日本人の2人に1人はがんにかかる時代。東京都港区にある東京女子医大付属青山自然医療研究所クリニックの川嶋朗所長は、長年患者と接し、食生活の大切さを実感、がんを予防するための食事方法を提唱している。何を食べればよいのか。【小川節子】
がんの発生する要因として「食事35%、喫煙30%、感染症10%」と推測されている。にもかかわらず、がんの専門医療施設で食事指導をする医師や栄養士はほとんどいないのが実情だ。
がんの転移や再発を防ぎたいという患者の思いは切実だ。「何をどのように食べたらいいのか、質問されることが多い。食をめぐる最大の関心事に、多くの医療機関は対応できていない」と川嶋医師は指摘する。
米国ではがん予防のガイドラインを発表し、食習慣の改善を呼びかけ効果を上げている。また米国国立がん研究所は食品の成分、作用、代謝などについて調査を行い、効果の高い食品を並べた「デザイナーフーズ・ピラミッド」=図参照=を紹介している。
日本では国立がん研究センターが「がんを防ぐための12カ条」を提唱しているが、食事に関しては「バランスのとれた栄養」「変化のある食生活」「食べ過ぎをさけ、脂肪は控えめに」といった一般論であまり実践的ではない。
川嶋医師は、玄米菜食を基本とする「マクロビオティック」、欧米で行われている「ゲルソン療法」、日本の伝統食を見直す「幕内式食事療法」などのさまざまな実践例を研究し、無理なく継続できる川嶋流「食べ方12カ条」を提案する=表参照。
「免疫力を高め自然治癒力を維持できれば、体内に入った異物を撃退することができる。体を温め代謝をよくする、ストレスをためない、十分な睡眠をとることも大切な要素です」
また、がん予防を期待できる食品として川嶋医師があげるのは、(1)アシタバ(2)ニンジン(3)ゴボウ(4)ブロッコリー(5)キャベツ(6)カボチャ(7)イモ類(8)ネギ、タマネギ(9)トマト(10)リンゴ(11)バナナ(12)シソ(13)ニンニク(14)キノコ類(15)海藻類(16)玄米(17)発酵食品(18)ゴマ(19)青魚(20)緑茶の20品目だ。
逆に控えたい食品として「塩分、脂肪、糖質、過度な苦み、辛みなどの刺激物、熱すぎるもの」をあげる。
「20品目の食材を中心に、さまざまな食品をバランスよくとることが大切です。腸内環境を整え便通をよくする食物繊維、水分補給も心がけてください」とアドバイスする。
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■川嶋流「食べ方12カ条」
(1)全粒穀物(玄米や小麦、ふすまなど)を取る
(2)よくかんで食べる
(3)食物繊維を取る
(4)果物を控え野菜を
(5)水は1日1~1.5リットル
(6)1日1回はキノコ類を
(7)青魚を取る
(8)1日30品目取るように
(9)塩は控えめに
(10)肉類は控える
(11)甘い物は控える
(12)旬のものを取り入れる
毎日新聞 2010年11月24日 東京朝刊