日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

「砲撃事件」と呼ぶのはやめよう

2010-11-26 11:00:17 | (相)のブログ
 
 昨日、関東地方のある朝鮮学校を取材で訪れた。
 校門をくぐったのが午後3時。ちょうど初級部低学年生徒たちの下校時間と重なった。校庭には、わいわいがやがやにぎやかな子どもたちの姿と下校指導をする先生たち、そして地域の青年同盟の若者も何人かいた。
 23日に朝鮮西海で起きた北と南の軍事衝突を受けて、学校や地域でも集団下校など生徒たちの安全確保にさらに気を使っているとのこと。
 なぜ毎回このようなことになってしまうのか。子どもたちの無邪気な笑顔を見ながら、悲しい気持ちを抑えることができなかった。

 問題の「砲撃事件」だが、日本や韓国メディアが使っているこの表現は正しくない。「北朝鮮がいきなり無差別砲撃を仕掛けてきた」かのように報じられているが、当該の海域では韓国が大規模な軍事演習を行っていた事実を忘れてはいけない。朝鮮側は、今回の砲撃は相手側の挑発に対する軍事的対応措置であったと主張している。少なくない海外メディアも、まず韓国側による軍事的挑発があったということを指摘している。でも、海外メディアのこのような論調は、マスメディアではほとんど紹介されていない。
 問題の本質を見抜くためのポイントはいくつもある。なぜ、「事件」が起きたのか。問題の海域はどのような場所なのか。「NLL」(北方限界線)とは何か、など。これについては、いずれブログで本格的に書いてみたいと思う。
 「北朝鮮バッシング」一色の日本メディアを見ているだけでは事態の真相はまず見えてこない。朝鮮側の主張はもちろんだが、少なくとも、韓国のメディア(とくに大手以外のものを)もチェックしないと。
 衝突によって民間人に死傷者が出たことは悲しむべき事態だが、「北朝鮮憎し」の感情を拡散させているだけでは何も解決されない。

 それにしても、日本では政府から始まって与党、野党、はてはメディアまでがこぞって朝鮮を一方的に非難するばかりで、問題を深く掘り下げる努力を放棄している。右も左もない「オールジャパン」現象に恐ろしさを感じる。
 そして、高校無償化問題。教育の問題、人権の問題を政治のカードにするという日本政府の愚劣な精神は結局のところ何も変わっていなかったということがあらためて満天の下に明らかになった。(相)
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