中国と北朝鮮、ぎこちない同盟関係をつなぐもの

フィナンシャル・タイムズ2010年11月26日(金)08:00
(フィナンシャル・タイムズ 2010年11月24日初出 翻訳gooニュース) 北京=ジェフ・ダイヤー

バラク・オバマがアジアを歴訪していた今月初め、米大統領が各国で次から次へと歓迎されているのを見て、ある中国政府関係者は寂し気にこう語った。「世界中を見まわせば、アメリカは強固な同盟関係をいくつも築いている。うちには一つしかない」。

しかもそのたった一つの同盟関係は、何てぎこちないものか。中国政府は数日前から、北朝鮮との緊密な関係に関してまたしても矢面に立たされている。北朝鮮の独裁体制は中国の援助と政治的庇護によって保たれているのだと、あちこちから批判されているのだ。

北朝鮮は23日、韓国の島を砲撃した。北朝鮮が高度なウラン濃縮施設を開発したようだという情報と合わせて、世界各国が声高に中国の対応を求めている。中国は北朝鮮にもっと圧力をかけるよう、世界中が求めているのだ。

北朝鮮が何か挑発行為に出るたびに、中国政府の無力ぶりが強調されるようだ。北朝鮮は本当に、実に特異な国だ。しょっちゅう中国に恥をかかせているのに中国から叱られずに済む、唯一の国と言える。

中国の対北朝鮮政策は各方面から不快に思われている。中国国内でも評判が悪いのはある意味で当然かもしれない。中国の北朝鮮政策は、中国国民の間でも国家エリートの間でも、よく思われていないのだ。やや保守的なブログでさえ、24日には北朝鮮の動きをさかんに非難し見下していた。軍事問題を主に扱うサイト「鉄血(Tiexue)」でも、「こんな無謀な行動をいつまで容認し続けるのか」という書き込みがあった。別のウエブサイトでも「北朝鮮が、今度も中国に助けてもらおうと思ってないといいのだが。まるで門のところに居座る狂犬だ。気の休まる時もない」という投稿があった。

中国の外交専門家たちも、北朝鮮との緊密な関係がいかに問題だらけか、競うようにして次々と並べ立てている。専門家たちは、中国が北朝鮮と同盟関係にあるせいで、中国は責任感ある世界市民だとアピールしてもなかなかうまくいかないのだと指摘。来年1月に予定される胡錦濤国家主席の訪米を前に、対米関係を改善しておくのがますます難しくなったとも主張している。

外交専門家たちはさらに言う。中国と韓国の経済的なつながりは深まっているのに、中国と北朝鮮の同盟関係のせいで、中韓関係にヒビが入ってしまっていると。北朝鮮の行動は加えて、日本の軍備強化や核保有さえ主張する日本国内の勢力を勢いづけているとも。

北京外国語大学のシェ・タオ氏は「北朝鮮が予測可能な行動をとるという保障がないなら、同盟を続ける意味がない」と言う。

北朝鮮との関係を懸念する声は高まっているが、中国政府が北朝鮮政府への支援を減らすとはほとんど誰も思っていない。金正日体制が崩壊すれば大量の難民が大挙して中国に流れ込むし、独立国・北朝鮮は駐韓米軍と中国との間の緩衝地帯になっているというのが、中国政府における主流意見だ。

中国当局者たちは、北朝鮮経済の今後は期待できると強気だ。金正日は今年、中国北東部にあるピカピカで現代的な都市を二度訪れている。それを受けて中国は、北朝鮮は今度こそ中国式の改革を本気で実施するつもりだと主張している。

中国政府は対北政策を見直すよりも、現状をうまく乗り切ろうとしているようだ。今年夏と違って中国は、韓国を怒らせないように、米韓合同演習にさほど反対していない。しかしその一方で中国政府はこれまでのところ、北朝鮮による暴力行為をはっきりと非難はしていないし、2006年の核実験を受けて実施したエネルギー資源輸出制限のような制裁を検討している様子はない。

もし北朝鮮が再び核実験を行えば、中国国内でも再び制裁措置の再検討が求められるだろう。しかし中国は今のところは、金正日から息子への権力継承を裏書きすることに決めたのだ。

金正恩が平壌の軍事パレードで国全体にお披露目された先月、ひな壇で父・金正日の隣に立ってニコニコ笑っていたのは、中国共産党の最高幹部のひとり、周永康だった。ぎこちない同盟相手であろうとなかろうと、中国政府が金王朝の側に付いているのは間違いない。


フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。

(翻訳・加藤祐子)

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