修士号目指す元全日本セッター
  =1年1年が勝負の真鍋選手=


キャンパスライフのエンジョイも一時?
 真鍋政義。8月21日41歳になる。バレーボールVリーグでは最年長の選手だ。スーパーエースとして活躍し、36歳で現役を引退した堺の中垣内祐一監督や、松下電器の200センチ左腕・山本らにトスをあげ続けた。
 大商大から新日鉄(現堺)に進み、日本リーグ3連覇、93年から監督も兼任して96,97年のVリーグ連覇に貢献。また88年のソウル五輪に出場するなど、長年に渡って全日本の司令塔として活躍した。99年には、日本人で初めてイタリアのプロリーグ、セリエAのパレルモでプレー。00年に帰国、旭化成を経て02年7月から松下電器に所属していたが、3月末の契約満了を機に再び旭化成に復帰した。
 その真鍋が、この4月、社会人特別選抜で大体大大学院に入学、修士号取得を目指し、努力を重ねている。前期は月曜日2限、火曜日3限、金曜日2限の講義を受けている。

 米大リーグでは、40歳8カ月のランディ・ジョンソンが史上最年長の完全試合を達成、元ロッテでプレーしたフリオ・フランコ内野手(ブレーブス)が45歳にして第一線で頑張っている例があり、バレー界では、セッターはアタッカーに比べ、比較的選手寿命が長いとはされるが、現役のスポーツ選手が大学生との“二足のわらじ”をはくのは極めて珍しい。

戸惑いの連続
 真鍋にとってなぜ、今なぜ大学なのか。
 「バレーだけしていて40歳になった男がこの先のことを考え、一から体育の勉強をしたいと思った。2、3年前から考えていたが、昨年決めた」という。バイオメカニクス、指導者論、心理学、衛生学、生理学等々。40歳の真鍋には、入学当初の1カ月は戸惑いの連続だった。Vリーグは今、オフとはいえ、体を鍛えながらの予習、復習に余念がない。そのかいあってゴールデンウィークが終わるころには、リズムをつかめるようになった。
 課題はVリーグが始まる後期。旭化成と契約している真鍋は、当然のことながら、チームの動向に合わせなければならない。「出来るだけ授業に出るつもりですし、若い学生とキャンパスライフを楽しむと、気分的に若返る」というのだが…。
 修士取得のための論文のテーマは「バレーボールのセッターの分析」。指導理論、アタッカー、レシーバーなどの分析は比較的多いのに、セッターに関する分析はほとんどない。イタリア、ブラジル、米国など交流のあるセッターの協力を得て、このテーマに取り組む。
 アテネ五輪最終予選では田中幹保前全日本監督から「一緒にやろう」と声をかけられたが、「自分の今の能力を考えたら、チームの足を引っ張るのが関の山」と断った。松下から旭化成へ復帰したのも「自分が松下にいたら、次のセッターが育たない。若い旭化成なら、自分がセッターを育てられる」という理由からで、根っから気がいい男なのである。
 3大会連続五輪出場を逸した男子バレー界も憂うる。「バレーボールに限らず、日本のスポーツは高校生までは世界のトップレベルなのに、社会人になって大きな差がつく。大学4年間が大きなカギを握っているのではないか」とみる。
 「僕にとって、これからは1年1年が勝負。バレーも大学も一緒です」。
 高校生のころから大型セッターとして名をはせた190センチの真鍋は、心も体もでかい。
(相馬卓司)