杉並の教科書問題 Q & A ここでは署名運動などで寄せられた質問や、杉並での教科書採択反対運動の焦点となっている点をご紹介します。 Q.杉並が一番あぶないってホント?Q. 「つくる会」の教科書のどこが問題なの? →もっと詳しく知りたい方には 「歴史教科書 何が問題か―徹底検証Q&A 」を おすすめします。 現在 BookWeb デイリーベスト10のトップです。! Q.来年度の教科書はどうやって採択されるの? Q. 絞り込みの禁止って?選定審議会って? Q.教育基本法10条とは? Q. 地教行法23条とは? Q.旭川学テ判決とは? Q.どれくらいの人が反対してるの? Q. 公正に採択されるの? (ニュースステーションの報道内容についての補足) Q. なぜ八月十五日までに採択しなければならないの? |
Q.杉並が一番あぶないってホント? A. 杉並がねらわれているのは昨年からの動きをみれば一目瞭然です。
街にクリスマスソングの流れる昨年11月30日午後1時過ぎ、杉並区議会本会議場の50ある傍聴席は全部埋まっていました。議場に入れないたくさんの人々は空席待ちとなり、モニターのある別室で待機していました。本会議は開始の時刻をとっくに過ぎても議員が一人も入場しないという異常な状態が続きました。傍聴者の間に情報が飛び交かっていました。「民主党は割れたらしい」「公明党ももめているらしい」など。この日の本会議には山田区長の推薦する教育委員の選任案が議会に上程されていたのです。 さかのぼる11月14日、山田区長の意向として「教育委員の2名大門、鬼丸両委員を再任せずまた舟生委員長の辞職届を受理し、3名の委員を新たに選任する。」旨、非公式に議員に伝えられました。教育委員は5名で構成されていますが、3名一度に入れ換えるなどは前代未聞の事で、更にその3名のエーッという人物像が明らかになり、この情報が徐々に区民の間に広がりました。 区民集会や連絡会が各所で開かれ、議会や区長に対する申し入れもあいつぎました。山住正巳氏【元都立大総長】をはじめとする学者・文化人アピール文も200名を越す賛同者の署名入りで発表され、このことは28日付けの朝日新聞の地方版記事にもなりました。驚きと怒りはさらに広がりました。 あまりの反響の大きさに山田区長も動揺し、佐藤欣子氏の推薦を断念することとなりました。
山田区長の推薦する3名の人物を紹介したところで、話を議会に戻します。各会派は直前までこの問題をどうするかでもめていました。開始時刻を大幅にずれこんで議員が入場し、山田区長も傍聴席をにらみつけながら席に付きました。教育委員の選任についての議案について質疑が始まると、野党各会派が次々に質問に立ち、それぞれ反対意見を述べました。質疑が進むにつれ山田区長の専横政治があらわになり、傍聴席から次々に抗議の声があがり、その都度区長は傍聴席をにらみ付けるのでした。 区長の専横ぶりを全部を紹介するのは長文になるので一部ですが書き出してみます。
採決は退席10名、24人の賛成、17人の反対で区長案が採択されました。退席者を加えれば、過半を超えた議員は認めていない結果となったのです。腹立たしくかつ残念な結果です。誰が賛成したか、後述しますので次回の選挙の参考にして下さい。 山田区長はこうまでして何がやりたかったのでしょうか。 ヒントは前の区議会にあります。区長は杉並区で現在使われている、中学校の社会科【歴史】教科書(日本書籍)を「偏向」していると猛烈に批判した場面があったのです。行政が教育の内容に踏み込んだ発言をすること自体、教育基本法10条(行政が教育の内容に介入出来無いことを定めた条文)にかかわる問題で、行政の長としての立場を理解しているとは思えません。 日頃からも「(このような教科書を教える)杉並区の教員を全部辞めさせる」などの言動があり、山田区長が「教科書を変えるつもり」であることと共に、気に入らない教師を辞めさせるつもりであることがはっきりしていました。 大蔵雄之助氏の主張と酷似している「新しい教科書をつくる会」が作成した中学社会科教科書を採用させる運動がいま全国で組織的に行われています。教育委員会だけの判断で教科書を採用する請願を議会が採択するところも増えています。「新しい教科書をつくる会」の歴史教科書は戦前の植民地支配を正当化したり、太平洋戦争を賛美しています。山田区長は戦争賛美者を教育委員会に送りこむことで「つくる会」の教科書採択を実施するつもりのようです。それに反対する教職員は「学校評議会制度」を使って排除するつもりでしょう。 秋の文教委員会で自民党議員の質問「偏向教師はどう処分するか?」に対し、教育委員会は「学校評議会制度を用い、地域の声として教師を辞めさせる。」の趣旨の答弁をしています。学校評議会制度は今年度からスタートしています。PTAやPTAのOBを学校長の諮問機関化し、教育の内容や教師の「能力」「資質」にまで口をはさむ、「圧力団体」であることは明らかです。 「地域に開かれた教育」のキャッチフレーズの後ろには、学校を中心とした地域の草の根ファシズムを全国に組織化するという意図が見え隠れしています。 6月13日区議会本会議最終日に現在欠員の教育委員が一人選任される予定のようです。昨年区長が断念した佐藤欣子氏に代わる人物が推薦されることになりますが、これで区長の推薦した人物が3名となりますから、計5名の委員のうち「つくる会」賛同者が最低3名出現することになります。過半を占めるわけですから、「教育委員会」に採択権ありとして、押し切られた場合、「つくる会」教科書が採択されてしまうことになります。 杉並が一番危ない!!という背景には以上のように、「つくる会」教科書採択に向けての山田区長の強い意思と、計画的な教育委員会の体制作りが挙げられます。 以上 昨年の教育委員会選任過程を報告しました。 報告 親の会(M) |
Q.「つくる会」の教科書のどこが問題なの? A. 「つくる会」の教科書は戦争を肯定する教科書です!!!
● 韓国や中国などから当然にも強い修正要求が寄せられています。しかし日本政府はこの要求にまったくこたえようとしていません。日本は世界の中のひとつの国です。批判を承知で、ひらきなおって子供たちに教えていくのでしょうか。「太平洋戦争で日本はアジアの解放に寄与」などとまちがった史実を学んだ子供たちは、世界の中で孤立するのではないでしょうか。 ● 歴史年表には、例えば世界四大文明もルネッサンスもフランス革命もありません。世界と日本のかかわりや、世界の中で日本はどういうふうに位置してきたかなど、歴史の中で学ぶものがずいぶん落とされています。これが本当に教科書として使えるでしょうか。先生方も大変苦労されるのではないでしょうか。 ●いちばん困るのは子供たちだと思います。 |
Q. 来年度 (2002 年) の教科書はどうやって採択されるの? A. 杉並区立学校教科書用図書採択事務の流れ図は次のようになります。 小学校100冊、中学校300冊の教科書があります。 それを教育現場を知る専門家を昨年秋、区長が排除し、区長の独断で選任した教育の専門家ではない新教育委員2名を含めた4名 (6月3日段階 - 6 月13日に欠員1名補てんの可能性あり) が数週間のうちに400冊全部に目をとおし、自らの判断で適切な教科書を採択するなど、物理的にできるものではありません。 また学校現場からは適正な教科書を絞り込み、推薦することはできず、参考にすぎないというのです。 この流れ図と実体、また昨年からの杉並区の動きをみても、特定の教科書を採択するための意図がはっきりしています。 是非、展示会場に出向いてアンケートに記入するとともに、6月25日位までに各学校で先生方への保護者としての要望を伝え、「区民や学校現場の声から乖離した教科書を採択させないよう」な大きなうねりをつくりましょう。 |
Q.絞り込みの禁止って?選定審議会って? A. これまでは、教育現場を最も良く知る教師が教材としてふさわしい教科書を一、二冊選定し、推薦していました。つまり、子どもたちと日々向き合い、教育内容に責任を負う教師の意見が教科書採択に反映されていました。これを「絞り込み」といいます。これが、昨年来、全国各地で「つくる会」が先頭となって各自治体に働きかけ、学校票も、種目別調査会も、選定審議会にも「絞込み」を行わせず、教育委員会への答申内容には、推薦もできないという仕組みに教科書採択制度が改悪されました。杉並区では2000年3月にこの新たな教科書採択制度が成立し、昨年夏 (2000年夏) に行った審議会の報告書の一部は次の内容となっています。種目別調査部会の報告書もまったく同じ形式です。(報告書全体がご必要な方は親の会までご連絡ください。) すごく抽象的な内容だと思いませんか?このような報告書がすべての教科書について提出されて、その中からどれが最も適切な教科書だということがわかりますか?区内には区立小学校が44校、区立中学校が23校あります。小学校約100冊、中学校約300冊の教科書があります。 教科書採択の流れ図を見ても明らかなとおり、 (1) 各学校から、44×100+23×300=11,300枚の報告書が提出されます。 (2) 種目別調査部会から、400枚の同種の報告書が提出されます。 (3) 各展示会場での区民アンケートが提出されます。 (4) 選定審議会はこの11,700枚の報告書と区民アンケートから報告書 (400枚) をまとめます。どうやってまとめるのでしょうか??? (5) そして、非常勤の教育委員は400冊の教科書全部に目をとおし、その上で、12,100枚の報告書と区民アンケートのすべてに数週間のうちに目をとおし、その中から、適正な来年度の教科書をどうやって選定するのでしょうか? どう転んでも、公正な審議、選定は不可能だということは一目瞭然です。 「つくる会」が先頭になって、この新たな教科書採択制度を各自治体に働きかけてきたこと、「つくる会」賛同人だった都知事が教育委員に「独自に採択せよ!」と話していること、「つくる会」スポンサーの独断で、教育委員を入れ替えたこと.... すべてが、この歴史を歪曲した教科書を採択するための動きであったことがわかります。 こんな無謀な、教育現場を、そして何より子どもたちをないがしろにした、今の教科書採択の流れを、多くの区民、教師、保護者の力を合わせてストップさせましょう!!! |
Q. 地教行法23条とは? A. 「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(昭和31.6.30法律第162号)のことで、今回、杉並区教育委員会が採択権の根拠にしている23条は次のとおりです。しかし条文にあるとおり、地教行法23条は教育委員会の職務権限を「事務」に限ったものです。また教育基本法10条で、行政は教育内容に踏み込めないことを銘記しています。
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Q.教育基本法10条とは?
A. 教育基本法は、昭和22年3月31日 法25号として公布されています。10条の条文は次のとおりで、教育の行政介入を禁じています。
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Q. 旭川学テ事件判決とは?
A. 北海道旭川において、文部省によって全国一斉学力テストが実施されようとしたことに対して、これが教育を画一化する国家統制であるとして教室へのテスト用紙搬入などを阻止しようとした教師の行為などに対して起訴された事件。一・二審は、本件学テの実施には甚だ重大な違法があり、公務執行妨害罪は成立しない、とした。最高裁判決 (最大判昭51.5.2) は
とした。また、国の教育内容決定権については、
さらに、
との判示もあわせると、これが教科書採択権の根拠にはならないことは明白です。 |
Q.どれくらいの人が反対してるの? A.6月20日の教育委員会で、教育委員会への陳情およびその要旨が配られました。以下配布された教育委員会資料からの転載です。私たち親の会に限らず、多くの人たちが杉並区の教育委員会に対して「つくる会」教科書の採択に反対した陳情・申し入れを行っています。 これだけ多くの陳情・申し入れに対して、教育委員会はどのような立場でこたえようとしているのか、6月29日に要請書を提出しました。 (7月20日追記) 7月11日の教育委員会で、前回の6月20日以降に杉並区教育委員会へ提出された「陳情等及びその要旨」が報告されました。7月9日までの計42の陳情のうち、33の陳情 (約八割) が「つくる会」の教科書に反対する陳情です。
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Q.公正に採択されるの? A. 7/6 のニュースステーションで、教育委員会に與川教育長は「集まってくるデータをしっかり検討する」「十分な議論は可能」とインタビューにこたえていました。 しかし、各学校から計 11,200 枚の報告書が提出されたのが6月29日、展示会場での区民アンケート記入締切が 7月5日、そして各教科の専門の種目別調査部会が選定審議会に 400 枚の報告書を提出するのが7月9日だとわかりました。それををうけて、選定審議会がこの 11,700 枚+α の報告書にたった2日で全部を検討した上で400枚の報告書を提出することになります。 そして、教育委員会は、7月24〜25日のたった二日で 12,100枚+αの「集まったデータをしっかり検討して、十分議論する...」と與川教育長は、マスコミで宣言してしまいました。こんなでたらめな話はありません。 同じくニュースステーションで社会科の先生が「使いやすい教材がよい」、しかし教員の意見を反映する場がなくなったので教科書展示会でアンケートを記入したが「どのように使われるかが不透明」とおっしゃっていました。まったくそのとおりだと思います。 昨年秋、教育委員を続けたいと申し出つつ、山田区長の独断で解任された教育委員三名の方々の昨年の教科書採択審議が行われた教育委員会での発言内容は、 教育委員会で選定することに変わったことについて「考え方として委員会がこういう思想でやりたいということよりも、むしろ学校の先生としての使いやすさというのが一番大事だと思う」。 教科書採択について「教科書採択のその時点だけでなく普段においても、こういうふうにすれば実際にそれを学校で教えるものとしてなお便利だと。教科書を実際に使って教えている先生たちのそういう要望を絶えず聞き取っておく、吸い上げておくという努力を普段にされていくことが、教科書採択をよりよく学校や地域に密着したものになるのではなかろうかと。」 12,100枚の羅列式の報告書に変わったことについて「これ読むの、ものすごく大変ですね。」 歴史教科書について「歴史についてのご意見も一方ではそうでもあるし、そうでないという意見も私はきっとあると思うのですね。ですからその両方をよく聞かないと、この問題についての判断は、なかなか委員会としてはできないと思いますので、広く区民の意見を聞くということを来年はやってもらいたいと思います。」 いずれの三氏も、教育委員として責任をもち、学校教育、教科書採択をよりよくしていこうと積極的に発言されています。このような三氏を解任し、問題発言を繰り返す教育委員を選任する山田区長・杉並区行政のでたらめさが浮き彫りになります。この三氏の指摘されているもっともな流れに逆行する人たちが現在の教育委員会を構成していることに憤りを禁じ得ません。 杉並区行政と教育委員会が、学校や地域・家庭から乖離した独走をさせないために、大きなうねりを作っていきましょう。 *親の会日記 7月5日分もあわせてお読みください。 |
Q.なぜ八月十五日までに採択しなければならないの? 来年度使用される教科書の教科書会社ごとの冊数を把握し、教科書会社に発注するための期限と理解していましたが、愛媛の方々のたたかいで、八月十五日の意味が非常に大きくなってきました。愛媛の方々が取り組みの中で得たことを共有するために転載します。 Q. 15日が採択結果を文部省に報告する最終期限であると聞きますがその法令というか、期限の延期・延長について法的なことをお聞きしたいのですが... A. 根拠法令は、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令」(昭和三十九年二月三日政令第十四号)の第13条です。 ご参考までに、この施行令(政令)の全文を添付します。念のため政令というのは、内閣の決定する行政立法です。もちろん、法律ではありません。 (採択の時期) 第十三条 義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択は、当該教科用図書を使用する年度の前年度の八月十五日までに行なわなければならない。 2 八月十六日以後において新たに教科用図書を採択する必要が生じたときは、すみやかに教科用図書の採択を行なわなければならない。 ということで、15日以後でもかまわないということになります。 |