●京都府警、高山若頭を送検 京都府警は19日、指定暴力団ナンバー2で傘下の弘道会会長高山清司容疑者が建設業者から4000万円を脅し取ったとされる事件で、恐喝容疑で高山容疑者を送検した。
私のような「検察をウオッチしている者」にとって「田中角栄前首相逮捕」、「金丸信前自民党副総裁逮捕」に次いで「山口組組長起訴」は一生に一度巡り遭うことが出来るか、どうかのビックニュースである。検察ウオッチャーは「善良な人」は関係ない。検察捜査の対象になるのは「社会から悪と呼ばれる人」「うさんくさい目で見られている人」に限られるからだ。
「山口組組長起訴」はなかったが、「服役している司組長に代わって事実上、山口組を支配していた高山若頭の逮捕」を評することはできた。
昭和38年12月、「松葉会、住吉会、国粋会、錦政会、東声会、義人党、北星会」といっても今はなくなった団体もあるが、錦政会は今の稲川会、東声会は今の東亜会である。7団体は連名で「自民党は即時派閥抗争を中止せよ」と題する抗議文を自民党の全国会議員に送りつけ、党内に大きな波紋を投げかけたことがあった。
これがきっかけになり、ヤクザ団体は反社勢力と呼ばれるようになったのだが、私はこの分岐点の時期から自民党治安対策特別委員会の関係者で、当時から7団体以上の勢力であった山口組の組長をずっと見続けてきた。集中取締対象となったヤクザ団体トップの浮沈のウオッチャーでもあったのだ。
39年から41年にかけて前述の7団体に山口組を加え8団体のトップで私と会うことを拒む人はいなかった。勿論、然るべき紹介者がいての話だ。だから山口組の田岡一雄組長とも面識があった。私の興味の対象は田岡氏はじめ稲川角二、磧上義光、町井久之氏といったトップの「組の舵取り、社会との関わりについての姿勢」、「資金稼ぎや抗争」に関しては何の興味も関心もない。従って「頂点に立つトップの人となり」については詳しいが、「資金稼ぎや抗争」については無知に等しい。
●産経新聞配信記事 産経新聞は19日、「山口組ナンバー2逮捕、料亭で被害者に付き合い要求」という見出しで次の記事を配信した。
みかじめ料名目で現金4千万円を脅し取ったとして指定暴力団山口組ナンバー2の山口組弘道会(名古屋市)会長、高山清司容疑者(63)が恐喝容疑で逮捕された事件で、高山容疑者が京都市内の料亭で被害男性と面会し、同席した山口組淡海(おうみ)一家(大津市)の総長、高山義友希(よしゆき)被告(53)=組織犯罪処罰法違反罪などで起訴=を指して「これからもよろしく頼む」と組側との付き合いを要求していたことが18日、捜査関係者への取材で分かった。
男性は以前から高山義友希被告らにみかじめ料を請求されており、府警は、高山容疑者が被害男性と直接会うことで、みかじめ料のやり取りをスムーズに進めようとしたとみて調べている。
捜査関係者によると、高山容疑者は平成17年12月、京都市内の料亭で、高山義友希被告とともに被害男性と会食。その際、高山義友希被告を指して「日ごろからこいつらが世話になっている。これからもよろしく頼む」などと被害男性に話したという。
高山義友希被告らは会食前の11月ごろから、被害男性に「名古屋の頭に届けるから1千万円以上は持ってきてくれ」などと高山容疑者の存在をちらつかせ、現金を要求。被害男性から現金1千万円を脅し取ったとされており、府警は高山容疑者が恐喝に積極的にかかわっていたとみている。
●鷲見一雄がズバリ斬る 産経新聞の記事が事実とすれば高山若頭は否認するだろうが、被恐喝者と会食、高山被告を指して、「これからもよろしく頼む」と言ったことで起訴される確率が高まったのではないか。組長不在の山口組若頭は自らが会長の弘道会の2次団体組長の設えた会食に出ることも許されないとみて逮捕したと思われるからだ。恐喝罪は「被恐喝者が恐喝行為により、あらたに畏怖の念を生じたことを要せず、恐喝者の従来の性行、経歴により被恐喝者が既に畏怖しているのに乗ずる場合にも成立する」とされている。
17年12月といえば司忍山口組組長が服役した前後のこと、高山若頭逮捕は弁護士を通じ司組長に知らされていると推測する。京都地検が起訴した場合、高山若頭の進退にも大きな影響が及ぶ。いくら不当逮捕、無罪を主張しても、カリスマが崩れ、求心力低下は避けられない、と見るからだ。京都地裁が、簡単に保釈を許可するとも思えない。4万人に及ぶ関係者にとって高山若頭は「攻めの人、伝える人、絶対的な存在、内外からつけ込まれる余地のない人物」であった。それが起訴されれば「守りに回り、聞く側となり、絶対者とは言えなくなる」。そこで司組長の見識が問われる。高山若頭にとって起訴されるか、免れるかがヤクザ渡世の岐路となると私は見立てる。