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石巻3人殺傷:少年に裁判員裁判で初の死刑 判決要旨

 宮城県石巻市で今年2月に起きた3人殺傷事件で殺人罪などに問われ、裁判員裁判で初めて少年に死刑を言い渡した25日の仙台地裁判決の要旨は次の通り。

<量刑判断の枠組み>

 2人に対する殺人、1人に対する殺人未遂を含む重大事案であり、保護処分の余地はない。死刑と無期懲役のいずれを選択すべきかが問われており、いわゆる永山基準に従って考察する。

<本件の罪質>

 自分の欲しいもの(元交際相手)を手に入れるために人の生命を奪うという強盗殺人に類似した側面を有する重大な事案だ。

<犯行の態様>

 被害者はいずれも無抵抗だったにもかかわらず、ためらうことなく殺傷行為に次々と及んでおり、犯行態様は極めて執拗(しつよう)かつ冷酷で、残忍さが際立っている。

 元交際相手の連れ出しを邪魔した者は殺害する意図のもとに凶器を準備し、共犯者を身代わりに仕立て上げようとするなど周到な計画を立てている。

<被害結果>

 殺害された被害者の無念さや苦痛は察するに余りある。被害者に何ら落ち度がないことも考慮すると、被害結果は極めて重大かつ深刻だ。極刑を望む遺族らの処罰感情も、被害結果の重大さ、深刻さの表れとして量刑上考慮するのが相当だ。

<犯行動機>

 被告は、元交際相手を手元に置きたいという身勝手な思いから、犯行前日に被害者宅へ不法侵入して無理やり連れ出そうとしたが、姉らに警察へ通報されるなどして制止された。被告は保護観察中で、警察に通報されると少年院送致になると思っていたことからもこれに激怒し、邪魔する者を殺そうと考えた。動機は極めて身勝手かつ自己中心的だ。

<社会的影響>

 2人を殺害し1人に重傷を負わせた上、1人を拉致して逃走した重大事案で、近隣住民に多大な不安を与えるなど大きな社会的影響を与えたことも、量刑上看過できない。

<更生可能性>

 被告は元交際相手への暴行を繰り返し、更にエスカレートさせたばかりか、警察から警告を受けても態度を改めることなく、本件犯行に及んでおり、犯罪性向は根深い。

 ちゅうちょせず残虐な殺傷行為に及んでいること▽保身を図るため共犯者に凶器を準備させた揚げ句、身代わりとなるよう命令していること▽犯行後、元交際相手に姉らが死亡した内容のニュースを見せ「何で泣いてんの」と言ったこと--などの言動からすれば、被告には他人の痛みや苦しみに対する共感が全く欠け、その異常性やゆがんだ人間性は顕著だ。

 他方で、被告は公判で涙を流すなどして犯行を後悔し、極刑をも覚悟して自らを厳罰に処してほしいと述べるなど、一応の反省はしている。しかし、反省の言葉は表面的で、自分なりの言葉で反省の気持ちを表現したものとはいえない。また、自己に不利益な点は覚えていないと述べるなど不合理な弁解をしている。本件の重大性を十分に認識しているとは到底いえず、反省には深みがない。更生可能性は著しく低いと評価せざるを得ない。

<事件時の年齢、生い立ち>

 弁護人は、被告が当時18歳7カ月の少年であることを指摘するが、犯行態様の残虐さや被害結果の重大性にかんがみると死刑を回避すべき決定的な事情とまではいえない。不安定な家庭環境や、母から暴力を受けるなどしたという生い立ちも、同様に量刑上考慮することは相当でない。

<結論>

 以上の事情、特に、犯行態様の残虐さや被害結果の重大性からすれば、被告の罪責は誠に重大だ。被告なりの反省など有利な諸事情を最大限考慮しても、極刑を回避すべき事情があるとは評価できない。罪刑均衡の見地からも、一般予防の見地からも、極刑をもって臨むほかない。

毎日新聞 2010年11月25日 21時47分(最終更新 11月25日 22時02分)

 
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