北朝鮮:金正銀氏の大将任命 権力継承プロセスの第一歩

2010年9月28日 20時40分 更新:9月28日 21時24分

 【北京・米村耕一】北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記(68)は28日の朝鮮労働党代表者会開催に合わせ、三男正銀(ジョンウン)氏(26)への権力継承プロセスの第一歩として正銀氏を軍の大将に任命した。金総書記の掲げる「先軍政治」に沿った形だが、今後は、金総書記の権力継承プロセスをなぞる形で党の主要ポストを進む可能性が高そうだ。ただ、金総書記の健康状態に不安があることを考えると、自らが金日成(キム・イルソン)主席(故人)から権力を継承した時のようにじっくり構えることは難しく、急ピッチで後継体制作りが進められそうだ。

 金総書記は74年に「主体偉業の偉大な継承者」として党政治委員(現在の政治局員)になって後継者であることが党内で明確にされた。名前が公表されたのは、6年後の80年10月。朝鮮労働党第6回大会で、政治局常務委員、党書記、党軍事委員会委員という主要機関すべてにポストを得て後継者であることが公にされた。金主席が68歳、金総書記は38歳だった。

 一方、正銀氏が後継者に決まったのは08年後半だと言われる。しかも、その時点では、党内手続きがまったく行われていなかった模様だ。金総書記は政治委員になる前年の73年に組織および宣伝担当の党書記になっているが、そうした段階にも進んでいなかったということだ。

 金総書記の現在の年齢は、自らが表舞台に登場した80年党大会時の父と同じ68歳。金総書記はその後、金主席が94年に死去するまでの間に段階的な権力掌握を進めていった。

 しかし、金総書記の状況は、健康だった父とは違う。08年に脳卒中で倒れ、現在も左手などにまひが残るとされるなど、健康状態には強い不安がある。正銀氏には、父と同じような10年以上もの助走期間は許されないという見方が支配的だ。

 金総書記自身が、今回は段階的な後継体制作りを進める時間的余裕はないと考えているようだ。正銀氏への権力継承にあたっては、金総書記の妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)党部長と夫の張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長が後見役を務めるとみられている。これも、まだ20歳代の正銀氏への後継体制が固まるまでに、金総書記の健康状態が極度に悪化することに備えたものである可能性が高い。

 毎日新聞が入手した今年7月の内部文書によると、北朝鮮はすでに正銀氏を「人民の指導者」とする宣伝活動を進めている。経済政策でも「正銀氏が主導している」とされるものが多くなっており、金総書記の実質的な補佐役としての活動を始めているようだ。

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