もちろん正しいのは、石破氏である。国家が暴力を合法的に独占できないと、テロやヤクザやマフィアのような私的暴力が発生する。本書は、こうした暴力の管理を社会秩序のコアにあるメカニズムだと考え、新しい社会科学のモデルを構築しようとするものだ。
人類の歴史は、日本人が考えているほど平和なものではない。歴史の大部分の時間、人類は小集団で狩猟・採集を行ない、他の集団を襲撃して食糧を奪う戦いを続けてきた。数万年にわたって一人あたり所得がほとんど変化しなかったのは、豊かになった集団が他の集団に収奪される戦いを繰り返してきたからだ。
1万年ほど前、農耕社会の成立にともなって、このような戦闘状態から自然国家への移行が始まった。これは「暴力のスペシャリスト」としての支配階級が他の国家との戦闘を担当し、こうした暴力装置へのアクセスを独占することによって国内秩序を維持するメカニズムである。
これに対して、近代的なオープンアクセス秩序では、法の支配にもとづいて非人格的な組織によって国家が維持される。自然国家からオープンアクセスに移行するための「ドアステップ条件」は次の3つである:
中世末期から300年ぐらい殺し合いを続けた欧州では、兵力の維持や大軍の遠征に必要な費用を調達できる経済力が、戦争に勝ち残る上で決定的に重要になった。このため財産権によって(征服で得た)土地や財産を守る制度が発達し、戦争や長距離貿易のために資金を調達するシステムが生まれた。株式会社がなければ、オランダやイギリスの植民地支配は不可能だった。
他方、中国ではこのようなオープンアクセスに移行する代わりに、自然国家を極大化し、皇帝以外の人々を武装解除することによって秩序が保たれた。このほうが平和を保つという点ではすぐれていたが、国内の競争や資源の移動が抑制されたため、経済は停滞した。経済発展にとってもっとも重要なのは、生産要素の流動性だからである。
この新しい社会理論によれば、ヘーゲル・マルクス以来の「市民社会が国家を生む」という理論とは逆に、暴力装置としての国家が社会秩序のコアであり、経済システムはその上に築かれている(これをゲーム理論で説明するモデルもある)。平和ボケした自民党にも民主党にもわからないだろうが、戦後の日本の繁栄は、こうした暴力の均衡の上に成り立っているのである。
1万年ほど前、農耕社会の成立にともなって、このような戦闘状態から自然国家への移行が始まった。これは「暴力のスペシャリスト」としての支配階級が他の国家との戦闘を担当し、こうした暴力装置へのアクセスを独占することによって国内秩序を維持するメカニズムである。
これに対して、近代的なオープンアクセス秩序では、法の支配にもとづいて非人格的な組織によって国家が維持される。自然国家からオープンアクセスに移行するための「ドアステップ条件」は次の3つである:
- エリートの中での法の支配
- 私的または公的な永続的組織
- 軍事力についての統一された政治的支配
中世末期から300年ぐらい殺し合いを続けた欧州では、兵力の維持や大軍の遠征に必要な費用を調達できる経済力が、戦争に勝ち残る上で決定的に重要になった。このため財産権によって(征服で得た)土地や財産を守る制度が発達し、戦争や長距離貿易のために資金を調達するシステムが生まれた。株式会社がなければ、オランダやイギリスの植民地支配は不可能だった。
他方、中国ではこのようなオープンアクセスに移行する代わりに、自然国家を極大化し、皇帝以外の人々を武装解除することによって秩序が保たれた。このほうが平和を保つという点ではすぐれていたが、国内の競争や資源の移動が抑制されたため、経済は停滞した。経済発展にとってもっとも重要なのは、生産要素の流動性だからである。
この新しい社会理論によれば、ヘーゲル・マルクス以来の「市民社会が国家を生む」という理論とは逆に、暴力装置としての国家が社会秩序のコアであり、経済システムはその上に築かれている(これをゲーム理論で説明するモデルもある)。平和ボケした自民党にも民主党にもわからないだろうが、戦後の日本の繁栄は、こうした暴力の均衡の上に成り立っているのである。
コメント一覧
自民党が仙谷の暴力装置発言を非難するのは建前です。政権維持を目的化してしまった菅内閣は、次の本予算も90兆円規模にするでしょう。ひょっとして100兆円規模にするかもしれない。増税すれば景気が良くなると言ってましたが、統一地方選を控えているので消費税増税は無理。積立金が減少している公的年金や、預金が減少している郵貯が新規国債を買い取るのも無理。したがって、公的年金や郵貯が抱えている国債を日銀が買い取り、その余力で公的年金や郵貯が新規国債を買い取ることになるでしょう。ここで何十兆円もの新規マネーをバラまけば日本経済は壊れてしまうと思いますが、菅内閣はそれをニューノーマルなどと言いかねない。
今、必要な内閣は、次の本予算を60兆〜70兆円程度にまで縮小できる内閣です。二年か三年後には50兆円程度にまで縮小しなければなりません。それを菅内閣に期待することはできない。だから倒閣するしかないのです。
実はいざ有事が起きた際も米軍が盾になってる後ろで自衛隊は兵坦維持とかの後方業務に収まりたい意志の表れでは。そしたら暴力装置じゃなくなる。
政治、とりわけ政局においては奇麗事や正論だけでは通用しないでしょう。
これまでの自民党政治やそれを取り巻く産業構造によって形成された旧態日本が、今後に通用するとは全く思えませんが、現下の民主党政権の迷走と拙劣を見れば、やはり「自民党の方がまし」であり、「1回やらせてみればいい」としたことが間違いであったと認めざるをえないのではないでしょうか。
残り3年弱をこのまま民主党政権に任されば、それこそ取り返しのつかない事態となることは明々白々です。
自民党に戻したとて事態が打開される可能性は低いでしょうが、ここは「民主党よりはまし」と考える他ないでしょう。少なくとも小泉政権は「自民党政権」でしたから。
前の連立による政権交代や、社会党躍進時代もそうでしたが、自民党に変る政党として「自由主義政党が不在であること」が、日本の政治において致命的な部分であるかと思います。
所謂「リベラル政党」を確立した自民党(小泉時代は例外中の例外でしょう)と対峙する政党は、「自由主義政党」でなければ均衡が取れないのですが、我が国では「リベラル自民党」と対峙するのが常に「極左政党」という状態です。
この異常均衡には、先生の指摘されるように「産業・労働」という問題が大きく関わっていると考えます。
>暴力装置としての国家が社会秩序のコアであり、経済システムはその上に築かれている
↑以下のくだりについて、防衛省装備補給部の幹部官僚が、常々全く同じ原理原則を説いていました。
防衛官僚の談によれば、日本の経済も農政も、果ては人口計画まで、まずは防衛庁(当時)の原案策定に従って各省が動いていたとのことです。
そして民主党政権になった今でも、枝葉末節は変わりこそすれ根幹は全く変わっていないと。
自民党は、この仕組みをフル活用して日本の高度経済成長を成功させたとのことです。
日刊ゲンダイの取材によると民主党でも、小沢氏のほかにも、中井洽、北澤俊美といった人々は、しっかり辺野古移転候補地の土地をしっかり買い占めているのですから。
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col15544.htm
そうすると、日本の現状と未来は池田先生が心配するほど不安な状態ではないのかもしれませんね。