韓国から渡った「焼き肉」だが、むしろ韓国を代表する料理としてアピールしているプルコギを含め韓国式の焼き肉料理よりも、世界化が進んでいると、日本・国立民族学博物館の朝倉敏夫教授は話す。
朝倉教授は、ソウル大学比較文化研究所と台湾・中華飲食文化基金会が14日まで共催する国際学術会議「世界化時代の東アジア飲食文化」に出席し、「焼き肉とプルコギ」というテーマで発表を行う。ソウル大学湖厳教授会館で話を聞くことができた。
訪韓した朝倉敏夫教授=13日、ソウル(聯合ニュース) |
日本では、業界が8月29日を「焼き肉の日」としてイベントを展開したり、店ごとに独特のたれや調味料を開発するなど努力をしてきた。特に、チェーン店は外国に多く進出している。教授が先ごろ訪れた台湾では、韓国式焼き肉店もあったが、「神戸焼き肉」「熊本焼き肉」など、日本の地名が入った焼き肉店が多く見られた。「焼き肉」という日本語の単語は、台湾でもよく知られている。数年前にハワイのホノルルを訪れたときには、韓国系住民が多く居住する地域で、ハングルで「焼き肉」と書いた看板も目にしたという。
朝倉教授は、競争的なグローバル市場で、日本の「焼き肉」は韓国と日本のスタイル双方の伝統を残しながら、それぞれの独創性を作りあげたものだと指摘する。日本で「焼き肉」は日本料理の1つと見られ、若者は焼き肉が本来韓国料理だったことを知らない。子どもたちにも人気があり、家庭やファミリーレストラン、高級料理店、どこでも食べられる。
日本の「焼き肉」は、第二次世界大戦後、在日韓国人が日本人が食べない内臓を焼いて出したのが始まりだ。1950年代に牛肉の消費が伸びさまざまな部位が売られるようになり、焼き肉店は1960〜1980年代に全国的に広がった。煙と油のイメージから、中年男性が酒を飲みに行く店という存在だったのが、脱煙装置の開発や1970年代の外食産業の発達で大衆化した。焼き肉のたれが発売されたことで、家庭でも手軽に食べられる料理となった。メニューは牛肉が主だったが、2000年に入り、牛海綿状脳症(BSE)騒動でサムギョプサル(豚三枚肉)も広まり始めた。
日本の焼き肉店と韓国の焼き肉店の違いは大きいと朝倉教授は説明する。韓国ではメニューが5〜6種類程度だが、日本の場合は韓国では無料で提供されるおかず類も注文しなければならないため、60種類ほどに上る。韓国では通常、カルビならカルビと1つの部位だけを食べるが、日本ではさまざまな部位を注文する。家族連れで行っても、1つの焼き網で好みに応じあれこれと同時に焼いて食べる。
また、韓国では主にたれに漬け込んだ味付け肉を焼いていたが、1980年代以降に生カルビが普及したのは、日本の影響だと考えられるという。韓国はたれの味が重要だと考えるのに対し、日本では素材そのものの味を楽しもうという傾向が強いためだ。
朝倉教授は、韓国から出発した韓国と日本の「焼き肉文化」には、互いに独創性を発展させながら持続的に影響を与えていく「アカルチュレーション(文化触変)」が生じていると唱える。
一般的に、「焼き肉」は「プル(火)コギ(肉)」を直訳したものとされているが、日本植民地時代に「焼き肉」から「プルコギ」という名前が生まれた可能性を唱える学者もいるという。「焼き肉」という言葉は古くから存在するが、「プルコギ」という言葉が辞書に登場するのは1950年代のことだ。