【仁川(韓国北西部)西脇真一】発生から約2時間半後の23日午後5時15分、延坪島(ヨンピョンド)から避難民ら215人を乗せた定期船が、ソウル近郊の仁川港旅客ターミナルに無事到着した。上陸した乗客には安堵(あんど)の表情も浮かんだ。
黄海への玄関口のターミナルと延坪島を結ぶ船は1日1往復。延坪島に到着後、まもなく攻撃が始まったため、家族らにも会えないまま戻ってきた人もいた。島の住民でターミナルに着いた主婦、李チュンオクさん(54)は「家でテレビを見ていると、いきなりドーンと音がした。きょうの射撃訓練はずいぶん派手だなと思っていたら、突然窓ガラスが割れるなど自宅に被害が出て、北朝鮮の砲撃だと直感した」と当時の様子を語った。
また、李さんは「外へ出たら危ないと思い、部屋にいたが、避難を呼びかける放送があったので外に出てみると、あちこちで煙が上がっていた。これが戦争か、死んでしまうのかと思った」と興奮した様子で話した。持って逃げられたのは小さなバッグだけ。ジャンパーを羽織り、素足にサンダルを履いただけの姿が緊迫した避難の様子を物語った。李さんは、ターミナルから記者の目の前で、島に残る知人に電話をかけたがつながらず、心配そうな表情を見せた。
同じ船で避難した男性(51)は「自宅の周りは火の海だった。今では自分の家も燃えているかもしれない。住民は混乱していた。退避放送があったため、何とか午後3時出航の船に乗ることができた」と語った。
ターミナルには韓国メディアが多数詰めかけ、管理事務所には報道陣のパソコンやコード類があふれた。ターミナル運営チーム長の金在東(キム・ジェドン)さん(53)は「明日の定期便の運航は、今の状況を考えると難しいかもしれない。予想もできない異常事態だ」と述べた。
延坪島の実家にいる父親の安否を気遣い旅客ターミナルに詰めているチョン・ヒジョンさんは「午後3時半ごろに実家に電話をしたら、電話越しにドーン、ドーンと砲撃の音が聞こえた。父によると、実家の横の旅館が被弾し、炎上しているようだった。父もこれからすぐ避難すると言っていた」と話した。その後、電話はつながらなくなり、チョンさんは「とても心配だ」と語った。
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一方、島を行政上で管轄しているオンジン郡の担当者は電話取材に「島の担当者も状況把握に手いっぱいの状態だ。民間人の被害状況も正確に把握できていない。住民は避難所に移ったと聞いている」と話した。島にある保健所では、額に傷を負った住民の男性1人が手当てを受けたという。行方不明者の有無は、把握していない。【金秀蓮】
毎日新聞 2010年11月23日 20時03分(最終更新 11月23日 21時03分)