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2審も「時間外労働」認定 体制見直し迫る判決 奈良病院当直訴訟

 病院の当直勤務を時間外労働と認めず、一律の宿直手当しか支給しないのは不当として、奈良県立奈良病院(奈良市)の男性産科医2人が、県に平成16~17年の時間外手当(割増賃金)の支払いなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(紙浦健二裁判長)は16日、県に計約1500万円の支払いを命じた1審奈良地裁判決を支持、「当直勤務の全体が労働時間に当たる」として双方の控訴を棄却した。

 原告側代理人によると、医師の当直全般を労働時間と認めた判決は高裁では初めて。多くの公立病院では、業務の一部にしか時間外手当が支給されておらず、1審に続いて労働環境の見直しを迫る司法判断となった。

 判決で紙浦裁判長は、奈良病院で行われた16~17年中の分娩(ぶんべん)のうち、6割以上が当直時間帯だったと指摘。周辺の産科医不足から同病院に患者が集中し、土・日曜の当直を続けて担当すると、56時間拘束される場合もあったと述べた。

 こうした過酷な労働実態を踏まえ、割増賃金を支払う必要がない「断続的労働」には当たらないと判示。待機中であっても病院の指揮命令下にある労働時間にあたり、「当直全体で、割増賃金を支払う義務がある」と結論づけた。

 一方、救急搬送に備えて自宅待機する「宅直勤務」を時間外労働と認めるよう求めた原告側の主張については「医師らの自主的取り組みで、労働時間には当たらない」と退けたが、「現状のままでいいのか、十分検討すべきだ」と付言し、県知事や議会に実態調査と体制の見直しを促した。

 判決によると、奈良病院の産婦人科では、夜間や休日の当直を1人で担当。産科医2人は16~17年に、それぞれ約210回の当直についた。手術を含めた分娩への対処に追われ、通常勤務より負担感が重かったが、1回2万円の宿直手当しか支給されなかった。

産科医不足 抜本策が急務

 産科医の過酷な勤務実態を認め、当直体制の見直しにまで言及した高裁判決について、原告側代理人の藤本卓司弁護士は「全国どこの病院も同じような状態。与える影響は大きい」と評価した。

 ただ、産科医の絶対数が不足している現状では、医療体制の早急な改善は望めない。「開業医の協力を求めるなど、抜本的な対策を取らないと、いつまでたっても労働基準法に違反する状態が続く。国レベルでの対応が必要」と指摘した。

 一方、奈良県庁で会見した武末文男・県医療政策部長は「夜間や休日診療の継続が困難になる」と反発した。控訴審で県側は、時間外手当の支給を必要としない「断続的労働」として、労働基準監督署から当直許可を受けていると訴えてきたが、判決は「労基署の想定とはかけ離れた実態で、許可は取り消されるべきだった」と指摘、県側の主張の根拠が否定された。

 県では一律2万円の宿直手当に加え、平成19年からは急患に対応した場合に時間外手当を加算する併給方式に改めた。しかしこの方式も退けられる形となり、武末部長は「交代制勤務などの対応も必要になるが、医師不足の状況で直ちに実行するのは不可能だ」と苦渋の表情を見せた。

 さらに「この問題は県だけでなく全国共通の課題。判決の影響で救急医療が難しくなる地域も増えるのではないか」と話した。

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