新型ヘリコプター搭載型漁業監視船「漁政310」がついに配備
南沙諸島に最大の監視船 中国、ベトナムと摩擦も 中国の通信社、中国新聞社電によると、中国で最大の漁業監視船が完成し、広東省湛江市で29日引き渡し式が行われた。南沙(英語名スプラトリー)諸島に派遣され周辺海域を警備する役割があり、南沙諸島の領有権を争うベトナムなど東南アジア諸国との間で摩擦が激化する可能性がある。
監視船は2500トンで、ヘリコプターが搭載可能。航続能力も6千カイリと監視船で最も高い能力を持つという。 以前のエントリで、建造中そして進水式の様子を掲載した「漁政310」がついに配備され任務に当たることになったようです。
関連エントリ:拡大する中国の沿岸警備能力は空母より脅威
配備された「漁政310」の様子はまだ公開されていないようです(上記画像は3月の進水式のときのもの)。今までの漁政新造船から考えて固有の兵装は(いまのところ)備えていないと思われます。
2500トンで「最大の漁業監視船」といわれていることに疑問を持つ方もおられると思います。例えば海軍退役救難艦を転用した「漁政311」は4600トン、海軍から貸与されている輸送艦「漁政88」は15000トンあります。それに比べれば、「漁政310」は小型です。しかし、海軍のお下がりや借り物でない「漁政のために建造された」新造船であることに大きな意味があるのです。
詳細なスペックを見てみましょう。
2500トン級
全長:108メートル
全幅:14メートル
航続距離:6000海里
航行区分:国際
最大速力:22ノット
搭載ヘリ:Z-9A
衛星通信システム、光学追尾赤外線センサー、カラー式魚群探知機 特に注目すべきはヘリ甲板と格納庫を備えていることです。1万5000トンの「漁政88」ですら飛行甲板があるだけで格納庫はなく固有の搭載機はありませんでした。この「漁政310」ではついにフネとヘリコプターの連携した運用ができることになったわけです。「漁政310」の配備先は南沙諸島も管轄する「南海区漁政局」ですが、もし現在も続いている尖閣諸島での海上保安庁巡視船との対峙に投入されると日本側はやりにくくなります。今でこそ複数のPLHが投入され搭載ヘリと海自から派遣されるP-3Cで上空から監視し、漁政の動きをすばやく察知できます。しかし、中国側も航空機を投入すればこちら側の動きも相手の知るところとなり、どうしても発生する警備の隙を狙うことが可能になるのです。
搭載ヘリであるZ-9AはAS-365N2のライセンス生産したものといわれます。この機体がFLIRやNVGを装備し夜間運用能力を備えていた場合、ヘリコプター搭載型巡視船(「つがる」型及び「みずほ」型)は夜間運用能力が限定的・・・というよりほとんどないベル212しか搭載していないので、きわめて不利です。海自P-3Cや海保のガルフV、ファルコン900、サーブ340、ボンバル300は常に上空にいるわけではありません。また、基地に配備されている夜間監視能力を備えたベル412やAW139を派遣したとしても、ヘリ甲板つきPLでは運用に限界があります。しかも石垣航空基地のベル412は不時着水事故で1機がリタイアしたまま補充されていません。
「漁政310」そのもの、つまり船体も気になります。一見するとステルスっぽい感じもしますね。この船体、実は海保の「ひだ」型のような「っぽい」「なんちゃってステルス」だけではなく本当にレーダー反射断面積RCSが計算されている可能性もあるのです。この「漁政310」を建造したのは人民解放軍海軍の湛江造船所。この湛江には海軍南海艦隊の司令部と基地が存在します。この「漁政310」はF-22Pや054型フリゲイトに似た設計といわれているようです。任務や目的から考えるとタイ海軍向けに建造されたパタニ級OPVに近いともいえます。舷窓や開口部も少なく、今迄の水産庁取締船と同様の大型漁船や調査船の延長にあるような所謂「商船構造」とは一線を画しているデザインです。
とはいえ「漁政310」はまだ1隻しかなく、配備先も南海区ですのですぐさま尖閣諸島にやってくる可能性はそんなに高くないのかもしれません。しかし今後の動向を注視する必要があります。
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2010年9月30日 11時27分
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