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量的緩和の行き着く先は

2010年11月26日0時3分

 米連邦準備制度理事会(FRB)が2度目の量的緩和に踏み切った。それに対して、内外で賛否両論が巻き起こっている。

 賛成派は、ゼロ金利の下で金融政策ができるのは、資金供給を増やし、長期金利を引き下げて、株式などリスク資産への投資や設備投資を刺激することだ、と主張する。一方反対派は、マネーの膨張が、資産バブルやインフレを招くと批判する。新興国も、米国の量的緩和が、投機資金流入、通貨上昇、バブル醸成によって、経済が不安定になると懸念している。

 どちらの主張が正しいのか。まず、現状程度の量的緩和では、大きな影響が表れるとは思われない。日銀が2001年から06年まで実施した量的緩和の規模(GDP比率)は、もっと大きかった。しかし量的緩和策が、期待(懸念)された効果を及ぼした跡はない。

 問題は、FRBが量的緩和をさらに進めた時に、何が起きるかだ。財政支出拡大によって景気刺激を図ることが政治的に困難な以上、景気・雇用回復の遅れは、金融政策への期待をさらに高めることになる。FRBは、国債購入額を増やすだろう。その中で、銀行による信用創造が回復し、資産価格が上昇、インフレ期待が高まれば、量的緩和策が効果を表したと喧伝(けんでん)される。

 しかしそれが、バブルの前段階だとしても、FRBがそれを止めることは、政治的にも現実的にも難しい。その結果、長期金利やインフレ率は上昇し、財政規律は弛緩(しかん)し、景気回復は遅れる。過去のバブルの経験は、行き過ぎた金融緩和こそが、大きなゆがみをもたらすことを示している。FRBは、そのような領域に踏み込もうとしているのではないか。(山人)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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