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所長
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Military Analyst

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2010.11.26

 北朝鮮、特殊ロケット弾使用…多数の殺傷狙う? 

カテゴリ北朝鮮出典 読売新聞 11月26日 電子版 
記事の概要
北朝鮮軍による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃について、26日の韓国紙「中央日報」は韓国軍関係者の話として、コンクリート壁を貫通後、2度目の爆発を起こす特殊なロケット弾が使用されていたと報じた。

 殺傷力の高い兵器の使用で、犠牲者を意図的に増やそうとした可能性がある。

 このロケット弾は、122ミリ多連装ロケット砲で発射されたと見られる。2回目の爆発時に強烈な衝撃波と熱風を放ち、コンクリートの建物内部を破壊する威力を持つ。同紙によると、軍関係者はこのロケット弾で住宅地に「大規模な火炎が発生した」と指摘した。韓国軍は不発弾20発を回収し、分析を進めてきた。

 韓国軍は、北朝鮮軍が砲撃の数日前、黄海南道(ファンヘナムド)・ケモリ海岸砲基地に1個中隊を展開させ、122ミリ多連装ロケット砲を使用したことを確認。北朝鮮が攻撃を周到に用意していたとの見方を強めている。
コメント
この砲弾はタンデム弾である。弾頭に縦に並んだ2重の成形炸薬(HEAT弾)を組み込み、本来は戦車や装甲車の装甲を貫通させる効果がある。

戦車や装甲車が追加装甲などで装甲を増した場合、命中するとまず1発目のHEAT弾が爆発し、表の装甲(追加装甲など)を高圧で高温の熱線が貫通する。さらに2発目のHEAT弾が爆発し戦車本体の装甲を同じように高圧・高温の熱線が噴射されて装甲を溶かして車内に溶けた鉄を噴射する。

この高温で、車内の乗員や兵士を殺傷する兵器だ。車内に搭載してある砲弾を高温で誘発させ、戦車の砲塔を吹き飛ばすこともある。

よく聞くRPG対戦車ロケット砲にもタンデム弾のものがある。さらに対人効果を高めたものをHEAT・MP弾と呼ぶこともある。

今回は120ミリ多連装のロケット砲弾にタンデム弾が使われたことになる。

これを民家(市街地)に使うと、最初のHEAT弾で建物のコンクリに穴が空き、2発目のHEAT弾で屋内に高温の燃焼ガスを送り込む。木造の家屋ならガソリンを屋内にぶちまけたように燃え上がる。

カンボジアのシェムリアップ市で木造の学校がRPGのHEAT弾で攻撃された直後を見たことがあるが、学校の柱が吹き飛ばされることなく、校舎の長方形のままに燃え尽きていた。

北朝鮮軍が市街地にタンデム弾を発射するとは残忍性がさらに増した。火炎放射器やナパーム弾で攻撃したことと同じである。
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