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少年の社会記録調べ、わずか30分 石巻3人殺傷・裁判員裁判
宮城・石巻3人殺傷事件で殺人などの罪に問われた元解体工少年(19)の裁判員裁判で17日、検察側、弁護側双方が証拠申請した少年調査票(通称・社会記録)の一部が取り調べられた。少年の更生可能性などを探り、処遇を判断するために家裁が作成する少年事件特有の証拠だが、公判で調べに費やした時間は約30分にすぎず、物足りなさを感じた。 検察側は、すべての社会調査の結果を基に家裁調査官が作った調査官意見書を取り上げた。弁護側は、少年鑑別所が少年の資質などを調べた鑑別結果報告書の総合所見を読み上げた。 A4判、緑色ファイルにとじられた社会記録は検察側、弁護側とも謄写が許されないため、双方が交代で原本を読んだ。傍聴席から、ファイルは厚さ5センチぐらいに見えたが、検察側が読んだ部分はペーパー3枚、弁護側は4枚だった。 調査官意見書は、少年を「社会性を学ぶ児童期に家庭が崩壊した。甘えが満たされない飢餓感で、思いやりの気持ちが育っていない」などと分析し、刑事処分が相当と結論づけた。 鑑別結果報告書は、暴力を身近に見てきた成育環境から、暴力に肯定的な価値観が芽生えたことなどを挙げつつ、「年齢が若く、可塑性がある。矯正には相当の時間がかかる」と締めくくっている。 調査官意見書も鑑別結果報告書も、少年の立ち直りを支えるプロたちが作っただけに説得力はある。ただ、その根拠になるさまざまな調査資料は提示されなかった。 刑事訴訟規則は少年事件の審理に関し、「事案の真相を明らかにするため、家裁の取り調べた証拠は、努めてこれを取り調べるようにしなければならない」と規定する。 裁判員らが元解体工少年の処遇を決める際、少年の可塑性、更生可能性は重大な要素になりうる。裁判員裁判で、少年の人権を左右する重要証拠がないがしろにされる懸念が、現実となったように思えた。(報道部・勅使河原奨治)
2010年11月18日木曜日
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