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所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

Re:メールにお返事

日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.11.25

 北朝鮮の砲撃陣地を事前に攻撃できなかったのか 

届いたメール
神浦さん、はじめまして。

貴殿のこのサイトは常に拝見させていただいております。初めてお便りいたします。(なお、私は米国在住です。)

今回の北朝鮮の砲撃ですが、10Km以上の距離からまとまった数の弾頭を発射したのであれば、使用した兵器はある程度の大きさ(読売新聞記事の分析では、155mmりゅう弾砲?)で、攻撃にはある程度の数の兵士や車輛が使用されたと考えられるわけです。

このNLL海域で韓米(日)が常に監視している状況で、この動きを事前に韓米(日)が全く察知できなかったとは考えにくいのです。

むしろ、この砲撃が通常兵器、弾頭を使用して、発射数も予めある程度わかっていて、北朝鮮にあえて砲撃させた上で砲撃で反撃し、非難したのではないかと考えたくなります。

本当に危険な侵攻であれば、トマホークや攻撃機で予め壊滅することができます。

ここで北朝鮮にやらせないと、北朝鮮国内、軍内の掌握に問題が生じるので、(一応面目を立ててやって)、ある程度の被害は覚悟するといったところでしょうか。

被害に遭われた兵士、住民が哀れです。
コメント
使われた砲はりゅう弾砲で、破壊力や不発弾から150ミリクラスと考えられています。

車両(自走砲)は使われていないと思います。

北朝鮮では軍港などの防衛に、近くの丘や山の穴や中腹に穴やトンネルを掘って砲台を築いています。これが海岸砲というものです。これが地対艦ミサイルであれば、シルクアームにとなります。

上部は砲撃を避けるために、土やコンクリで防御しています。ですからなかなか上空から動きをつかめにくいのです。同時に韓国軍が反撃して砲撃してきても、北朝鮮軍の陣地に被害が出ないように作られています。

北が発射した砲弾は170発と韓国が発表しましたが、これは韓国軍の対砲レーダーの画像を分析してわかります。

ところで北朝鮮の一般的な戦術は、このような町(村)などを攻撃する場合は、トラックの荷台などに連装ロケット(24〜40発)を搭載し、一斉射撃で面を攻撃するのが普通です。これなら住民に大被害が出ます。

今回はりゅう弾砲で攻撃したことから、北は拡大を恐れて抑制した攻撃と分析されています。

今までのように北朝鮮軍と韓国軍が海上で交戦するなら、互いの被害を艦艇などに限定させることができますが、もし地上を攻撃し始めると戦火が拡大して大きな紛争に拡大する危険があります。

今回の北朝鮮の攻撃(砲撃)には、そのような危険な意図が隠されていることになります。そこが重大な意味を持っています。

また、島を訪れていた観光客の中に北の北の工作員がいて、山頂などから着弾の様子を見ながら、携帯電話で修正情報を送り、射撃データーを修正して弾着地点を誘導していた可能性もあります。

韓国やアメリカの情報(偵察)で事前に砲撃を予測するのは難しいと思います。大型のミサイルやロケットと違いますから。
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