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消防署空白解消なるか 山形・山辺、中山両町議論始まる

消防団員の指導で放水訓練をする町民=山形県中山町金沢

 東北で唯一、プロの消防士を配置せず、火事の際に消防団が消火の主軸を担う山形県の山辺、中山両町で、火災発生と同時に消防士が現場に急行する「常備消防」化に向けた議論が始まった。消防団員の担い手が少ない地域ならではの課題も浮き彫りになる中、議論の行方が注目される。(山形総局・小野勝彦)

<出動は役場を経由>
 両町は山形市や寒河江市と隣り合い、農村部と国道沿いの市街地、新興住宅街などで構成される。単独や複数市町村合同の消防署運営を行っておらず、どの消防署の管轄でもない空白域。救急業務は山形市の消防本部に委託している。
 両町内の119番通報は役場へつながり、町職員が概要を聞き取り、救急の場合は山形市消防へ連絡。火事や災害は役場職員による消防隊と地元消防団を出動させ、規模や内容によっては山形市消防に応援を求める。
 現状の課題は大きく分けて二つ。第一に両町で年間600件ある119番通報の大半を占める救急出動もすべて役場経由で山形市消防に依頼するため、どうしても余計に時間がかかる。
 もう一つは消防団員の担い手不足。主力となるべき青年層は会社勤めで昼間は地元におらず、「出動があると迷惑が掛かる」といった理由で敬遠されている。さらに毒物や工場火災などでは、放水による消火活動が主務の消防団では限界がある。
 総務省は一つの消防本部が受け持つ適正な人口規模の目安を10万としている。合わせて2万8000人の両町が単独で本部を持つのは非現実的。当然、山形市との連携がかぎとなるが、両町は山形、上山の2市2町との合併が2005年に破談し、財政難もあって話が進んでいなかった。

<国の補助制度契機>
 今回ようやく議論が始まったのは、地方の中心都市と周辺町村が連携して住民サービスを提供する定住自立圏構想がきっかけ。総務省の補助制度が利用でき、消防職員育成や施設整備などの財源確保が期待できる。
 自治体間の個別協定に基づく構想が前進した場合、まず実現しそうなのは両町内から山形市消防本部への119番通報の直通化。山形市を中心とする定住自立圏構想は首長の話し合いが始まったばかりで、具体化には時間がかかりそうだが、地元は消防署の分署や出張所の設置を切望する。
 山形市消防本部の斎藤章総務課長は「常備化の可能性は高いと考えてはいるが、隊員の養成や配置をどうするかなど、今後詰めなければならない要素は多い」と言う。
 山辺町消防団の相沢嘉助団長(62)は昨年春、硫化水素の漏出現場に出動したが、装備のない団員は近づけず、悔しい思いをした。「自分の町は自分で守る意識は強いつもりだが、できないこともある」と語り、プロの消防士によるカバーを待ち望んでいる。

◎「自分の町自分で守る」
 常備消防のない中山、山辺両町で、防災に大きな役割を果たしてきた消防団。中山町消防団は5分団12部342人、山辺町消防団は6分団20部371人で構成される。
 秋の火災予防運動期間中の14日、中山町金沢地区で自主防災訓練があった。住民約100人が、地元の5分団第2部(鈴木俊昭部長)の団員約10人の指導で、放水や自動体外式除細動器(AED)の使い方を学んだ。
 同地区の鈴木弘喜総代(72)は「参加率は町内一。互いの生命を守り合うという意識が徹底している」と胸を張った。
 消防署がない代わりに、両町が持つ独特の組織が消防団員の町職員らでつくる役場消防隊。119番通報で火事や災害の情報が入ると、役場に備え付けの小型ポンプ車で現場へと駆け付ける。
 消防団員にもサラリーマンが多く、即座の集合は困難。中山町消防団の秋葉憲太郎団長(59)は「誤報かどうか確かめ、正確な情報を消防団に上げる役割は大きい」と役場消防隊を評価する。
 秋葉団長は「消防士が配置されても、自分の町を自分で守る『消防精神』は持ち続ける」と火消しの心意気を語る。


2010年11月24日水曜日


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