に言及したくらいだから、政府内ではすぐ、「実行犯は身内」との疑心暗鬼が広がった。与党内でも多かった「映像を公開すべし」という声を無視し、「中国との密約」を裏付けるような態度を取ってきた仙谷氏に対しても、ずっと不満が燻り続けていた。

「流出事件の直前にも、政府内には『なぜ映像を全面公開しないのか』と仙谷氏に詰め寄っていた者がいました。いざ映像が流出した際、彼らが真っ先に疑われたのです」(前出・現役閣僚)

 "容疑者X"としてまず浮上したのは、なぜか原口一博前総務相だったという。

「実は仙谷氏は、流出直後に『原口と小沢の周辺を洗え』と、密かに指示を出しています。原口氏は衝突事件が起きた後に尖閣諸島の視察を挙行しており、小沢氏にも近い。それで、『あいつらが裏で糸を引いているのでは』と疑ってかかったようです」(官邸関係者)

 原口氏にすればとんだ濡れ衣だが、別の"容疑者"として、海上保安庁を所管する馬淵澄夫国交相の名前まで挙がっていたという。馬淵氏は衝突事件に対し、一貫して「中国に対し、日本の立場を明確にせよ」と主張しており、映像公開に関して積極派だったため、目を付けられたのか。

 さらに、そんな疑惑の渦中には、前原誠司外相までが登場していた。

「『前原が怪しい』という話は、実は菅首相周辺から出ていました。確かに前原氏は対中国強硬論者ですが、首相周辺から大臣に『怪しい』という疑いをかけられること自体が異常です。前原氏は仙谷氏の子飼いと見られていることもあり、『首相と官房長官が、互いに疑心暗鬼に陥って責任の擦り合いをしている』ように見え、ますます政府内の動揺を広げる結果になりました」(民主党中堅議員)

 トップの二人が互いを信用していないのだから、その配下に一致団結など期待するのはとうてい無理。互いに容疑者扱いされそうになった前原外相と馬淵国交相にしても、「関係が冷え切っている」(別の民主党中堅議員)という。馬淵氏は6日、前任の前原氏が進めた群馬県・八ツ場ダムの建設中止方針を事実上撤回してしまい、物議を醸した。

「馬淵氏にしてみれば、八ツ場ダムにしろJALの再建にしろ、前原氏がやったのは全部中途半端な思いつきばかりで、自分はその尻拭いをしていると思っている。一方で前原氏は、馬淵氏のことを『自分の総理への道を脅かす存在』として心を許していない」(同)

 人は城、人は石垣、人は堀・・・。戦国の名将・武田信玄の言葉だが、人心さえまとまっていれば、その結束が強固な城となって、国は安定する。しかし、逆に為政者から人心が離れてしまった国は、滅亡する。

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