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米原殺人 無期懲役を求刑

2010年11月24日

【事件の真実 見極めへ/直接証拠はなく】

 米原市の汚水槽殺人事件の裁判員裁判は22日結審し、裁判員は12月2日の判決言い渡しに向け評議に入る。無罪を主張する被告、「罪を免れるためのうそだ」と論難する検察側。争点は被告が犯人であるか否か。直接証拠がない事件を裁判員はどう判断するのか。

【「罪免れること腐心している」/検察側】

 「犯行は執拗(しつ・よう)、残忍で、被告はうそを平然と重ねて罪を免れることに腐心している」。検察側は無罪を訴える被告を厳しく非難し、無期懲役を求刑した。

 論告によると、殺人罪に問われた森田繁成被告(41)は事件当時、交際相手で被害者の小川典子さん(当時28)と深刻なトラブルを抱え、不倫関係を暴露されかねない状況にあったと指摘。「トラブルはなかった」とする被告に対し、被告、小川さんの双方が互いに強い怒りを示すメールを送っていたことから「トラブルがエスカレートしていたことは明らか」と主張した。

 さらに昨年6月10日夜、小川さんが被告と会ったのを最後に消息を絶ったことについて、「小川さんが被告の車で走り去り、約1時間後に車だけが見つかった」という被告の訴えに反論。(1)翌11日から小川さんへの連絡が激減した(2)12日朝に安否を気遣う小川さんの母親の電話に「最後に会ったのは10日午前」とうそをついた(3)事件後、小川さんからの携帯メールを削除した――などから「犯人でなければ説明がつかない行動を繰り返している」と主張した。

 また、被告は積極的に車の清掃を依頼することはなかったのに、小川さんの遺体発見翌日、小川さんの血痕が確認された車の清掃や消臭を業者に依頼したことを挙げ、「犯行の痕跡を隠滅しようとした」と指摘した。

 「犯人は被告以外にあり得ない」。検察側は論告にあたって主張や争点をまとめた16ページに及ぶA3サイズの資料を裁判員に配り、約1時間50分にわたり被告の犯人性を訴えた。

【「予断抱くこと避けてほしい」弁護側】

 弁護側は最終弁論の冒頭、「捜査段階で黙秘したのは正当な権利。直接裁判員に語りかけたいから弁護士が指示した。(有罪という)予断を抱くことだけは避けていただきたい」と切り出した。

 検察側が描く被告の殺害動機について、「不倫相手だった被害者と痴話げんかを繰り返していただけ」「すぐに仲直りして2人の関係が深刻に悪化したわけではない」と、真っ向から否定。被告と犯行を結びつける直接証拠がないことも強調し、「被告の着衣から血液反応は一切検出されていない」「殺害現場から採取された足跡や指紋からも被告につながるものは出ていない」などと、改めて無罪を訴えた。

 検察側が指摘した車のブレーキドラムの血痕については「(犯行により)飛び散って付いたのなら、車のボディーについていないのは不自然」と指摘。「被告が殺害に関与したと言えず、小川さんが車で走り去った後に第三者に連れ去られた可能性もある」とした。

 A4サイズ30枚の資料を約1時間半にわたって読み上げ、被告の無罪を主張した。

【「殺してません」被告】

 「私は殺していません」。森田被告は最終陳述で証言台に立ち、手書きのメモ数枚を手にとって読み上げた。

 「(小川さんが)私を理解してくれ、愛情が揺らぐことはなかった。殺したと決めつけられるのは、あまりにひどい」「痛かったやろう、苦しかったやろう、真っ暗闇やったやろう。真犯人に対する怒りが収まりません」。淡々と話す被告の表情を、裁判員は一様にじっと見つめていた。

 「典子さんの冥福をお祈りします。私を家族のもとに帰してください」と締めくくり、裁判員に一礼した。

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