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NTT光分離、総務省退ける ソフトバンクは反発

2010年11月23日

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写真:厳しい表情で、総務省作業部会の検討会を傍聴席から見守るソフトバンクの孫正義社長(中央)=東京都千代田区厳しい表情で、総務省作業部会の検討会を傍聴席から見守るソフトバンクの孫正義社長(中央)=東京都千代田区

 光ファイバーなど超高速ブロードバンドの普及策を検討している総務省の作業部会は22日、ソフトバンクが求めていたNTTから光回線網を分離する案を退け、NTTの組織形態は現状を維持したまま、規制強化で競争条件を整えるべきだとする最終報告案をまとめた。ソフトバンク側はこれに反発、政界に働きかけて「逆転」を狙う。

 作業部会は昨年9月の政権交代後、「2015年までに超高速通信を100%普及させる」という「光の道構想」を掲げた原口一博前総務相が、実現策を議論してもらう場として設けた。争点の一つは、NTTから光回線の設備を切り離すかどうかだったが、部会は現状を維持することを打ち出した。その分、NTTには光回線を他社に貸す時の接続料の引き下げを求め、規制も強める。

 根底にあるのは、競争を加速させてサービス価格を下げ、普及を図るという考え方だ。また、NTTは全国エリアの9割に敷かれる光回線を他社に貸す際、他社の顧客情報を知りうる立場にある。電気通信事業法はこれらの情報を営業活動に活用することを禁じている。だが、実際に営業活動を行う子会社は規制外だったため、子会社にも規制を広げるよう求めた。

 NTTは「すでに世界でもまれなほど厳しい規制下にある」として規制強化に反対してきたが、新たにカンパニー制の導入や営業体制の見直しを迫られる可能性がある。総務省は12月中に政務三役も交えた作業部会の上部組織を開き、政策方針を決める。

    ◇

 ソフトバンクはこれまで、光回線をNTT東西から分離するよう主張してきたが、最終報告案では「不確実性が高い」として退けられた。

 独自の光回線網を持たないソフトバンクは、NTTの光回線網を政府や通信各社が共同出資する新会社に移すべきだとしてきた。銅の電話回線を2016年までに光回線に取り換え、税金の投入なしで月に1150円の光サービスを全世帯に普及できる――との内容だ。業界からは「iPhone人気で容量が増えたデータを、電波だけでなく、家庭内の『小型基地局』などを通じて光回線に振り分ける狙いでは」との見方がくすぶるが、孫正義社長は「天下国家のための主張だ」と強調してきた。

 しかし、大学教授や経営コンサルタントなど委員の疑問は解けなかった。光回線の利用率は3割にとどまっており、需要にかかわらず強制的に敷く手法に国民の理解は得られない▽会社分離や設備投資で必要とされる4兆6千億円の資金をどう調達するのか▽受け皿会社に国の出資を見込んでおり「税金投入なし」とはいえない――などだ。

 通信会社でもNTTのほか、独自で光回線を引くKDDIやケーブルテレビ会社などもソフトバンク案には反対論を掲げた。

 ソフトバンク側は今月半ばから、政治家や世論への働きかけを強めた。孫氏は10日、原口氏が会長を務める民主党の情報通信議員連盟で持論を説明。20日には都内のホテルで菅直人首相に会った。22日の部会後、孫氏は記者団に「一部の専門家による密室の議論で決まった。国会議員が最終判断する問題だ」と述べた。今後も政治家への働きかけを続ける考えだ。(和気真也、堀口元)

     ◇

■超高速ブロードバンド普及策の最終報告案

・普及は事業者間のサービスと設備の両面からの競争で進めることを原則とする

・NTTの光回線を他社が借りる際の料金は引き下げを検討する

・NTTは、他社が自前の光回線を整備しやすいよう、電柱などの使いやすさを促進する

・競争の公平さを保つため、NTT東西の子会社にも情報管理などの規制を守らせる措置を講じる

・規制を見直し、医療や教育、行政分野での利用を促進する

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