【コラム】亡き兵士の失われた脚を取り戻せ
われわれは、国軍の統帥権と責任を担う総司令官から過去形で報告を聞きたい。「追加的な挑発を座視しない」というのではなく、「追加的な挑発を座視せず、敵の海岸砲を壊滅させた」という報告だ。「再び挑発できないほど、2-3倍の制裁を加えろ」という命令は、部下に対して非公開で下せばよい。むしろ国民は、「再び挑発など考えられないほどの大きな制裁を加えた」という報告を聞きたがっているのだ。大統領府(青瓦台)の地下バンカーで、「爆撃機で懲らしめては駄目か」と国防部長官に尋ねてはならない。最終決断は総司令官の役目だ。
1968年の北朝鮮ゲリラによる青瓦台襲撃未遂事件、83年のラングーン事件、87年の大韓航空機爆破事件に言及するまでもなく、今年3月に起きた哨戒艦「天安」爆沈事件、今回の延坪島の集落に対する砲撃は明確な追加的挑発だ。大統領であれ、長官であれ、この期に及んで「追加的挑発は座視しない」と言ったところで空虚だ。韓国国民には60年代から「北傀(ほっかい・北朝鮮かいらい)への判断を誤るな」というスローガンを叫んだ幾多の決起大会に参加した記憶が残っている。これまで、数えきれないほどの「糾弾」も行ってきた。
世界で最も悪質な「恐喝国家」(25日付サウスチャイナ・モーニング・ポスト)は、今や三代世襲を終え、後継者に「荒っぽいゲーム」(AP通信)の練習をさせている。「追加的な挑発」ではなく、「連続挑発」が現在進行中で、G20首脳会議と広州アジア大会にも冷や水を浴びせた。そして、「核爆弾」と「予測不可能」という暴力的なカードを駆使している(AP、フィナンシャル・タイムズ)。
われわれの総司令官は、天安爆沈事件の後、「いかなる挑発も容認せず、積極的な抑止原則を堅持する」と語った。その通りだ。この場合、「積極的な抑制原則」のタイミングが命だ。「チキンゲーム」に慣れたやくざは、不意にパンチを見舞うのが特技だ。それが二度とできないようにするには、暴挙に出たとき、すぐに懲らしめることが肝要だ。だが総司令官は、天安爆沈事件でも延坪島砲撃でも、「積極的な抑制原則」を順守できなかった。
口数が多いのは迫力に欠ける。今からでも総司令官は、延坪島の砂浜を掘り返して亡き兵士が失った脚を取り戻すべきだ。大統領府の裏山から光化門のろうそく集会を眺め、流した涙がまだ残っているならば、亡くなった兵士の脚を涙で洗って持ち帰ってもらいたい。そして現在、国務委員や軍首脳部の中に、延坪島やペンニョン島に息子を兵士として送り出している人間が複数いることを望む。だが、こうした過大な要求はともかく、事件発生から60時間が過ぎるまで、廃虚と化した民間人の集落を軍の最高幹部の誰が訪れたというのか。
国防部長官の辞表を受理した総司令官には、憲法66条から85条を改めて精読してもらいたい。「国土の保全」「国家の貿易」「国民の自由と福利」について、そして「国家の安危にかかわる重大な交戦状態で国家を守るため」(76条)に大統領は何をすべきで、何を国民に報告すべきかを自問し、実際の行動に移してもらいたい。
キム・グァンイル副局長兼国際部長