東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

2010年11月26日

 古代ギリシャには一時期、オストラキスモスと呼ばれる制度があった。「陶片追放」と訳される。独裁者になる恐れのある有力者を、市民の投票で追放する仕組みである▼アテナイで紀元前五〇八年に始まったともされる。全市民が年に一度、追放すべき人物の名を陶片(オストラコン)に書いて投票。六千票を超えた最多得票者が一人、十年間、国外に追放されたらしい▼そこまで激しくはないが、住民投票によって公職者をその地位から罷免する、現在のリコール制度に通じるところもある。ただ、こちらはまず住民投票実施に一定の署名数が必要だ▼政令市では全国初となった名古屋市の市議会リコール(解散請求)のための署名。だが、市選管は集まった四十六万余の署名の24%を無効と判定、法定署名数には一万二千四人分、足りなかったと発表した▼言うことを聞かぬ議会は解散だとばかり、署名を主導した市長の手法に十分(じゅうぶ)の理があるとはいえない。だが、有効とされた署名だけでも三十五万を超えた意味は大きい。市長の政策になびけ、ではなく、議員の地位や報酬に見合う仕事をせよ、との警告に思える▼多分、ほかの地方議会にも参考となろう。どんな首長の出現も恐れずにいたいなら、まず先に弱点を自ら変革することだ。気持ちが鈍ったら「名古屋の三十五万」をリコールする(思い出す)といい。

 

この記事を印刷する





おすすめサイト

ads by adingo