2020年夏季五輪の招致を検討している広島市は30日、開催基本計画案に基づく市民説明会を西区の区地域福祉センターで開き、全8区での説明会を終えた。合計で延べ636人が参加。約1千億円の寄付を見込む財政計画や平和の理念に賛否が相次いだ。
各会場では、市が総事業費4491億円の基本計画案の概要を解説。参加者からは、総事業費の約2割を賄う国内外からの寄付金が集められるのか―との疑問が続出した。
市は、寄付集めの事例として、オバマ米大統領が大統領選でインターネットなどを使い約750億円の資金を集めたことを紹介。また、1964年の東京五輪でも、寄付金付きの切手やたばこの販売、全国民への寄付呼び掛けで目標の36億円に対し、当時としては破格の61億円を集めたことを説明した。
これに対し、参加者からは「東京五輪のあった高度経済成長期とは違う」との異論や「オバマ大統領の場合は、寄付が根付く米国だからできた」などの指摘が出た。
「核兵器のない新しい時代を象徴するイベント」をうたう平和の理念には賛同の声が多かった。「まさに広島の役割だ」「核兵器の恐ろしさを世界に訴える好機」などである。ただ、一部に五輪の政治利用ではないのか、との批判もあった。
また、選手や観客の交通輸送で渋滞やJRの混雑が起きることへの懸念が出た一方、交通インフラ整備への期待も少なくなかった。
市は今後、議会や関係団体の意見も踏まえ、年内に招致に名乗りを上げるかどうかを決断する方針。市民の合意形成に向けては、説明会で浮き彫りになった「巨額の寄付金を見込む財政計画への懸念」をどう払しょくするかが、大きな焦点になるとみられる。
【写真説明】広島市が開いた五輪開催基本計画案に基づく市民説明会(西区地域福祉センター)
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