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【社会】

米原女性殺害、被告に無期懲役求刑 無罪主張のまま結審

2010年11月23日 朝刊

資料を見ながら検察側の論告を聞く森田被告=大津地裁で(イラスト・構成 山岡明日香)

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 滋賀県米原市の汚泥タンクで昨年6月、交際相手の派遣社員小川典子さん=当時(28)=を殺害したとして、殺人罪に問われている会社員森田繁成被告(41)の裁判員裁判の論告求刑公判が22日、大津地裁であり、検察側は無期懲役を求刑した。森田被告は最終陳述で「私を家族の元に帰してください」とあらためて無罪を主張し、結審した。判決公判は12月2日。

 検察側は論告で「不倫関係にあった女性の頭をめった打ちにし、犯行を隠すためにまだ生きていた小川さんを汚泥槽に落として窒息死させた。2年交際した女性へのあわれみの情はうかがえない」と残忍性を指摘。「証拠隠ぺい工作や作り話を用意し、遺族の前で小川さんを冒涜(ぼうとく)するような弁解をした。反省は期待できず矯正は困難」と求刑理由を述べた。

 弁護側は最終弁論で「冤罪(えんざい)を生んではいけない。足利事件や厚生労働省局長の事件でも直接証拠がなかった」と訴えた。被告の車内で見つかった血痕には「鑑定人は小川さんの鼻血や生理の血でも矛盾しないと言っている。弁護人が捜査段階で生理の血の可能性を伝えたのに、検察側はその検証をしなかった」と捜査を批判した。

 論告求刑までの公判は、裁判員裁判では全国最長の10日間。当初、男性4人、女性2人の裁判員と女性4人の補充裁判員だったが、男性裁判員1人が解任され、第2回公判から補充裁判員の女性が裁判員に選ばれた。裁判員らは24日から計5日間にわたって評議し、有罪か無罪かを判断する。

◆「真犯人に憎しみ」森田被告

 「犯人であるのは明らか」「真犯人ではあり得ない」。大津地裁で結審した森田繁成被告の裁判員裁判で、犯行を裏づける直接証拠はない。検察側は状況証拠の積み重ねで求刑し、弁護側は「疑わしきは被告の利益に」と念押し。「真犯人への憎しみと怒りがこみ上げる」と陳述した被告に、6人の市民はどんな判断を下すのか。

 「私を理解してくれる典子さんはオアシスでした。殺したと決め付けられるのは、あまりにひどい」。便せんにつづった、無実の訴えや亡くなった小川さんへの思いを淡々と読む被告。裁判員は被告を凝視したり目を閉じたりしながら、17分に及ぶ最終陳述に聞き入った。

 検察側は裁判員らに16枚の「論告メモ」を配り、うち14枚を「犯人が被告であることが明らかなこと」との主張に割いた。事件直前に小川さんと会っていた経緯や被告の車から見つかった血痕などの状況証拠を説明し、弁護側の反論には「不自然、不合理」を連発。「犯人は被告以外あり得ない」と結んだ。

 弁護側は「評議の前に考えてほしい」と切り出し、無罪推定の原則や被告が黙秘権を行使してきた正当性を説明。

 「森田氏は小川さんに振り回されることはあったが、愛情は失っていなかった。真犯人ではあり得ない」と強調した。

◆裁判員6人、5日で判断

 24日から始まる5日間の評議は、決定的な証拠がない中、裁判官3人と裁判員6人が、有罪か無罪かを話し合い、有罪の場合は量刑も決める。

 評議日数はこれまでの裁判員裁判では1〜2日が多い。高齢夫婦殺害事件で強盗殺人罪を全面否認している被告が対象の鹿児島地裁では、15日間の予定。

 内縁の夫を殺害したとして懲役12年を被告に言い渡した今年1月の名古屋地裁の判決で、裁判員だった名古屋市千種区、コンサルタント業男性(78)は「有罪か無罪の判断に意見が分かれて悩むのではないか。私が参加した事件は量刑のみの判断だったが、今回はさらに負担だろう。心証や憶測では有罪と決められない」と気遣った。

 元裁判官の木谷明・法政大教授(刑事法)は「『被告が犯人と考えればつじつまが合う』と判断するのではなく、立証されたさまざまな状況証拠が『被告が犯人でないと説明できない』ものかどうかとの観点で判断して決めるべきだ。評議では裁判員に自由に意見を言ってもらい、徹底的に議論してもらいたい」と話している。

【米原殺人事件】 小川典子さんの遺体が昨年6月12日朝、汚泥タンクから窒息死の状態で見つかった。県警は同19日、小川さんと交際していた同僚の森田繁成被告を逮捕。大津地検が7月9日、殺人罪で起訴した。起訴状によると、森田被告は昨年6月10〜11日、汚泥タンク付近で鈍器のようなもので小川さんの頭を多数回殴りタンクに落として窒息死させたとされる。

 

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