北朝鮮軍による延坪島砲撃で、若い（21歳！）兵士だけでなく民間人に死者が出ました。いかに米韓がきわどい軍事演習をしていたさなかであったとしても、市街地に着弾するかも知れないような攻撃、あまりにもひどすぎます。犠牲者は、私と同年配のふたりの男性です。仕事で島に来ていました。ご家族のご心痛はいかばかりでしょう。心からお悔やみ申し上げます。
今回のことでただひとつ、いいことがありました。菅首相の眠そうな目が、突然ぱっちりしたのです。けれど、官邸の対応の遅さ、第一報はテレビからというていたらくを無自覚に口にしてしまったことなどに、私はすぐさま幻滅へと逆戻りしてしまいました。しかも菅首相の第一声は、「情報を収集し、不測の事態に備える」です。なぜ、「武力を国際紛争の解決手段としないことを国是とするわが国は、今回の暴挙を強く非難する。亡くなった方がたに哀悼の意を表する」と言わないのでしょう。韓国は、おとなりの大切な友好国です。もっと親身になってしかるべきです。「非難」は、アメリカの後からやけに力んで表明してましたが。
そして、朝鮮高校授業料無償化の「手続きを停止するよう、私から担当大臣に指示した」と、こちらもやけに断乎決断、言うのを聞くに及んで、あきれ返ってしまいました。
朝鮮高校に通っているのは、北朝鮮籍だけでなく、韓国籍、日本国籍の子どもたちです。国籍は、さまざまな歴史を背負ったそれぞれの家族の、それぞれの思いによって選ばれています。共通しているのは、これからもこの社会で生きていこう、このくにで子どもたちの成長を見守っていこう、という意思です。加えて、祖先のくにの言葉を捨てまいとする意思です。
これは言語権の行使です。言語権は世界共通の、基本的人権です。これにはふたつあって、出自に由来する言葉を身につける権利と、現に暮らしている社会の言葉を身につける権利を指します。人の移動が加速する21世紀、出自の言語と社会生活の言語、ふたつ持つ人はますます増えるでしょう。
このくにには、この言語権を獲得するために、子どもを朝鮮学校に通わせる在日のご家族がいるのです。つまり、子どもが朝鮮学校に在籍するからと言って、北の政権を支持しているのではない人びとも多いのです。在日社会の人びとの「半分」の多くは、徐々に北の政権から心離れし、その傾向は2002年の拉致問題の顕在化以降、加速しています。ただ、思ったことを口にできない人びとでもあります。北に親族がいるからです。そんな中、拉致は「ひどい、恥ずかしい、腹が立つ」と涙ながらに言ったオモニがいました。在日の人びともまた、拉致に深く傷ついているのです。
そこへ来て、去年からの高校無償化に朝鮮学校も含めるかどうかの議論です。あのオモニは、どんなに心を踏みつけにされたことでしょう。ともに社会を構成している人びとがそんな思いでいるなんて、こんどは私が恥ずかしく思います。このくにの政府は、在日の人びとを、その子どもたちを積極的に包みこんでこそ、北に対し、ひいては世界に対して、道義的優位をアピールすることができると思います。えげつない言い方をすれば、それはむしろ北への政治的あてつけです。そして、自分たちを公正に包摂する政権や社会を、在日社会はよろこばしく受けとめるでしょう。子どもたちは、そうした対応と北のおかしげな言動を較べて批判力を身につけ、いっそうこの社会と心をひとつにして拉致問題を考える、頼もしい友人になってくれるでしょう。もっとも、在日の人びとはとっくに楽しい友人なのですが。
なのに、政治的効果も疑わしいこんなばかばかしいポーズしかできないなんて、このくにの政治はとことん劣化していると言わざるを得ません。首相が朝鮮学校高校無償化手続き停止を命じるなんて、社会に対して政府が、「率先して在日をいじめるから、社会もそうしていい」と宣言するようなものです。北の人びとの多くは圧政に苦しむ被害者であって、痛めつけるターゲットにすべきではないように、延坪島事件とはまったく無関係の在日の人びと、とくにその子どもたちに悪意を向けるべきではありません。そんなのは、とばっちりの弱い者いじめ以外のなにものでもありません。出自が「悪い」と社会的差別をする北の権力と、どこが違うのでしょう。しかもそんな姑息ないやがらせは、突然、南の同胞を野戦砲やロケット榴弾で殺すような北の権力者には、痛くも痒くもありません。
菅サン、大人げないどころの話ではありません、権力者ごっこはいいかげんにしてください。外国籍の人びとなど、マイノリティへの排斥は、世界じゅうの社会や政治家が頭を痛めている問題です。なのにその音頭をとるなんて、政治家として恥を知るべきです。今からでも、そんな世論調査の数字に汲々とするあまりの受け狙いは撤回してください。だいいち、受けませんから。
![[「ある人びとは子どもだろうがいじめてもかまわない」と政府は言った]のネタをはてなブックマークに追加](http://megalodon.jp/get_contents/50527985)
今回のことでただひとつ、いいことがありました。菅首相の眠そうな目が、突然ぱっちりしたのです。けれど、官邸の対応の遅さ、第一報はテレビからというていたらくを無自覚に口にしてしまったことなどに、私はすぐさま幻滅へと逆戻りしてしまいました。しかも菅首相の第一声は、「情報を収集し、不測の事態に備える」です。なぜ、「武力を国際紛争の解決手段としないことを国是とするわが国は、今回の暴挙を強く非難する。亡くなった方がたに哀悼の意を表する」と言わないのでしょう。韓国は、おとなりの大切な友好国です。もっと親身になってしかるべきです。「非難」は、アメリカの後からやけに力んで表明してましたが。
そして、朝鮮高校授業料無償化の「手続きを停止するよう、私から担当大臣に指示した」と、こちらもやけに断乎決断、言うのを聞くに及んで、あきれ返ってしまいました。
朝鮮高校に通っているのは、北朝鮮籍だけでなく、韓国籍、日本国籍の子どもたちです。国籍は、さまざまな歴史を背負ったそれぞれの家族の、それぞれの思いによって選ばれています。共通しているのは、これからもこの社会で生きていこう、このくにで子どもたちの成長を見守っていこう、という意思です。加えて、祖先のくにの言葉を捨てまいとする意思です。
これは言語権の行使です。言語権は世界共通の、基本的人権です。これにはふたつあって、出自に由来する言葉を身につける権利と、現に暮らしている社会の言葉を身につける権利を指します。人の移動が加速する21世紀、出自の言語と社会生活の言語、ふたつ持つ人はますます増えるでしょう。
このくにには、この言語権を獲得するために、子どもを朝鮮学校に通わせる在日のご家族がいるのです。つまり、子どもが朝鮮学校に在籍するからと言って、北の政権を支持しているのではない人びとも多いのです。在日社会の人びとの「半分」の多くは、徐々に北の政権から心離れし、その傾向は2002年の拉致問題の顕在化以降、加速しています。ただ、思ったことを口にできない人びとでもあります。北に親族がいるからです。そんな中、拉致は「ひどい、恥ずかしい、腹が立つ」と涙ながらに言ったオモニがいました。在日の人びともまた、拉致に深く傷ついているのです。
そこへ来て、去年からの高校無償化に朝鮮学校も含めるかどうかの議論です。あのオモニは、どんなに心を踏みつけにされたことでしょう。ともに社会を構成している人びとがそんな思いでいるなんて、こんどは私が恥ずかしく思います。このくにの政府は、在日の人びとを、その子どもたちを積極的に包みこんでこそ、北に対し、ひいては世界に対して、道義的優位をアピールすることができると思います。えげつない言い方をすれば、それはむしろ北への政治的あてつけです。そして、自分たちを公正に包摂する政権や社会を、在日社会はよろこばしく受けとめるでしょう。子どもたちは、そうした対応と北のおかしげな言動を較べて批判力を身につけ、いっそうこの社会と心をひとつにして拉致問題を考える、頼もしい友人になってくれるでしょう。もっとも、在日の人びとはとっくに楽しい友人なのですが。
なのに、政治的効果も疑わしいこんなばかばかしいポーズしかできないなんて、このくにの政治はとことん劣化していると言わざるを得ません。首相が朝鮮学校高校無償化手続き停止を命じるなんて、社会に対して政府が、「率先して在日をいじめるから、社会もそうしていい」と宣言するようなものです。北の人びとの多くは圧政に苦しむ被害者であって、痛めつけるターゲットにすべきではないように、延坪島事件とはまったく無関係の在日の人びと、とくにその子どもたちに悪意を向けるべきではありません。そんなのは、とばっちりの弱い者いじめ以外のなにものでもありません。出自が「悪い」と社会的差別をする北の権力と、どこが違うのでしょう。しかもそんな姑息ないやがらせは、突然、南の同胞を野戦砲やロケット榴弾で殺すような北の権力者には、痛くも痒くもありません。
菅サン、大人げないどころの話ではありません、権力者ごっこはいいかげんにしてください。外国籍の人びとなど、マイノリティへの排斥は、世界じゅうの社会や政治家が頭を痛めている問題です。なのにその音頭をとるなんて、政治家として恥を知るべきです。今からでも、そんな世論調査の数字に汲々とするあまりの受け狙いは撤回してください。だいいち、受けませんから。