住民投票制度のあるべき姿について、住民自治に詳しい広島修道大法学部の村上博教授(57)に聞いた。【聞き手・矢追健介】
--住民投票はどうして必要なのですか?
◆地方自治体は首長と議会による二元代表制だが、あくまで主権は住民。両者をコントロールする手段が無ければ、主権在民とは言えない。
--広島市の住民投票制度については?
◆直接請求による住民投票では、まず議会が認めないと投票に移れない。議会対策にエネルギーが使われ、投票までに住民側の力が切れてしまう。「常設型住民投票」制度を作り、住民が請求すれば投票を実施できるようにしたのは大きい。
--実施条件は?
◆地方自治体にとって重要事項であることだが、重要かどうかを決めるのは第三者機関にすべき。住民にとって、利害が対立する首長側が判断するのは不公平。「請求が乱発される」と言う人がいるが、有権者の10分の1という署名集めはハードルが高い。
--住民投票にはどんなメリットが?
◆住民投票は、自分たちに代わり首長と議会に「自治体運営をさせている」という基本に気付く機会だ。日常に忙しい住民が行政テーマをすべて議論するのは難しいが、身近な特定テーマに絞れば賛否を議論できる。「民主主義の学校」と言われる由縁だ。
--住民投票に必要な条件は?
◆大前提は正しい情報公開。「情報は市民の共有財産」という意識が、行政側も議会側も低い。市民側にはさまざまな専門家がいる。もっと情報を公開して市民がチェックできるようにすべきだ。
毎日新聞 2010年11月11日 地方版