中国海軍 大規模演習
沖ノ鳥島西方海域 多様な兵種で演練 政府、ヘリ接近に抗議
太平洋から東シナ海に向けて航行する「ジャンウェイ」U級フリゲート(左)と「フーチン」級補給艦(4月22日、海自機撮影=写真はいずれも統幕提供)
「ソブレメンヌイ」級駆逐艦137、139両艦(4月10日)
防衛省は4月22日、沖ノ鳥島西方海域で活動を続けていた中国海軍の艦艇10隻が同日午前零時半ごろ、沖縄本島と宮古島の間の海域を太平洋から東シナ海に向けて通過した、と発表した。艦艇群は東海艦隊所属で、演習の帰途とみられる。
艦艇群は「ソブレメンヌイ」級ミサイル駆逐艦(満隻排水量7940トン)や「キロ」級潜水艦(浮上時2325トン)、潜水艦救難艦など10隻で、海軍の外洋展開訓練の一環とみられる。中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」によると、近年には例のない大規模な訓練で、これまでは兵種ごとの独立訓練が主に行われていたが、今回は潜水艦、水上艦艇、艦載ヘリなどの多様な兵種による共同訓練を大規模、長時間、複雑な環境下で実施。昼夜連続の対抗訓練や艦艇の電波妨害、火力等の対抗手段などが演練されたという。
22日に中国艦艇10隻が通過したのは、沖縄本島の南西約130キロの公海上で、10日に南下した際と同様に、潜水艦2隻は浮上航行していた。
これに先立ち21日午後3時40分ごろには、沖縄本島の南方約500キロの海域で、中国艦艇から発艦した艦載ヘリ1機が、中国艦艇部隊を警戒監視中の護衛艦「あさゆき」に対して、水平約90メートル、垂直約50メートルの距離に接近し2周した。
8日にも同様な近接飛行があったことから、外務省は同日、「極めて近距離で艦艇の安全航海上危険な行為」として中国側に抗議。23日の記者会見で北沢防衛相も「公海上とはいえ、ヘリの接近は極めて危険な事態。両国の良好な関係を阻害することであり、2度とこのようなことがないように外交ルートを通じて厳重に抗議した」と述べた。
「活動活発化、引き続き監視」 統幕長
日本近海における中国海軍の行動は近年、活発化の傾向が顕著だ。2004年11月10日、中国海軍の「漢」級攻撃型原子力潜水艦が、沖縄県の宮古列島の多良間島周辺を潜航して航行、日本の領海を侵犯したのを皮切りに、06年12月21日には沖縄本島の北西約400キロの海域を東進するフリゲート1隻、08年10月17日には上対馬の北北西約16キロの海域でフリゲートなど2隻、同19日には青森県竜飛岬の西南西約37キロの日本海で駆逐艦など4隻、同年11月2日には沖縄本島の北西約400キロの東シナ海で駆逐艦など4隻がそれぞれ確認されている。
昨年からはさらに行動を活発化させ、4月3日に魚釣島の北北東約350キロの東シナ海で機雷掃討艇1隻、同年6月25日には沖縄本島の西南西約170キロの太平洋上で駆逐艦など4隻、今年も3月18日に沖縄本島の西南西約180キロで駆逐艦など2隻が確認されている。
中国は10数年前から海軍発展戦略に基づき、それまでの近海海軍から外洋海軍への改革に力を入れており、九州・沖縄・台湾・フィリピンを結ぶいわゆる「第1列島線」の外側への進出を目指しているが、今回もそうした基本戦略に沿った演習とみられる。
外洋での作戦能力を高めつつある中国海軍のこうした動向について、折木統幕長は今月22日の記者会見で「ここ数年来、中国艦艇の活動は活発になっており、潜水艦を含む艦隊が行動したという面で、中国海軍は能力をさらにアップさせた。引き続き監視態勢をとりたい」と述べ、今後も艦艇群の動向を注視していく考えを示した。