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泉:書くなら「むなしく」ない闘病記 /山梨

 「自らネタになる新聞記者ってむなしくねー?」--。解禁されたばかりのボージョレ・ヌーボーに酔った友人から、携帯電話にメールが届いた。甲状腺がんを告知された記者(31)が、闘病記を書こうと考えていることに、彼女なりの本音を伝えてくれたのだ。

 記者の間で「ガンクビ」と呼ばれる物がある。顔写真のことだ。大概それは、事件事故の被害者や加害者の写真を意味する。私自身もこれまで、記者として何度となく顔写真を求め、突然の惨劇に途方に暮れる被害者家族の家を訪ねた。

 「理不尽な事件を二度と起こさせないため」「事故の悲惨さを社会が忘れないよう」。それらしい説得をしながら、心の隅でそうした「マスコミ側の理屈」に冷めている自分がいた。そして徐々に覚悟が芽生えた。「いつか自分が理不尽な運命に遭遇したら、記者としてすべてをさらけ出し、社会の教訓にしてもらわなくてはいけない」

 がんは死のにおいを強く含む病だ。健康に生きるすべての人を無慈悲に襲い、未来と希望を奪う。だがそれだけががん医療の現実ではない。自分のがん闘病記を自分の言葉で伝えたい。そしてもし「私はがんとは関係ない」と思っている人が、「健康診断ぐらい受けるかな」と思ってもらえる程度のことが伝えられれば、それはきっと「むなしく」はない記事になるだろう。【甲府支局・中西啓介】

毎日新聞 2010年11月26日 地方版

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