20年夏季五輪(ヒロシマ五輪)の招致を巡り、秋葉忠利・広島市長は17日、これまで「年内」と明言してきた決断時期の先送りを示唆した。1000億円近くの寄付を見込む財政計画などの実現可能性を疑う市民らの声は根強く、市長は軌道修正を迫られた形だ。賛成、反対両派、競技団体などから、さまざまな反応が聞かれた。【寺岡俊】
秋葉市長は同日の定例会見で、この10年間でNGO「平和市長会議」の加盟都市が10倍になったことなどを紹介し、「市民は広島の持っている世界的意味と力を十分に認識していない。積極的に働きかけることで寄付を集めることは可能」と断言した。先月29日の会見では、8区で開いた説明会の会場アンケートから「市民の理解は深まった」と話していたが、この日は時間をかけて説明していく意向を示した。
五輪招致署名を集めている市民団体「peace piece project」の多田多延子代表は「財政不安を取り除けば賛成する人は多い。具体的な寄付金の集め方や、実現可能性を説明するためならば、延期は構わない」と擁護する。
一方、五輪招致を巡る公開質問状を提出した「広島自治体問題研究所」のメンバー、小林正典さん(66)は「年内にはっきりさせるべき。言ってきたことを守ってほしい。市民の反応を言い訳にせず、市長がどう考えているのかを示し、議会にも説明を」と求めた。
「手を挙げる時期に大きな問題はない」と話すのは県バレーボール協会の松下光一常務理事だ。「立候補するのであれば、運営計画の充実がもっと必要」と指摘する。「本気でやるのであれば、必要なことは、10年後の担当者が困らないようにしっかりとバトンを渡すことだ」と話した。日本オリンピック委員会(JOC)は「担当者が広州アジア大会へ派遣され、コメントできない」としている。
毎日新聞 2010年11月18日 地方版