【社説】韓国社会の常識から外れた大法官の主張

 今年7月に「南北共同宣言実践連帯」という団体の利敵性が問われた裁判。朴時煥(パク・シファン)大法官(日本の最高裁判所判事に相当)は「北朝鮮自体を単純に反国家団体だと見なす既存の大法院(日本の最高裁判所に相当)の判例には同意できない」という少数意見を出していたことが明らかになった。全体で13人の大法官のうち、唯一の少数意見だった。朴大法官は、実践連帯の駐韓米軍撤収の主張に対し、「米国が友邦国であるのは事実だが、米国の役割と意図を良いものとしてとらえるのか、疑いの目でとらえるのかは、国民一人一人の思想と学問の自由に属している。もし(実践連帯が)積極的に北朝鮮に加担する目的で反米の主張を行っているとしても、米軍が撤収したからといって、直ちに危険にさらされるかどうかを検事が立証できない以上、処罰することはできない」とした。朴大法官は「北朝鮮が主張する、連邦制による統一自体が、必ずしも韓国に危険をもたらす主張だと断定することはできない」とも述べた。

 大法院の判決で、多数意見に反対する裁判官が、自分の意見を少数意見として判決文に残すことができるようにしたのは、多数決の原則に従うものの、社会的少数の声を裁判に反映し、既存の多数意見の変化を促進するという意味からだ。しかし、少数意見が韓国社会の基盤を揺るがすほど常識外れなものならば問題が生じる。

 実践連帯は、朴大法官の言葉通り純粋に学術的な目的から、駐韓米軍を撤収させた後赤化統一をもくろんでいる北朝鮮の対南戦略に同意したのだろうか。そのような団体を放置したまま、米軍が出ていけば、韓半島(朝鮮半島)の安定と平和が深刻な危機に陥るだろうという常識を、検事が立証しなくてはならないのだろうか。朴大法官が本当に、北朝鮮が北朝鮮式の統一を行うために、連邦制による統一を主張していることを知らず、連邦制による統一が、必ずしも韓国に危険をもたらす主張とはいえないと述べていたとしたら、それは彼が、韓国で目をつぶり、耳をふさいで生きてきたという意味だ。朴大法官は、自分の見解を正当化する論理として「北朝鮮と同じ主張をしているからといって、そのような主張が、北朝鮮の反国家団体的側面と関係するのかどうかとは関係なく、危険な行為という前提だけで処罰してはいけない」と説明した。しかし、大法院は以前から北朝鮮と同じ主張をしてきた場合でも、明らかな利敵目的が立証された場合だけ処罰してきた。

 朴大法官の主張は、どう見ても常識から大きく外れている。このような大法官が社会の混乱を引き起こす震源地となっては困る。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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