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カモネギならぬカモコメ―― 一石二鳥の「合鴨農法」

オルタナ 11月23日(火)7時21分配信

田んぼでカモに除草を助けてもらう「合鴨農法」が日本で広がりつつあるが、成長した鴨をハムや生肉として販売する動きが出てきた。フランス料理でもよく使われる鴨肉は鶏肉にはない風味があり、合鴨農家の間では「カモとコメの『二毛作』で収益をあげていきたい」と期待が高まっている。

このほど、椎名人工孵化場(千葉県横芝光町)と、吉田ハム工場(静岡県吉田町)が提携し、鴨肉ハムの加工・販売を始める。最初の1―2年は、親ガモをハムに加工して、流通ルートを確立する。その後、合鴨農法で育ったカモも農家から買い上げて、このルートに乗せる計画だ。

同孵化場では、食肉用と合鴨農法用、それぞれに適した種類のカモを出荷している。出荷するのは、いずれも「ひな」だ。卵を産まなくなった親ガモは規格がそろわない上に、硬くて食用に向かないとされる。

食肉に加工する大規模なルートが存在しないため、主に工業用油にされてきた。年間7000羽も処分される親ガモの命を全うさせたい――。その思いで、同孵化場は吉田ハム工場と手を組み、鴨肉ハムの開発を始めた。今後、消費者の反応を見ながら販路を広げる。

親ガモで鴨肉ハムの加工・流通ルートを確立したら、2年後をめどに、合鴨農家のカモを回収し加工する事業に着手する。合鴨農法では、ひなを田んぼに投入するため、農家は毎年、育ったカモの処理問題に直面している。

地域内で消費できるカモの量は限られており、それが合鴨農家の作付面積の上限を決める一因にもなっていた。食べ切れないカモの飼育を放棄した農家が、川や沼に大量のカモを捨て、近隣に迷惑をかける例もあった。

同孵化場は、合鴨農家のカモを買い取る予定だ。詳細はまだ検討中だが、指定の食鳥処理場にカモを持ち込んだ農家に、1羽あたり100〜200円を支払うシステムの構築を目指している。農家は、毎年1000羽の持ち込みで10万〜20万円程度の収入を見込める。

同孵化場の椎名秀治社長は、「合鴨農法の作付け増には、カモの出口確保が大きな課題。取り組む価値がある」と意気込みを語る。

このほど同事業は、国が推進する「農商工等連携事業計画」に認定された。販路開拓を含め、行政による各種支援が受けられる。計画では今後5年で、椎名人工孵化場は3600万円、吉田ハム工場は8208万円の売上増を見込んでいる。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)

最終更新:11月23日(火)7時21分

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