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広島五輪の世論調査 計画への疑問に答えよ '10/11/10

 広島市が招致を検討している2020年夏季五輪。賛成は回答した市民の27%にとどまり、44%が反対だった。中国新聞社が今月上旬に行った世論調査の結果である。残る30%近くは「どちらとも言えない」と答えた。

 9月末に基本計画案が発表されて以来、初めて表れた「民意」といえるのではないか。数字で見る限り、現時点で賛成はいまひとつ広がっていない。

 秋葉忠利市長が被爆地での五輪構想を示してほぼ1年。年内にも名乗りを上げるかどうか表明する意向とされる。日本オリンピック委員会(JOC)が来年夏までに国内候補都市を決める日程を考慮してのことだろう。

 しかし地元の熱い支持がなければ開催は到底おぼつかない。16年五輪の招致争いに敗れた東京の場合、都民の支持が伸び悩んだことが最後まで響いた。広島市が立候補を目指すなら、少なくとも市民の過半数の賛同が必要だ。

 世論調査では市民に対する説明が「不十分」とする人が8割を超えた。賛否を決めかねている市民がいるのは当然といえよう。

 市は、広報紙や全8区の市民説明会などでPRした。説明会では8割が「理解が深まった」と答えたというが、参加者は延べ600人余りにとどまる。市長が出席し、熱意を伝える場面が見られなかったのも残念だった。

 とりわけ疑問視されているのが寄付金だ。総事業費4491億円の2割、1千億円近くを見込む。市民の8割強が「集められない」としている。

 市は実現性の根拠としてオバマ米大統領が選挙戦で745億円を集めた例などを示す。ただ納得する人は少なかろう。不足すれば、市の負担額52億円はさらに膨らむ恐れもある。招致に反対する理由で最も多いのが、市の借金増への懸念というのもうなずける。

 計画案に鉄道や道路など関連インフラ整備が盛り込まれていない点も不可解さがぬぐえない。開催中の渋滞は市民生活にも大きな影響が出る。あえて整備を不要とする根拠を明らかにすべきだろう。

 JOCは平和の理念と経費の少なさを高く評価しているようだ。とはいえ肝心の市民が「平和追求」の意義をどれほど認識しているか。賛成理由では「都市圏の発展につながる」がトップで、「核兵器廃絶のシンボルになる」は3番目だった。

 立候補するかどうかを最終判断する手順としては「市長の決断でよい」は1割に届かなかった。6割以上が「住民投票を実施すべきだ」としている。

 市議会の対応も気になる。全員協議会での質疑後は表立った動きがない。招致となれば決議案や関連予算案を審議することになろう。特別委員会を設置し、問題点の整理に乗り出すべきだ。

 それにしても期限を切って結論を出すというのは、あまりにも拙速すぎないか。市長自ら各区に足を運んで、市民の疑問に答えるやり方もあろう。




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