きょうのコラム「時鐘」 2010年11月25日

 「乱暴だ、たまらない、殺気滔々(とうとう)天を突き、選挙場裡(り)を踏みにじり」。明治中期に歌われた政治演歌「無茶苦茶節」の文句である

1890(明治23)年11月15日に第1回帝国議会が召集されて120年になる。民主政治の基盤とされる国会も、始まりは先の演歌にあるように、近代政治とは名ばかりの圧政と血塗られた選挙干渉の連続だった

明治25年の第2回総選挙も大荒れで「無茶苦茶節」はこう歌った。「熊本、石川、佐賀、高知。無頼の悪徒(わるもの)群(むら)がりて、白昼凶器をふりまわし」。全国で25人の死者を出した総選挙の最悪の県が、石川や高知だったと記している

週明けの29日には、国会120年の記念式典が開かれる。21世紀の今は、国内外の緊迫が瞬時に連動する時代だ。国内政治にとどまらず世界の議会制民主主義を考える機会にしてほしい。民主主義の旗を掲げておいて、暴力と独裁のはびこる国家が少なくない

「民主主義人民共和国」とうたいながら、隣国へ大砲を撃ち込む無茶苦茶な国家が現に存在する。民主主義は、多くの犠牲と不断の努力によって築かれたことを確認する記念日である。