例として取り上げた米メトロポリタンオペラでは、1950年を100とする指標でみると、消費者物価指数が1965年に120であるのに対し、平均チケット価格は160まで急上昇している。この差は、チケットの値上げで購入者が減少し、その穴埋めのためにさらにチケットを値上げしたという事実を示している。
これは悪循環の始まりである。ボーモルは「普通、学生は低価格チケットを買う。あらゆる芸術分野のほとんどすべての事例で、チケット価格が上昇するにつれて、学生の比率が急激に低下している」(前掲書)という。つまり、多くの新規ユーザーを集められなくなったことで分野がニッチになり、来場者の減少をチケット値上げで補おうとすることで、さらに間口が狭まっていくのである。
こうした事態についてボーモルは、「何が起ころうとも、現在組織されている商業演劇にとって、長期的な財政上の見通しは厳しい」(前掲書)と指摘し、産業の発展が進む社会では、公共機関からの援助なしで舞台芸術を守り続けることは不可能と結論づけている。
現行世代ゲーム機が陥ったコスト病
ボーモルのコスト病は舞台芸術だけでなく、公立病院や教育機関といった労働集約型の公共サービスの多くが赤字化する要因の説明にも拡大されて使われる。この問題は、労働集約性が高まり、個人の能力に依存する範囲が広がる産業ほど顕著に表れる。それは、現在のゲーム産業にもいえることだ。
ゲームの開発費は、約7~8割が人件費で占められている。典型的な労働集約型産業である。現行の「プレイステーション3(PS3)」や「Xbox360」といった高性能なゲーム機向けゲームは、100~200人近いスタッフで20億~30億円をかけて開発するのが当たり前になっている。
1世代前の「プレイステーション2(PS2)」などでは、開発費は10億円以下が一般的だった。しかし、PS2の開発体制で今のPS3向けのクオリティーのゲームを作ることは至難の業である。開発現場で使う開発ツールの性能は向上しているが、生産性を劇的に引き上げるような技術は生まれておらず、人手でデータを作成する領域はむしろ増加しているからだ。
Xbox360、ボーモル、ソーシャルゲーム、iPhone、プレイステーション2、プレイステーション3
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英FTSE100 | 5,682.61 | -16.32 | 26日 15:37 |
ドル/円 | 84.09 - .12 | +0.19円安 | 27日 0:31 |
ユーロ/円 | 111.38 - .42 | +0.17円安 | 27日 0:31 |
長期金利(%) | 1.190 | +0.040 | 26日 17:54 |
NY原油(ドル) | 83.86 | +2.61 | 24日 終値 |
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