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きょうのコラム「時鐘」 2010年11月27日
大みそか恒例の紅白歌合戦、ことしは「トイレの神様」を歌った植村花菜さんにスポットが当たっている
トイレを美しく掃除する子はべっぴんさんになると、おばあちゃんに言われて育った女の子が、その祖母を見送る歌である。年寄りは涙ぐみ、若い核家族世代も「おばあちゃん」と「トイレの神様」の詞が新鮮に聞こえて人気が広がった 金沢の鉄道マンだった詩人・濱口國雄(1976年没)の作で知られた「便所掃除」とダブらせた人が多かったろう。「便所を美しくする娘は美しい子供をうむといった母を思い出します」(土曜美術社出版)と歌った人である あるいは「便所の神様」を思い浮かべた年配者もいたに違いない。便所に夫婦一対の小さな泥人形を埋めた伝承である。北陸には、大みそかに便所に灯明をともす伝承もあった。どれも、一番汚れやすい所を一番きれいにし、他人に見られない所も磨いておく大事さを言っている 素手で洗う。心が洗われる。「静かなうれしい気持ち」と記した戦後の労働者詩人と同じ心が平成の少女に、祖母から孫へと継がれている。それがうれしい。 |