ビールより税率が低く、割安な「第3のビール」に対する増税論議が政府・民主党内で熱を帯びてきた。発泡酒にわずかでも別のアルコールを加えれば税率を抑えられるため、100円以下の外国産の流入が急増している。「国内産業保護」といった立場からの増税派と「庶民の楽しみを守る」との慎重派で口角泡を飛ばす議論が続く。【坂本高志】
「庶民の楽しみを阻害しない税制を要望したい」(山本剛正衆院議員)。「輸入品がたくさん入り、(日本で)働く場がなくなる方がいる。青少年への飲酒の助長もある」(金子洋一参院議員)。
16日、民主党税制改正プロジェクトチームの会合。第3のビールに対する増税の是非で見解は割れた。出席した大手ビール4社の幹部らは、リキュール系の第3のビール1缶に含まれる別のアルコールが「1%前後」と説明したが、複数の議員から「少し入れただけで別の分類になるのは税体系のゆがみだ」などの指摘も上がった。
ビール類への酒税は、麦芽含有量に応じた課税が原則。350ミリリットル当たりの税額は、ビール(麦芽50%以上)77円、発泡酒(麦芽25%以上50%未満)62円、同(麦芽25%未満)47円。だが、リキュール系の第3のビールは麦芽が50%未満なら税額28円と低い。
増税論の背景には、韓国で製造されたリキュール系の第3のビールを日本のスーパーが大量販売していることがある。卸売業者が介在せず1缶90円以下程度と安い。今では第3のビールの1割が韓国産という。会合では増税に反対する大手各社からも「非常に低価の商品は問題」などの懸念が相次いだ。
また、世界保健機関(WHO)が5月、アルコール安売りへの規制を各国に求める指針を採択したことも影響している。これを受け、NPO法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会)は10月、「酒類価格が清涼飲料水を下回らない対策」を求める要望書を財務省などに送った。今成知美代表は「健康の視点から、小売店で安い酒類が大量に出回っている状況をみてほしい」と訴える。
結局、会合では「議論の時間が足りない」として、第3のビールの増税は来年度の導入は見送る方向に。民主党はもともと、アルコール度数に応じた「度数課税」導入を目指しており、今後、政府税制調査会でも議論される見通しだ。実現すると、度数5%前後のビール類は同じ税額となり、第3のビールという分類が消える可能性もある。
ビールの酒税率は主原料の麦芽比率で決まるため、業界はビールに似た酒類で税金を抑えようと、発泡酒(94年発売)や第3のビール(04年発売)を誕生させてきた。第3のビールには、発泡酒に別のアルコールを混ぜた「リキュール系」と、大豆などを使ってビールの風味や味覚を残した「その他の醸造酒」がある。大手4社のビール類出荷量に占める割合は約29%(09年)。リキュール系の代表的商品は「麦とホップ」(サッポロ)、「金麦」(サントリー)、「クリアアサヒ」(アサヒ)、「本格<辛口麦>」(キリン)。
毎日新聞 2010年11月24日 10時49分(最終更新 11月24日 12時23分)