岩国市旭町の江本あやえもん(本名中村慶彦)さん(32)が、市内や山口県周防大島町を舞台にした初の長編アニメーション作品「青と空」を完成させた。2年がかりで脚本から制作、監督までを一人で担当。「全身全霊をかけた力作を多くの人に見てほしい」と自信をのぞかせる。
主人公は人付き合いの苦手な高校1年生の瀬戸青海(あおみ)。病弱な少女椋野空と知り合い、1泊だけの冒険旅行に出掛ける。JR岩国駅、藤生駅、周防大島町の海辺などをバックに、2人が心のきずなを通わせる青春物語だ。
56分のカラー映像には約520枚のカットを使用。台本やラフ、原画、動画制作、着色、編集はすべて単独でこなした。外注すれば1枚約4万円かかる背景は、写真をイラスト風に仕上げる独自の技術「フォトドラマティカ」を駆使。音楽と声優のみ外部に頼み、計40万円の低予算でDVD化にこぎ着けた。
江本さんは岩国高、神戸大大学院を卒業後、大手電機メーカーのソフトウエア部門を経て、2005年に岩国市でゲームクリエーターとして独立。3年半で小説仕立てのゲーム3本を作った後、「一度きりの人生。本当にやりたい仕事に就こう」と思い立ち、独学でアニメーションの制作に取り組んだ。
08年からは「青と空」一本に絞り、学生時代からの貯金を切り崩しながら作業に没頭した。「好きなものをとことんやり尽くして大満足。今後も地元密着型のアニメを作り続け、オンリーワンを目指したい」
「青と空」は広島市内のアニメショップのほか、江本さんのホームページで販売中。1980円。
【写真説明】「今後も地元に密着したアニメを作りたい」と話す江本さん
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